春雷のなかをゴッホに会いに

きのうは目黒美術館に併設されている区民ギャラリーに「サロン・ド・フィナ―ル」という展覧会を観に行った。
行きはタクシー、乗るやいなや待っていたかのように凄い雨が降り出し雷が光轟く。
雷の話など、愛想のいい運転手だけれど、ちょっとしゃべりすぎではあった。
小学校の友だち・池田充君の「ゴッホへのオマージュ」という版画が目当て、この日なら池田君も柏原から上京しているのだ。
春雷のなかをゴッホに会いに_e0016828_10283203.jpg
歪んだ写真で申し訳ないけれど、実物は迫力満点、ゴッホも喜びそうな力にみちあふれていた。
池田君が、ゴッホの亡くなったオベールシュルオワーズに行きはじめて三年目の2017年6月17日にみたゴッホの教会だ。
春雷のなかをゴッホに会いに_e0016828_10260983.jpg
花魁が祈りを捧げに行くのだろうか。
春雷のなかをゴッホに会いに_e0016828_10263174.jpg
池田君は「馬小屋」という、競走馬を育てる騎手たちの泊まる宿に荷をおいてすぐに教会に行った。
日曜日なのに兄弟が仲良く眠る墓地にも教会にも人影がなく、ゴッホの描いた麦秋の上を爽やかな風が渡るばかりだったという。
この静寂の中を、弟一家に子供ができたのに仕送りを受け、経済的圧迫をかけている弟に申し訳なく、胸に弾丸を打ち込んだのだろうか。そんな彼のことを思い巡らし、いつの日にかゴッホのオマージュに、彼が描いた教会や村役場や麦畑を版画に彫ってみたいと思った。
と池田君は書いている。
ことしの一月からふたつきかけてこの傑作ができあがったのだ。
春雷のなかをゴッホに会いに_e0016828_10245892.jpg
帰りに隣の美術館の「前田利為(としなり) 春雨に真珠をみた人 前田家の近代美術コレクション」を覗いてみた。
15歳で16代前田本家の当主となり本郷の広大な屋敷地(その後東大に譲渡)を相続、天皇の臨幸に備えて美術品をそろえたという。
陸士同期の東條とは仲が悪かったそうだが(あとで調べた)陸軍中将となり、僕の生まれる前の年にボルネオ司令官のときにボルネオ沖で搭乗していた飛行機が墜落して58歳で死ぬ。
死因がはっきりしないので、さいしょ陣没としたが、それだと相続税を持っていかれるので国会で質問があって戦死ということにしたと、これもウイキペディア。

横山大観、牛田鷄村、アルベール・ギョ―マン、、和洋さまざまなコレクションはそれほど多くなかった。
前田家の事績を描かした絵巻とか本郷から駒場に移ってからの暮らしぶり、建物などの資料もあった。
僕はそれらを鑑賞するよりもこういう絵を飾った部屋で貴族や顕官たちが、日本を誤っていったことなどを(チョットだけ)考えた。

「春雨に真珠をみた人」という副題を思い出して、そんな絵があるのかとスタッフに訊ねたら、「とくにそういう絵はないです。蜘蛛の巣に雨粒が宿ったのをみて、写真に撮り「綾真珠」と題したことに由来するのだという。
教えられて見たらポスターのなかに、小さなその写真が組み込まれていた。
春雷のなかをゴッホに会いに_e0016828_10243349.jpg
小止みになったので美術館を出て、庭の「被爆者の柿」とその隣にある鐘をみて、鐘の由来を書いた文字が読めないので、「柿食えば鐘が鳴る」ようにしたのか、とつまらないボケを自分にかまして、道端の紅梅に宿った雨粒を見て、これを真珠と見るのはフツーじゃないか、などと思っていたら、またもやピカピカグアラグアラ、雷と底が抜けたような雨が降り出した。
春雷のなかをゴッホに会いに_e0016828_10240044.jpg
ブラブラ、目黒駅に向かおうと思っていたけれど、怖くなるような雨に予定変更、撥ね水浴びて空車を待つが来やしない。
河のようになった道を眺め、靴の中までビショビショ、防水効果が切れたレインコートの袖もぐっしょり、いっそ爽快な気分にもなった。
ようやくきたバスで帰宅、すぐに風呂に入った。
春雷のなかをゴッホに会いに_e0016828_10233426.jpg

Commented by テイク25 at 2021-03-14 16:27 x
素敵な版画ですね。この作品ができるまでの「池田君」の道のりと時間と何よりもゴッホへの愛の深さが伝わってくるような気がします。浮世絵に憧れたゴッホの花魁を教会へ向かう婦人の代わりに配すなんて唸らせるアイディアだなあと思いました。素敵!
Commented by saheizi-inokori at 2021-03-14 18:12
> テイク25さん、そういってくださると我がことのように嬉しいです。
三度も行くのですから一茶とおなじくらいに愛しているのかな。
Commented by doremi730 at 2021-03-14 19:28
ゴッホに迫る凄く迫力のある版画ですね!
本物をみてみたい。。
花魁との取り合わせも驚き!!ですが、素晴らしいです。
Commented by saheizi-inokori at 2021-03-14 21:26
> doremi730さん、会場で異彩を放っていました。
もっとゆっくりみればよかった、と思わせます。
Commented by tona at 2021-03-15 21:30 x
池田さんの版画、素晴らしいですね。
ゴッホ以上にも見えてしまって。
私もこの教会とお墓と麦畑、住んでいた家を見て回りました。
死んでいたような教会が生き生きしてゴッホの力は凄いと思ったのです。
実物の迫力を味わいたいですが、この今の事態が恨めしくなります。
Commented by saheizi-inokori at 2021-03-15 22:24
> tonaさん、ありがとう。
そうですか、やはり行かれたのてすね、世界中を歩かれましたものね。
わたしにとっては版画の迫力と雷雨のすさまじさが忘れ難く刻まれました。
Commented by okanouegurasi at 2021-03-17 05:19
枝にしずくを溜めた紅梅がいいですね。こういう路地をどんどん歩いて、角を曲がったら喫茶店とか古い食堂なんかがあって...という旅を今年はできるかな。東京と京都で。
*池田君には会えましたか~。
Commented by saheizi-inokori at 2021-03-17 09:11
> okanouegurasiさん、雨宿りによさそうな小さなバーがありました。
でもびしょぬれなので入らずに帰りました。
池田君とは短い時間ですが、話も出来ました。
Commented by 練馬の友人 at 2021-03-20 16:27 x
素晴らしい版画です。池田さんの彫刻刀とゴッホの絵筆が響きあっています。
花魁は時空を超えてこちらを視ている!!
Commented by saheizi-inokori at 2021-03-20 18:51
> 練馬の友人さん、芸術は時空を超えますね。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2021-03-14 11:41 | こんなところがあったよ | Comments(10)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31