五つ子たちももう40半ばだ 滅びつつあるこの国で

おかげさまで(多くの方に激励やご忠告をいただきありがとうございました)、足の痛みがなくなったので、きのうもパンや肉を買いに都立大学までいった。
いつもと違うカフエで図書館で借りていった本を読んだ。
今朝は大掃除。ほぼフルバージョンで。
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江崎グリコの社長が裸で誘拐されたり、森永の毒入りチョコが売られたりした一連の企業脅迫事件・「かい人21面相事件」(1964年~65年)から日航機墜落事件、銀座の高級キャバレーの倒産、角福戦争など、僕の同時代史が、独特の語り口で語られる。
同時代史といっても、登場人物の固有名詞は出てこないから、スマホで調べたり事件の記憶を確かめたりしながら読む。

かい人21面相事件は、真犯人がつかまらないまま時効が成立している。
日航機墜落事件もそうだが、この事件もつくづく面妖な事件だったと思う。

五つ子が生まれたときの大騒動を覚えているだろうか。
この物語も、父親の視点で生々しく感動的に物語られる。
父親の山下氏とはちょっとだけど仕事の接点もあって何回か、酒を飲んだこともある。
鹿児島の出身らしく、剛直ないい男だと思った。
五つ子が生まれたときに奥さんと言い交わしたのは「どんなことがあっても人の援助にすがらず、すべて自分たちで育てよう」ということだったと話してくれた。
まったくの善意からと思われるものも含めて、たとえば土地と家、成人までの養育費、学用品etcなどの提供申し入れがあった由。
NHKのエリートとはいえ社宅住まいのサラリーマンにとっていっぺんに五人の赤んぼを育てることの負担はさぞかし大変だったと思う。
物心がついた五つ子はお互いにその個性を発揮して助け合うようになったとも話してくれた。
山下夫妻の物語を読んで、もういちど彼と杯を交わしたくなった。
鹿児島の高校で同級だった薩摩おごじょの奥様はお元気なのだろうか。
体は弱くてもユーモア精神に富んでたいていのことには驚かない奥様、分娩室に運び込まれた彼女の目を瞑り歯を食い縛って、両手の拳骨を握りしめ、気丈に痛みに耐えるその姿に、緊張と不安の沈黙で迎えた医師、看護婦、4人の助産婦に向かって、
一同の顔を見渡し、無理して笑みを浮かべて、「皆さん、お忙しいでしょうから、さっさと済ませてしまいましょうね」と声をかけた。
という。
そしてほんとに9分で五人は生まれてきた。

父親・山下は、未熟児・五つ子の弱弱しい姿に弱気になって、医師に「もしもこの中にひとりでも生きのこる望みがある子がいたら、その子を生かすことに集中してほしい」と頼んだ。
すると医師は山下にビンタをくれて
お前は、どこまで弱気なんだ!
既に、とっくに、五人それぞれの人生が始まっていることに、なぜ気がつかない!毛髪も、爪も、立派に生え揃っているのを、なぜ見ようとしない!医学に携わる者の最低限の責任として、五人全員を育てるのは当たり前だ!
と言ったとある。
鹿児島の医者もリッパだ。

五つ子が満一歳の誕生日を過ぎると母親は持病の肝炎が悪化し入院する。
この難局をどうやって乗り切ればよいのか?自分が仕事を辞めるしかないか?父親は途方に暮れたが、そんな家族の危機的な状況をさえも、新聞社やテレビ局は暢気に取材しにやってきたのだ。プライバシーもへったくれもあったものではない。思いだしてみればみるほど、じっさい酷い時代だったのだ。この時代の人々が果報に恵まれていたなどというのも、本当かどうか怪しいものだ。しかしそんな時代であっても、後の時代に比べればまだまともだった、不愉快な思いに苛まれずに済んだ、そう思えてならないのは、けっきょくこの国は悪くなり続けている、歴史上現れては消えた無数の国家と同様に、滅びつつあるからなのだろう。いかなる国家も、愚かで、強欲で、場当たり主義的な人間の集まりである限り、衰退し滅亡する宿命からは逃れられない、我々は滅びゆく国に生きている、そしていつでも我々は、その渦中にあるときは何が起こっているかを知らず、過ぎ去った後になって初めてその出来事の意味を知る、ならば未来ではなく過去のどこかの一点に、じつはそのときこそが儚く短い歴史の、かりそめの頂点だったのかもしれない、奇跡のような閃光を放った瞬間も見つかるはずなのだ、それはわずかに半年余り、百八十三日間だけ我々の前に姿を現し、その後は朽ちていく醜態など晒すことなく、ただ一つの建造物を除いて、後腐れなく取り壊され、潔く元の更地へと戻った。
と、いつのまにか話題は大阪万博の田舎芝居に移っていく。
こんな語り口なのだ。
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(昨日のカフエ)

日本学術会議に対する人事介入に抗議して、菅野完が、官邸前でハンガーストライキに入って、すでに半月になる。
その前で繰り広げられた警察の横暴。
天下の公道で「誰を通していいかどうかは、麹町警察が決める」。
杉田という警察上りが陰の総理ともよばれるほどの権勢をふるうと、ほれ、いうじゃないか、トラの威を借るなんとやら。
滅びゆく国のまっぽは末法だ。


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胡乱亭さんのブログにヒントをもらって我が家もトマト鍋、こりゃいける、できのうはその二回目。
ベーコン、ソーセージ、鳥のもも肉、ジャガイモ、玉ねぎ、ナス、トマト、エリンギ、キャベツ。
スープはトマトピューレ、トマトジュース、味噌、昆布だし、チキンブイヨン。
いくら食べてもさっぱりしていてイイネ。
Commented by りんご at 2020-10-17 15:58 x
興味深い本ですね! ご紹介ありがとうございます  
その時代環境にいた自分もぞろぞろ思い出しそうです

saheiziさんは居心地のいいカフェ発掘の天才ですね⋆
此処もすてきな場所。オーバルのテーブルが落ち着きます。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-17 17:06
> りんごさん、大阪万博、目玉男、スタルヒン、横井庄一なども登場、なかなか面白いですよ。
このカフェ、惜しむらくは三時半から五時まで休憩閉店なのです。
近所の奥さんたちのランチがすんだ二時頃に行くしかないなあ。
Commented by j-garden-hirasato at 2020-10-17 17:38
トマト鍋、美味しそうですね。
我が家でも、やってみようかな。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-17 21:54
> j-garden-hirasatoさん、ぜひ!もたれなくて体にもいいですよ。
具はお好みでいろいろ。
Commented by urontei at 2020-10-18 05:08
みんなで広げよう、トマト鍋の輪ッ!〈(^O^)〉

ちょっと味噌を入れるのもアリですね。

カラダにいいと聞いて始めたレシピですが、おいしいのでつい食べ過ぎてしまって、ホントにカラダに良いんだか、悪いんだかわからなくなってしまいます (^^;
Commented by ikuohasegawa at 2020-10-18 05:23
トマトピューレ、トマトジュース、味噌、昆布だし、チキンブイヨンと何でもありの出汁に材を入れるだけでしょう。
やりますトマト鍋。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-18 07:15
> uronteiさん、これは美容にもいいかも、やみつきになりそうです。
ありがとうざんした。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-18 07:17
> ikuohasegawaさん、さいごはご飯をいれて〆です。
Commented by Deko at 2020-10-18 20:04 x
トマトピューレ使うのはシチューが多かったのですが今度はトマト鍋を作ってみます。トマト大好きなので一つメニュが増えました。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-18 21:23
> Dekoさん、幸せな気分になる幸せ鍋です。
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by saheizi-inokori | 2020-10-17 13:10 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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