嘘は罪、されど力の源 「21Lessons」(ユヴァル・ノア・ハラリ)
2020年 12月 15日
GOTOが感染拡大に結び付くというエビデンスはない、と強情を張り続けて医療崩壊を招いたガースーも、支持率の急降下には、お答えを差し控えているわけにもいかず、ようやくGOTOの停止を打ち出した、シブシブ。
でも全国のGOTOトラベル停止は、二週間の足踏みをして28日から、「集中的に対策を講じられる」時期などと意味不明な「ゼロ集中」の注釈をつける。
さあ、この二週間の限定セールだ!みんな遅れずに旅に出よ!と煽る嫌らしさ。
感染の抑え込みに全力をあげるという、言葉が虚しい。
この人の嘘も人をディスカレッジさせるなあ。
「21Lessonns」も18課まで読んだ。
あちこちにメモしておきたい言葉がある。そのうちの二つを。
今日のSFの最悪の罪は、知能と意識を混同する傾向にある点かもしれない。この混同のせいで、SFはロボットと人間が戦争になるのではないかと、過剰な心配を抱いているが、実際に恐れる必要があるのは、アルゴリズムによって力を与えられた少数の超人エリート層と、力を奪われたホモ・サピエンスから成る巨大な下層階級との争いだ。人工知能(AI)の将来について考えるにあたっては依然として、カール・マルクスのほうがスティーヴン・スピルバーグよりもはるかに優れた手引きだと言える。非有機的なロボットには意識は(今のところは)ないのだ。
少数の超人エリート層は、アルゴリズムのみならず、バイオテクノロジ―の成果をも独占し自らの健康と長寿だけでなく子供たちのアップグレードも行うかもしれない。
人間はつねにポスト・トゥルースの時代に生きてきた。ホモ・サピエンスはポスト・トゥルースの種であり、その力は虚構を創り出し、それを信じることにかかっている。自己強化型の神話は石器時代以来ずっと、人間の共同体を団結させるのに役立ってきた。実際、ホモ・サピエンスがこの惑星を征服できたのは、虚構を創り出して広める人間ならではの能力に負うところが何より大きい。私たちは、非常に多くの見ず知らずの同類と協力できる唯一の哺乳動物であり、それは人間だけが虚構の物語を創作して広め、厖大な数の他者を説得して信じ込ませることができるからだ。誰もが同じ虚構を信じているかぎり、私たちは全員が同じ法や規則に従い、それによって効果的に協力できる。嘘つきだからと言って、トランプやプーチンやアベを責めるなら、
聖書やクルアーンの記述に何世紀もの間、疑義を申し立てなかった人びとはどうなのか。
「一度だけ語られた嘘は嘘のままであり続けるが、1000回語られた嘘は真実となる」と述べたナチスのゲッベルスは、現代におけるフェイクニュースの先駆けかもしれない。
アベノフエイクは、共同体の力を強化するのではなく保身のためのものであり、人びとを分断するような、お粗末窮まりないチンケな嘘だったから、今後とも嘘であり続けるけれど。
真実と力が手を携えて進める道のりには、自ずと限度がある。(略)
もしあなたが力を欲しているのなら、どこかの時点で虚構を広め始めなくてはならない。
もしこの世界について真実を知りたければ、力を放棄しなければならない。たとえばあなた自身の力の源泉について、盟友を怒らせたり、信奉者を気落ちさせたり、社会の調和を損ねたりするようなことを認めざるを得なくなる。(略)
人間という種は、真実よりも力を好む。私たちはこの世界を理解しようとすることよりも、支配しようとすることに、はるかに多くの時間と努力を投入するし、たとえ世界を理解しようとするときにさえ、たいていは、それによって世界が支配しやすくなることを願ってそうする。したがって、真実が君臨し、神話が無視される社会をあなたが夢見ているのなら、ホモ・サピエンスにはまったく期待が持てない。チンパンジーでも当てにしたほうがまだましだろう。
Commented
by
りんご
at 2020-12-15 20:26
x
saheizi先生 ここ唸りました~
トランプやプーチンやアベを責めるなら 聖書やクルアーンの
記述に何世紀もの間疑義を申し立てなかった人々はどうなの=
トランプやプーチンやアベを責めるなら 聖書やクルアーンの
記述に何世紀もの間疑義を申し立てなかった人々はどうなの=
0
Commented
by
saheizi-inokori at 2020-12-15 21:34
> りんごさん、虚構を信じることによってサピエンスは覇者になったけれど、だからといって虚構に身を委ねることには否定的なハラリです。
Commented
by
j-garden-hirasato at 2020-12-16 06:33
Commented
by
saheizi-inokori at 2020-12-16 09:09
> j-garden-hirasatoさん、どうなんでしょうね。
by saheizi-inokori
| 2020-12-15 07:25
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
Comments(4)