君のあだ名は

あだ名は学童の間に階層を作って、それが差別の温床になるから、あだ名で呼ぶことを禁止するという小学校のことがニュースになっていた。
一律に禁止するのではなくて、差別につながるようなあだ名を、なぜそれがいけないかと納得させてやめさせるのが教育ではないか。
差別ということが自分たちの日常にもあって、自分たちも差別を作り出していることに気付かせる、いい機会ではないのか。
「ケンタさん、こっち！」と教えられたとおりに名前に「さん」を付けて呼びながらサッカーをしている子どもたちの映像を見ながら、この子たちがちょっと可哀想に思えた。
番組で中川翔子が、小学校の時に酷いあだ名をつけられて登校するのがイヤになったけれど、だからと言って仇名禁止には反対、後にショコタンと呼んでもらって良かったから、とコメントしているのに頷けた。

僕は小学校ではあだ名がなかったが中学では「ムスビ」と呼ばれた。
頭の形（坊主頭）が似ているというのだ。
三角ムスビなのか俵型のほうか、後者ではないかと思われる。
身体のことであだ名をいうのは差別的ということかもしれないが、高校に進んで普通に名字で呼ばれるとちょっとさみしい気もした。

「狸」と呼ばれた男は、そういわれればなんとなく狸のように可愛かったけれど、本人は嫌がっていた、とくに「たぬ！」なんて呼びつけられたりすると。
「ドスン」と呼ばれた女子はそんなに肥ってはいなかったのに、立居振舞が不器用だったからかな。
だいたい当時は肥満児はいやしない。
彼女が僕を好いているという噂が立って、僕が彼女たちが固まっている前を歩いたりすると、笑い声や「ムスだよ」という囁きが上がったりしたのは悪い気はしなかった。
あの子、どうしているか、会いたいな。

社会人になってからは、名前の漢字から取った愛称（というべきだろう、憎らしい時もあの○○奴が、と言われても）で、ほとんど半世紀近く陰日向なく呼ばれてきた。サンチは、サンチ、さんちゃん、さんころげ、サンチョ、サンちっち、その日のこっちの気分で呼んでいるが、どう呼んでも嬉しそうに尻尾をふる。　
写真が嫌いだから、一枚撮ると、いくら「サンちゃん」と犬なで声で呼んでも向こうを向いている。

高校ではクラスメイトより先生に仇名をつける。
マンモス、花王石鹸などは同窓の方は懐かしく思いだされるのではないか。
先生には面と向かっては仇名でよばなかった。
小学校の小木曽先生を『おみそ』先生と呼んだのは単に舌足らずだったからかもしれない。
「二十四の瞳」の「おなご先生」も懐かしい。佐藤栄作は、「栄ちゃんと呼ばれたい」といって評判になったが、それは無理な感じがした。