北方領土問題で田中を後ろから撃ったキッシンジャー 「ロッキード疑獄」

あさ(きのうも)ちょっと眩暈がするので、ストレッチをやめて横になっていると、サンチも静かにしている。
食事を済ませてPCの部屋に行くとき、いつもは、猛烈に吼えて「遊んでくれ」(おもちゃを咥えたサンチをおいかける)と追いかけてせがむのに、きょうは心配そうに黙って見送っている。
珈琲のお代わりに居間に行ったら、こんどは吼えて追いかけて来た。
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きのうもウグイスの声が聴きたくて、菜の花畑に行くと、待っていたようにあちこちでホーホケキョの声をかけてくれた。
御衣黄もあるのに気づく。
群れ飛ぶ蝶の数も増えたようだ。
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田中による日中国交正常化を「ジャップは上前をはねやがった」と罵ったキッシンジャーは、復讐に転じる。
「ロッキード疑獄」(春名幹男)が米機密文書を読んで明らかにしたこと。

1973年、角栄はフランス、英国、西ドイツに続いてソ連を訪問した。
前年にプレジネフ書記長が、日ソ交渉で「第二次大戦後残された諸問題を解決し」平和条約を結ぶ構えを示した。
米中和解と沖縄返還でソ連には後退感があり、最大の貿易相手国になった日本を極東部の資源開発などに誘い込みたいという狙いもあった。
田中も書記長に親書を送るなど、日本側にも北方領土問題に前進があるものとの期待があった。

しかし、キッシンジャーは違った。
戦後の冷戦構造を法的に継続させるというキッシンジャーからすると、日中国交正常化に続いて、北方領土返還で、さらに冷戦構造を崩すのは時期尚早との判断があったかもしれない。
キッシンジャーは陰険な秘密工作で、田中の後ろから鉄砲を撃つ。

「ピグミー発言」などで大荒れになった2度目の田中・ニクソン会談(昨日の記事↓)の直後、キッシンジャーは、ホワイトハウスで駐米ソ連大使との恒例のランチ会談の席上、
「日本に気に入られるため、米ソ両国が競争すれば、日本の民族主義的傾向を刺激して、誤った方向に導く。米国としては、日本に反ソ政策を押し付けないので、ソ連側からの見返りを期待したい」
と提案し、それを受けてプレジネフから書面回答が寄せられる。
6項目からなる回答の3番目に
「ソ連は米国が千島列島の帰属をめぐる争いに関与していないことを評価する。ソ連が四島に関して譲歩することは問題外だ。しかし二島についてはソ連は何らかのことを行う」
とあった。
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その一か月半後の日ソ首脳会談では、二島返還(1956年の日ソ共同宣言で、平和条約締結後に歯舞・色丹の返還を合意)にも、北方領土問題にも直接触れず、「未解決の諸問題を解決して平和条約を締結する」とだけの共同宣言に終わる。

会談で、田中がプレジネフに、「『未解決の問題』の中に四つの島が入っているか」と指を4本突きつけて問うたが、プレジネフは「私は知っている」とだけ答え、田中がさらに「はっきりと確認願いたい」とねじ込むと「ダー(はい)」と答えたという。
定説では、この会談で田中は成果をあげたことになっているが、春名は日本側の後退だったという。
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ソ連が、事前のアメリカとの密約よりも強硬な態度を取ったのはなぜか。

ニクソン政権が、対中傾斜を強める一方、ソ連とも「デタント(緊張緩和)」政策を取り続け、第一次米ソ戦略兵器削減条約(SALTⅠ)に調印していた。
キッシンジャーは、ドブルイニン駐米大使と親交を保ち、ニクソン訪中の前後も、日本とは比較にならないほど詳しい説明をしていた。
こうした緊密な米ソ関係を重視し、米国の誤解を避けるために、はっきりした形で対日強硬姿勢を貫いたのだと春名はみる。

田中ら日本代表団は、さいしょにプレジネフがランチの席に姿を見せず、歓迎のためのボリショイバレエ公演にも欠席したことに憤慨しつつも、それを勃発した第四次中東戦争に気掛かりだったからだろうと思っていた。
米ソの密約のことなど知る由もなかった。
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田中VSキッシンジャー、その三は、またあした。
Commented by unburro at 2021-04-04 13:24
どこから見ても、外交に必要な知識も、教養も、腕力も
持ち合わせていないスガ政権は、アメリカに行って、
何をするのでしょうね…
何をやっても先進国最下位であることの確認、でしょうか(泣)
Commented by saheizi-inokori at 2021-04-04 15:20
> unburroさん、私も本書を読みながら今の政治家のことを思い浮かべていました。
ミヤンマーの惨状を見ながら、何も言えず動こうともしない体たらくの。
アベが爆買いさせられたF35のことを。
Commented by olive07k at 2021-04-04 19:00
サンチちゃん 飼主様のご様子をみながら・・
ワンコとは言え 人間の御子より 賢い時があります
我が愛犬も そうでしたから(^^)

ナスターチュームの元気色
ありがとうございます!
Commented by saheizi-inokori at 2021-04-04 22:12
> olive07kさん、ふつうに人間にしゃべるように話してもわかってくれることが多いですね。
察知力とでもいうのかな。
スガに分けてやりたい。
Commented by baobab20_z21 at 2021-04-05 00:05
さへいじさん、こんばんは^ ^
なんか、すごいお話ですね。表向き仲悪そうな米ソが実は裏でデキていたみたいな…大国のやり方は強かですね、エグいです(°▽°)永遠の敗戦国はこの間を、ちょこまかどう立ち回るのか、ため息出ます。今は米中が冷戦みたいですしね。ちょっとは心理を読んだりネゴシエートのレベルは上がったんでしょうか?
Commented by tona at 2021-04-05 09:59 x
あの田中元首とキッシンジャー、ニクソンなどに、そしてソ連にやられた?経緯が今頃になって、自分で読まないのに、面白く知ることになりました。
ところで眩暈は今朝はいかがでしたか。原因がいろいろあるようですが、心配でないものだといいですね。
次から次へと不調はちょっと悲しくなってしまいますね。お若い頃の苦労が出てしまったのでしょうか。お大事に。
Commented by saheizi-inokori at 2021-04-05 10:04
> baobab20_z21さん、スパイ映画そこのけの国際政治の現実ですね。
アメリカは対中対決において日本に期待するところが大きくなりますが、日本は主体性を失わずにアジアの平和を追求してほしいです、できるかな?
Commented by saheizi-inokori at 2021-04-05 10:07
> tonaさん、ありがとう。
けさはなにもないのは、よく眠れたからかもしれません。
若いころと違って、直せばよくなることが望めない、だましだまし生きていくのだと思うのが、しょうがないとはいえ、淋しいですね。
Commented by noboru-xp at 2021-04-05 11:24
日本の外交力のなさは今も続いているのですね。
興味深く拝読させていただきました。その三を
楽しみにしております。
Commented by ikuohasegawa at 2021-04-05 12:17
これは、自分で読まなくてはいけませんね。
Commented by saheizi-inokori at 2021-04-05 13:01
> noboru-xpさん、アメリカの力、といっても、それはキッシンジャーであったりダレスであったり、個人の力でもあるのですね。
さっき今日の分をアップしました。
Commented by saheizi-inokori at 2021-04-05 13:01
> ikuohasegawaさん、面白いですよ。
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by saheizi-inokori | 2021-04-04 12:38 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori