懐かしいお医者さん

今の歯科医院には、クラシックが流れステンドグラスのある、とても居心地のいい診察室が、二つあって、患者は交代で使う。
診療時間はひとり一時間くらいだから、その間に消毒などが行き届くわけだ。
先生は入ってくると丁寧にお辞儀をして「その後なにか変わったことはありますか」と必ず訊いてくれる。
それほどのことでもないと思いつつも、何かを訴えると、真剣な顔になって10秒ほど考えてから、その原因と推測される事柄を順にあげて、対処方針を明らかにしてくれる。
きのうは、僕の義歯の磨き具合はそれでいいか、と尋ねたことから、「義歯を洗浄するのに超音波洗浄機とブラシの手洗いの両方をやっているけれど、どちらを先にやった方がいいのか」という問題について、超音波洗浄の原理すなわち定常波であること、義歯の汚れに二種類あることを説明して、粘着的汚れは先にブラシでぐちゃぐちゃにしておいた方が超音波の効き目がある、と結論付ける。
ぼんくら頭には半分も理解できないけれど、聴いているのが楽しいし、なんでも納得づくだから治療に信頼が置ける。
歯周病の治療に入る前に、歯周病概論をのべ何時間聴いただろうか。
15~20μしか許容されない義歯造りのアソビをコントロールする技量を身につけるために、この道に生活のすべてを捧げていらっしゃるのだ。
夜遅く休日も休まず、それで保険診療、文字通りの「有難い」先生だ。
懐かしいお医者さん_e0016828_08314722.jpg
(待合室)

きのうは、僕が今も続けている漢法煎じ薬の話から、それを処方してくれた漢法医のことを話した。
3時間ちかく体を触診・問診して処方してもらった「排泄をすすめる薬」を飲んだら、体中に広がり始めて、どこの皮膚科も直せなかった湿疹が一週間足らずで劇的にきれいになった。
「若葉」という煙草をくゆらせて雑然とした診察室はもうもうたる煙。
「先生、煙草はよくないんじゃないですか?」「居残り君、そんなことをいうけれど、世の中の空気の方がずっと汚れているぞ」。
引き出しをゴソゴソやっていたかと思ったら新聞の切り抜きをだしてきた。
東上線の奥の方の土地分譲の広告だった。
「君だって、この辺だったら買えるだろう。ここに家を建てて大きな風呂を作って毎日30分汗びっしょりになるまで入るんだ。」たしかにあの頃なら空気も良かっただろうな。

そんな話をしていたら、歯医者先生も医科歯科大学の頃、東大のその漢法医の話を聞いたことがあって「とてもおもしろかった、これは本物だなあと思いました」とおっしゃる。
懐かしいお医者さん_e0016828_08304482.jpg
足の痛みがなくなったので、歯科医の帰り、いつもと違う道をゆっくり歩いた。
店内には入らず外から覗いたが、本の数は少なかった本屋さん。
懐かしいお医者さん_e0016828_08310443.jpg
「やあ、歩けるようになって良かったね。僕はずっとこうしているんだ」「きっと明日は取りに来てくれるさ、寒いから気をつけてね」
懐かしいお医者さん_e0016828_08312409.jpg
「ちゃんとお参りしていくんだぞ」「アイアイサー」
懐かしいお医者さん_e0016828_08301951.jpg
線路わきの細い道を歩く。
懐かしいお医者さん_e0016828_08295961.jpg
世田谷線はいろんな電車が走って、、喜ぶのはジジイか。
懐かしいお医者さん_e0016828_08293468.jpg

懐かしいお医者さん_e0016828_10120340.jpg

懐かしいお医者さん_e0016828_08290485.jpg
こんな蕎麦屋があったとは、チイトモ知らなんだ。
懐かしいお医者さん_e0016828_08280764.jpg
「千代の湯」、いぜんはちょくちょく入ったことがある、あまり美しくない銭湯、どこから入るのか知っている人しか知らない、その裏側をみた。
百日紅とはよく言ったね。もう少し頑張るかい。
懐かしいお医者さん_e0016828_10253792.jpg
懐かしい医者といえばM医者だ。
小学校の同級生のお父さんだった。
母が具合が悪くて会社に行けずに寝ている。
S商店の電話を借りて往診を頼むと、看護婦さんを後ろに乗せて自転車で現れた。
洗面器に湯たんぽのお湯を用意して待っていた僕は、猫背気味のM先生の笑顔を見るとどんなにほっとしたことか。
Commented by tsunojirushi at 2020-10-16 11:51
お医者さまって、顔を見るだけでほっとするような存在であって欲しいですよね。書かれている歯医者さんのように、「どうしましたか?」とこちらの苦痛について気遣ってくれるひと。
高そうな靴を見せびらかすように足を組んで「助けてくれと言うなら助けないでもないぞ」と言わんばかりの医師を見ると、どーなの、それは、と思います。
Commented by tona at 2020-10-16 13:33 x
世田谷線は1度だけ乗ったことがあります。
そんなにいろいろ電車があるとは。最近地方に行って眺めますと、昔の湘南電車などいろいろ走っていて見るのが楽しみになっています。
招き猫の居る神社、面白い!です。銭湯の裏側まで探索して散歩の達人化していて、なかなかです。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-16 13:36
> tsunojirushiさん、「助けてやらないでもない」で助けてくれるならまだしも、助からないのはお前のせいだ、には情けないです。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-16 13:38
> tonaさん、久しぶりに足の痛さを忘れて歩くといろんなものが目にはいってきました。前に見たものでも話しかけてきたりしました。
Commented by Solar18 at 2020-10-16 17:25
そういう歯医者さんに出会いたいものです。
ところでその「漢方医」って赤門のそばにあったT薬局のAさんですか。父がこの先生を知っていたためか、弟と私はここの煎じ薬だけで育ち、医者にかかったことはゼロです。治りは遅いけれど、害もなくて、今も感謝しています。
Commented by umi_bari at 2020-10-16 17:37
世田谷区、日体大もありました。
教員35年の中、新卒を含めて、10年勤めました。
懐かしいです。
安心出来る先生、良い想い出ですね。
お見事バグースです。
我が家も、片手がない先生が往診に来てくれました。
Commented by りんご at 2020-10-16 19:25 x
前に見たものが話しかけてくる  いいですね~ 

写真を拝見して世間という言葉がふと浮かびました
日本独特のことば世間は木の柵を連想させ(単純!)
多和田さんが漢字と心象の彼是を融通無碍に描く本
ぜひ読みたいな! そんな事まで愉しく空想しました
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-16 22:57
> Solar18さん、そうではなくて前は一ツ橋にあった石井漢法、いまは息子先生が室町でやっています。
わたしは西洋医者にもたくさんかかっていますが、この漢法で、薬だけもらっていますが、基本を支えてくれているようにおもいます。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-16 23:00
> umi_bariさん、今日体大の近くに住んでいます。
春先の腰痛と膝関節炎のときはここの整形クリニックの世話になりましたよ。
いまは休業かな。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-16 23:04
> りんごさん、漢字はイメージを誘いますね。笑、ほんとに笑ってるみたいです。
引きこもりは病院と買い物と読書で日々が矢のごとく過ぎていきます。
多和田さんとかベルリンさんとか、他人とは思えなくなりました。会ったことはなくても。
Commented by at 2020-10-17 07:20 x
新しい蕎麦屋の発見は、天体における・・・
ちと大げさですが、何しろ嬉しくなります。
Commented by saheizi-inokori at 2020-10-17 09:59
> 福さん、そう、でもなかなか行けないのです。
思い切っていってみようかな。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2020-10-16 10:48 | こんなところがあったよ | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31