ぼやけて見えるから「時」がある 「時間は存在しない」

ルドルフ・クラウジウスが発表した熱力学の第二法則「熱は熱い物体から冷たい物体にしか移らず、決して逆は生じない」だけが、過去と未来を区別する物理法則だ。
それ以外の、たとえばニュートンの力学、アインシュタインの相対性理論の式、量子力学の方程式、素粒子理論の方程式の、どれもが可逆性がある。
時間と熱には深いつながりがある。
時の流れとは低いエントロピーの世界から高いエントロピーの世界への流れだ。
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しかし、その熱とかエントロピーという概念、過去のエントロピーの方が低いという見方は、自然を近似的、統計的に記述したときにはじめて生じるものなのだ。
だから、過去と未来の違いは、この近似的、統計的なぼやけ(粗視化)と結びついていて、仮にこの世界の詳細、ミクロなレベルでの正確な状態をすべて考慮に入れることができたら、時間の流れの特徴とされる性質は消えてしまう。
ミクロな記述では、いかなる意味でも過去と未来は違わない。
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(10年前の「いつもの木」)
量子力学では、時計で計った時間も量子化される、つまり時間が粒になる。
粒だから最小の規模があって、時間の最小は「プランク時間」と呼ばれ、相対性や重力や量子が絡む現象の特徴となっているさまざまな定数を組み合わせれば簡単に計算できる。
一秒の一億分の一の10億分の一の10億分の一の10億分の一の10億分の一、つまり10のマイナス44乗秒が、最小の時間。
と言うことは、時間には最小幅が存在して、その値に満たないところでは、時間の概念は存在しない。
神はこの世界を連続的な線で描かず、スーラのように軽いタッチで点描したのだ。
7世紀の神学者・セビリアのイシドール、8世紀にはイングランドの聖職者・ベーダ・ウェネラビリスが、12世紀にはスペイン生まれのユダヤ人哲学者・マイモーンなどが、時間がこれ以上分割できないような「原子」でできているといっている。

プランク時間の空間における姉妹がプランク長で、約10のマイナス33センチメートルの長さである。
筆者は、大学時代、この極端に小さな規模でいったい何が起きるのか、という問いに夢中になった。
それを理解することを、自分の目標にすると決意、時間や空間がそのありようを変える極小規模の世界、基本的な量子の世界に降りたときに、いったい何が起きるのか、以来今日までずっと、この目標を達成しようと努めてきた、という。

僕も若いころ、光速を超える乗り物で地球を飛び立って、地球を振り返れば、飛び立つ前の自分の姿が見えるのかなどという、誰しも考えそうな夢想にふけったけれど、それは酒飲み談義に終わってしまった。
本書に出てくる「拡張された現在」の考えへのヒントが隠されていたのになあ。
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(11年前のサンチ)
時間が存在しない世界で時間に追われて時間を楽しみ時間を恐れて生きている。
その仕組みも明かされるのだが、なかなか要約して紹介するのは難しい。
読んでいるときに、なんとなく「ここが肝だ」と思って付箋をつけると、その先も「肝」で付箋、付箋だらけになってしまう。
付箋をつけたところを書いてみようとすると、もっとその前後を読み直さなければならなくなって、読み過ごしていた大事な記述を発見したりもする。
そのうち、ブログに書くのを忘れてもう一度読みふけっている。
それでも理解したとはとうてい言い切れない(当り前だ)。
それでも面白いのはどういうわけなのだろう。
Commented by eblo at 2020-11-25 12:19
「光速を超える乗り物・・・」私もタイムマシンはいずれ現実になるんだと思ってワクワクした覚えがあります。
相変わらず難しくて理解できませんが、「0」を考え出した人の事が頭に浮かびました。無いものはただ「無」のはずなのにそれを目に見えるようにした人がいた。今は0は普通に使われていて、0が無い社会は考えられなくなっている、この記事の内容はいずれ誰もが普通で当然でと思うようになるんでしょうかね。
Commented by tsunojirushi at 2020-11-25 13:01
まるでチンプンカンプンでございます。
お恥ずかしい…_| ̄|○
Commented by saheizi-inokori at 2020-11-25 14:43
> ebloさん、量子論とか本書の主張を誰もが普通で当然と納得するのはなかなか想像しがたいです。でも量子とか素粒子という言葉はかなり人口にカイシャしましたね。
Commented by saheizi-inokori at 2020-11-25 14:44
> tsunojirushiさん、私の書きようが拙いせいでしょう。すみません。
Commented by touseigama696 at 2020-11-25 20:35
偶然にも同じ日に
「時間」に触れて書いてしまうとは
こんなこともあり得るとしても
「時間」がまるで別物のように
大雑把と緻密を際立たせてしまいました
そんなこととは露知らず
アンドロメタほどの距離感で
100年に1秒の狂いは
宇宙ロケットの乗りっぱなしみたいと
アインシュタインがかすかに
頭をよぎったのも不思議です(笑)
毎日のように知的好奇心を埋めて
いただきながら楽しんでいます 多謝
saheizi
Commented by saheizi-inokori at 2020-11-25 21:25
> touseigama696さん、父上の時計の記事を読んで私もシンクロを感じました。シンクロといえば、これにも量子論を思わせるロマンがあります。
私もまいにち職人技の世界を見せていただきありがとうございます。
Commented by okanouegurasi at 2020-11-26 07:34
犬には時間の観念がないというのは、時間の概念にとらわれている人間のワタシには理解可能な別世界ですが、この本は理解不可能な別世界で...難しすぎて解りたくもないデス。すみません。
Commented by saheizi-inokori at 2020-11-26 09:47
> okanouegurasiさん、そんなものを書き続けてすみません。
Commented by みい at 2020-11-26 10:05 x
おはようございます!
 サンチ君には時間なんて関係ないよね^^。
今も11年前もカワイイね💛
「今を楽しく元気にだワン🐕♫」
「うん、見習いたいな^^。」
Commented by saheizi-inokori at 2020-11-26 14:33
> みいさん、あんがと。
さっき散歩の途中で9か月のワンちゃんと仲良くしてきました。
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by saheizi-inokori | 2020-11-25 11:58 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori