ほんとに頭のよい男 「石を放つとき」(ローレンス・ブロック)
2021年 04月 18日
面白かったことだけ覚えているが、それがどんな「日和」だったか、きっと事件があいついでフロスト警部がシッパイばかりするような日和なのかもしれない。
「佐平次日和」は今日みたいな日だ、つまり「洗濯日和」ってこと。
青空の下、干したシャツがそよ風にひらひら揺れてるのは絶景なのだ。
世田谷区商店街の30%プレミアム商品券に当たったのはいいが、きょねんと違って利用できる店がとても少ない。
いつも「水尾」を取る酒屋が、その数少ない対象店なのだが、今月で閉店だというので、少し備蓄すべくオン自らお出ましになったというわけだ。
水尾の在庫分のほかに、隙間の目立つ棚から「天狗舞」「鯵ヶ沢」などを選ぶ。
いったん商品券になってしまうと、現金をつかうのと違って太っ腹になる、しかも三割引きなのは8月末までに使っての話だから。
もう桜の散るのを気にすることもない。
差し出されたら、黙って受け取っておけ、と先輩警官に教えられたころの現役警官のスカダ―や、辞めてからのスカダ―、スカダ―シリーズには欠かせない、NYの不良どもが畏怖する、裏切り者の首をボーリングの玉入れに入れて持ち歩いたという伝説の持ち主にしてグローガンの店の主・ミック・バル―の衝撃の結婚、そしてグローガンの店の閉店、など9つの短編を読み、「著者あとがき」(短編集分の)も読む。
警察官を辞めて、アルバイトで不法な露天商を取り締まる「バットマンを救え」。
ニセのバットマンブランドのTシャツなどを売る、英語の通じない不法移民に、「バットマンを売るのは法に触れることなんだ」と私がいうと
「ちょっと、ちょっと。待って」と男は言った。「法ってなんです?どうしてバットマン、法に触れるんです?バットマン、法律守る人でしょ?バットマン、いい人、ちがいます?」著作権を持ってる会社が、取り締まるために使う金で、売ってるTシャツを全部買える。
英語もろくにしゃべれないような連中から力づくで商品を取り上げるような仕事は、たとえペイが良くてもやりたくない、マッドスカダ―は、その仕事を辞める。
それだけの話なのだが、NYの露店商とそれを取り締まる、すこしヤクザな元警官たちのやりとりが、鮮やかに描かれる。
四角四面な法律ではなく、うまいことやって、悪い奴には落とし前をつけ、困っている人を救う。
正義の使者みたいに肩肘張るというのではなくて、はにかみながら、腕力はふるわず、、こういうのがほんとに頭がいい男というんだろうな。
元高級娼婦のエレインと結婚して、二人でNYのいちばんいいところを味わいながら、お互いに理解と信頼しあって暮らしていく関係には嫉妬すら感じる。
きょうは、残った新作「石を放つとき」を読むのだ。