南無阿弥陀仏南無妙法蓮華経 『仏典をよむ』

余人をもって代えがたい、とはあんなことだった。
川渕さんこそいい面の皮だ。
ルールを無視して密室でものごとを決めてしまう。
いままではワンマン体制だからそれで通ってしまう、それが余人にはできない芸当とされた。
時代の変化、世論の変化を読むことができない。
ツイッターの動向を見ていても、見る間に密室の取り決めを非難する声が高まった。
そういう動きに不感症になってか、きのうの午前中まで川淵会長を既成事実のように祭り上げていたのが、大手メデイアだった。
メデイアの諸君は丸坊主になって詫びなければなるまい。

はじめ森の川淵工作に了解を与えていたと伝えられるスガが変心したのも、勝手に相談役を決めた件のほかにツイッターなどの轟々たる非難に、これでは政権がもたないと怯えた与党幹部の働きかけがあったことも影響しているのではないか。
徒労のように感じられても、飽きずにツイートを繰り返すことにも意味があることを実感できた。
古い昭和的密室政治がひとつ消えた、森神話はシンキローだった。
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「仏典をよむ 死からはじまる仏教史」は面白かった。
仏教は定まったドグマをそのまま継承していくものではない。視点により、立場により、さまざまな姿を取り、異なる見方が成り立つ。「仏教」は単数形のBuddhismではなく、複数形のBuddhismsと見るべきだと言われる。常に途上にあり、流動的で、新たに展開していかなければならない。
インドの初期の仏教と近いという点ならば南伝のバーリ仏教が優れ、インドで発展を続けた最終的な形を継承しているということならばチベット仏教が優れている。
それに対して、東アジアの仏教は変容が著しく、中でも日本仏教は、もはや仏教ではない、と言われるほど大きく異なってしまった。
そんな日本仏教は、どういうところで仏教の根本精神を受け継いでいるか。

そんな問題意識を持ちながら、インド仏教、中国仏教、日本仏教の歴史をそれぞれの中心となる経典に沿いながら解き明かす。
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中島隆博の解説を頼りにして、本書の特徴を列挙してみる。
    仏教を「ブツダの教えから直接生まれた」と考える「通説」を疑い「ブツダの死後、その死を乗り越えようとするところから出発しているという視点」を取る。

    大乗仏教はその最初期において、仏の複数性を並列的に認めた改革運動であった。

    「一切衆生はすべて菩薩である」とする『法華経』の菩薩は、自己完結的なものではなく、他者とかかわるあり方であることが、如来蔵・仏性説ひいては本覚思想とは異なる。

    中国の『摩訶止観』、『碧巌録』においてポイントとなるのは、私たちの心である。
    もっとも身近にありながら、もっともわけの分からない、「私」のもっとも近くにある他者に向かおうとした。

    『日本霊異記』、日本における仏教は、民衆の中に定着していく中で、仏教の理論は深められ、表層から深層へと食い込み、現実にはたらく強力なパワーとなる。

    末木は、近代仏教学が西洋の宗教改革に比定して、近代的な個の宗教として鎌倉仏教を持ち上げたことを批判し、平安仏教の重要性を強調する。
    つまり、最澄の「仏教が世俗に深く関わるという理念であり、それを実現する制度の確立」、すなわち万人が仏の悟りを平等に得られるという一乗の主張であり、在家者向けの梵網戒を出家者の戒律として用い、真俗一貫を実現しようとする主張であった。
    空海は、ほんらい両立不可能な顕教(『大日経』)と密教(『金剛頂経』)を統合し、その顕密体制を仏教土着化の基盤とした。
    即身成仏の考えは本覚思想や葬式仏教の考えにつながる、つまり神秘に対する日本仏教のかたちを空海が決めた。

    また空海は『声字実相義』において、仏の語る言葉を自然が語る音とそれを遥かに越える理解困難な法身説法を考えていた。
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    親鸞は法然の遺した課題―なぜ念仏が他の諸行より優れているか、浄土がいったい何であるか、悟りとは何か―を突き詰めていった。
    念仏を支える「信」は「自分の中に内在するものではなく、弥陀から与えられたものである」とする。
    浄土は、現世においても、往生したら必ず涅槃に入ることができる状態である正定聚を実現できる、これは空海の即身成仏とまったく同じ思想構造である。
    また親鸞は弥陀の他力による往相廻向とともに、他者の救済のために自力の行を行う還相廻向を認める。いわゆる悪人正機説と異なり、悪をなさないように努力することの重要性を認めていた。
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    道元は、本来衆生は悟っているから修行は不要だとする極端な本覚思想を批判して、修証一等すなわち修行していることがそのまま悟りであるとした。
    また道元は中国語と日本語の相違を利用しながら、どちらの言語をも暴力的に解体することで、まったく別のわたしたちのあり方を呈示しようとした。
    さらに仏教原理者・道元は『正法眼蔵』において、禅宗を越えた仏教一般を考え直し、原始仏教の見直しに踏み込んだ。
    ブツダこそが他者であるという原点に晩年の道元は立ち戻ったのだ。
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    日蓮は仏教が国家に先立つものとして、万人が『法華経』に帰依し、仏法が世を導く未来を夢想した。
    仏教を通じて私たちが問うべきは「現実」に還元できない「理想」の可能性ではないか、と末木はいう。

    日本人宣教師・不干斎ハビアンは『妙貞問答』において、「無常」「無我」「空」に示されるように否定の原理を教えの核心に有している仏教をニヒリズムだと批判した。
    否定の否定のその先に、仏教は如何にして他者が登場することを構想し得るか。
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    こうしてメモを取ると、最初に読んで分からなかったことが、少しわかって、やっぱりほとんど分からないままだ。
    またご縁があればもう少し分からせてくれるかもしれない。

    角川ソフィア文庫

Commented by りんご at 2021-02-13 18:03 x
 素晴らしい解説に感謝いたします ご紹介の本をぜひ読みたいです 

『法華経』の菩薩は、自己完結的なものではなく他者とかかわるあり方であること
 否定の否定のその先に仏教は如何にして他者が登場することを構想し得るか=

多少の自己理解や親和性のある箇所のみを引用して恥ずかしいですが 人生の
事象に巻き込まれ、立ち止まり想い又歩く基底に仏教があるかもと ご縁? 
Commented by たま at 2021-02-13 18:42 x
 e-TAX申告書作成に午前中は「いい子」していたケーブルTVインターネットが正午頃をもって突然にダウン。スマホの屋内WiFiにテレビ番組案内もダウン。
 急ぎJCOMショップに駆け込んで調査を依頼したら、結果、室外のボックス内格納の「ブースター」が故障(無料取替)だと。担当者曰く、『ふつうは10年で寿命なのに、よくも20年以上も…』
 当地に移り住んで四半世紀、当時庭に植え付けたのに消滅した「オウバイ」(黄梅)の黄色が素敵ですね!

Commented by saheizi-inokori at 2021-02-13 20:54
> りんごさん、分からないなりに言葉のもつ何事かに牽かれて読みました。
親しみやすく、奥深い本だと思いました。
Commented by saheizi-inokori at 2021-02-13 20:57
> たまさん、電気製品はおおかた十年?くらいでダメになるように設計されているとか。
今は黄色の花が目につきます。
Commented by tona at 2021-02-13 21:19 x
私には難しいです。
先日『嘆異抄をひらく』高森顕徹著を見ましたが、優しいようでいて頭に入りませんでした。
この本をこんなに整理して、ご自分のものにされていらっしゃる・・・頭が全然違います。
頭が悪いのが恥ずかしくなってしまいました。
Commented by at 2021-02-14 07:25 x
ドイツ文学者高橋義孝は道元をよく随想に引いています。
「生も一時の位なり、死も一時の位なり」
含蓄の深い言葉です。
Commented at 2021-02-14 10:03 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2021-02-14 10:05
> tonaさん、とても難しいですね。
本が厚くなるほど付箋をつけました。
難しくても面白くて、もっともっと聞きたい気持ちになるのは何故でしょうね。
解説の中島がいい導きになっています。
Commented by saheizi-inokori at 2021-02-14 10:08
> 福さん、どっちも分からないなりに量子論などに近接している思考を感じます。
Commented by saheizi-inokori at 2021-02-14 16:10
> 鍵コメさん、大丈夫でしたよ。
ご心配ありがとう。
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by saheizi-inokori | 2021-02-13 13:39 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(10)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


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