ソルロンタンがうまかった 「パチンコ」(ミン・ジン・リー)

モーニングショーで石原良純が、兄の伸晃のズル入院のことを話して、すぐに保健所の体制強化に話を振ってしまった。
玉川が、さらっと「不公平感はある。なぜ早く入院できたか説明してほしい」といって、これを機会に無症状でも検査をすることの重要性を知って、政治の方向をそっちに切り替えて欲しい、と、さすがに弟を前に(映像越しとはいえ)、舌鋒鋭く不公平を糾弾することはなかった。
「一人くらい、いいじゃないか」、一般市民なら、こらっ!ですますかもしれないが、その一人が普通の一人じゃない、全国民の代表たる(憲法第43条)国会議員であり、医療崩壊と戦っている(ことになっている)政権を支える与党の領袖であってみれば、とうてい許されることではない。
自宅には家族と隔離できる部屋はあるだろうし、介護のための人を雇うこともやろうと思えばたやすいはずだ。
大病院には一泊十万円でも泊まれないような特別室があって、それは富裕層のために空けてあるのかもしれないが、そこに入れば病院の人的資源を費やすことになる。
なんて、今朝はもう石原のことを書くつもりでなかったのに。
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2009年1月24日のブログ2009年1月24日のブログに載せた、亀戸で食った大トロの写真、ふだんは赤身の方が好きなのに、これはうまかったなあ。
この記事で「牢屋での隠語」、キスグレ セブリ ダイキョウ ガリ ケダモノ ハダシ ハナレル キャタツ、、などのことを書いたら、コメント欄にいろんな業界用語の報告があった。
むかし女学生がトイレに行くことを、「お花を摘みに行く」とか「テコ」とか「ラブリー」とか、教えてくれたそらさん、お元気でいらっしゃるだろうか。
そらさんだけでなく、このブログにコメントを下さった方の半分くらいが今はおいでにならない。
僕の応接の不埒が原因ならまだしも、体調を崩してのことでなければいいのだが。
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「全米図書賞」の最終候補にもなったという韓国系アメリカ人の書いた小説。
早くから評判になっていたが、やっと図書館の順番が来た。
1910年、日本が併合した大韓帝国、釜山の影島(ヨンド)の貧しい下宿屋の夫婦とその娘の話から始まる。
歴史が私たちを見捨てようと、関係ない。
が、冒頭の文章だ。

健気で芯の強い娘・ソンジャが、初めて愛されて愛して、妊娠した金持ちの相手・ハンスは、日本に妻子がいた。
愛している、下宿屋を買い取って家族ともども楽に暮らせるようにしよう。
そういう男に『二度と会いません』というソンジャ。
不義の母子には朝鮮の社会は厳しすぎる。
それを救ったのが、大阪の教会に赴任途中、結核で倒れて下宿屋で逗留を続けてようやく快方に向かったイサクだ。
ソンジャと結婚して日本に連れていけばソンジャの生きる場もできるす、生まれてくる子に「氏」を与えることもできる。

イサクの兄・ヨセプの家に住むイサクとソンジャ。
大阪・猪飼野の朝鮮人たちが住むバラックの街、影島の貧しい下宿屋は、それでも人の住む家だったが、ここは豚と同居する人もいる街だ。
日本人から受ける理不尽な差別と虐待、見捨てるどころか、歴史に苛め抜かれるような毎日も家族の強い愛情で切り抜けようとする。
日本が罪もない朝鮮人にどれほどひどいことをしたか、改めて「復習」しながらも、彼らの逞しくも悲惨な物語に引きづり込まれた。
戦争戦後の動乱のなかで、日本人だってひどい目にあったけれど、朝鮮人は祖国喪失と分断という悲劇にあって、帰る国すらなかったのだ。

あっという間に上巻を読み終えたが、下巻はまだ80人待ち、イマサラ買うのもなんだし、じれったいことだ。
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ソンジャは義姉のキョンヒと仲良くなる。
美人で朗らかなキョンヒは、料理の名人でもある。
そのキョンヒがソルロンタンの作り方を日本人・田中(朝鮮人を差別しない肉屋・被差別出身の噂もある)に教える場面。
「へえ、どないして作るんですか」田中は軽く腕を組んでカウンターにもたれ、キョンヒの美しい顔をしげしげと眺めた。歯並びがよくてきれいだなと思った。
「まず冷たい水で骨をよく洗います。次に骨を茹でます。このときのお湯は捨てます。血や汚れが混じっていて、スープには入れたくないからです。水を替えてまた茹でて、そのまま長い長い時間、ぐつぐつ煮こみます。スープがお豆腐のように白くなったら、大根と刻んだネギを加えて、塩を足します。おいしくて、体にもいいです」
「肉が入ってるほうがうまそうですね」
「ええ、せっかくなら、白いご飯や麵もね」
田中は、さっきお金がないからと買うのをやめた肉の半分をやる。
無料でいただくわけにはいかない、とキョンヒは、カウンターの上の汚れひとつない会計皿に十銭を置き、にっこり微笑んでお辞儀をしてから店をあとにする。

写真は、2006年に若い人たちとソウルにいったときに食ったソルロンタン。
骨付き肉も白いご飯も入っていて、二日酔いによく効いた。

訳 池田真紀子
文藝春秋
Commented by rinrin1345 at 2021-01-25 19:45
韓国版花男でソルロンタンが出てくるのです。食べたことはないのですが何度も見たので雰囲気は食べてます笑
Commented by saheizi-inokori at 2021-01-26 10:07
> rinrin1345さん、韓国版花男、ドラマですか。
ソウルの寒い冬を乗り切る庶民の食べ物ですね。
私は一度だけでしたがうまかったなあ。
Commented by soymedica at 2021-01-26 11:33
そうですか。感染したら議員は与党であれ野党であれ、多くの人の代表だから入院して治療するのはOKかな?優先度は高いだろうな、と思っていたのですが。

医クラで最も怒りを呼んでいるのが、一緒に食事をした議員の扱い。彼らはPCRが陽性であろうと陰性であろうと、2週間の隔離がなされるべきなのです。(実際にそういう運用をするからこそ、会食禁止なんです)。あのタイミングでPCRしたら、たとえ感染していても陰性に出るのが普通。陰性でも2週間引っ込んでおれ!!
Commented by saheizi-inokori at 2021-01-26 11:41
> soymedicaさん、野党議員でも優先されていればまだしも、死者まで出しているのですから。
検査体制の充実に消極的だった与党の領袖として、入院は自粛して欲しかったです。

昨日は、あの議員が委員会に出席して小川議員に「引責だ」と痛罵されていました。
あの程度が自民党のコロナに対する認識、それもいざとなれば自分たちはいつでも治療をうけられるという気持ちがあるからかもしれません。
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by saheizi-inokori | 2021-01-25 12:04 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori