向こうからやってきた故郷

シャワーを浴びて風呂場から出てくるとスマホの電話が鳴っている。
富子ちゃん、小学校の同級生からだ。
あれ、なんだろう、ちょっと胸騒ぎ。
急いでスピーカーにして、服を着ながら出ると、「佐平次ちゃん?」と明るい声。
ジパング俱楽部の機関紙の会員コーナーに投稿したのが載ったから読んでみて、という。
その内容が、小学4年生のときに、木曾福島から赴任してきた新しい先生の呼びかけで有志(僕を含む)で戸隠に登った思い出を書いたのだと。

ジパング俱楽部に入っていないといったら、電話口で読み上げてくれた。
温和敬信のよっつのクラスの和組とか、蟻の戸渡りとか懐かしい言葉が出てくる。
67年前のことをよく覚えているなあ。
向こうからやってきた故郷_e0016828_11343180.jpg
(5年前に訪ねた小学校の(ずっと狭くなった)庭から見た飯綱山)

無事でいるかなあと心配していた先生に、さっそく電話する。
ご無沙汰している高齢の人に電話するときは、ちょっとドキドキする。
奥さんが、明るい声で出られて、「ああ、佐平次さん!元気ですよ」ひとまず一安心。
92歳、先生の声は張りがあって、ちょっと耳が遠くなったほかは元気そうだ。
富子ちゃんの電話のことを話すと、ああ、米屋の娘三番目だったかな、と思いだす。

戸隠登山のことも思いだして、A先生もいっしょだったとか、富子がお腹が痛くなってとちゅうで先生と休んであとから来た(富子ちゃんは、そんなこともあったのかも、私はスイスイ登ったと書いちゃった、あれから登山が趣味になったのよと笑った)とかディティルも思いだされる。
さっきのことは覚えていないけれど、むかしのことはよく覚えている老人、とはいえ大勢の教え子たちがいて多くのことがあったのに、そんなことを思い出せる先生に驚くやらちょっと胸が熱くなるやら。

ジパング俱楽部には、先生も入っているので、奥さんと二人で雑誌を探して、10月号?載ってないなあ、というので、いったん電話を切って、僕から富子ちゃんに尋ねて、掲載は44ページだと教えてもらい、ふたたび先生に電話すると、その10月号は42ページしか無い由、もういちど富子ちゃんに電話、もしかすると古い会員と雑誌が違うのかもしれない。
コピーを二部貰って、僕から先生に送ることにする。

こんな電話のやり取りのなかで、いろんな思い出やら人の名前が次々に出てきて、長電話の応酬になった。
先生は「ほ~、そうかや」の連続で、どんどん声が若返ってくる。
スピーカーで聞いているから奥さんも加わって、懐かしい話のずるずると、まるで芋ほりだ。
今にして知る故郷の人間関係の真実なども。
向こうからやってきた故郷_e0016828_11370596.jpg
(小学校の裏の浅川、ここの土手で滑ったり草を摘んだり、、)

きょねん亡妻の27回の集まりをしたときに、カミさんが撮ってくれた写真をDフォトのアルバムにまとめてくれたのを出席者に送ったら、義弟からお礼状がきのう届いた。
亡妻とは近所住まいで、同級生でもある。
つまり義弟とも幼馴染で、ガキ時代の思い出がたくさんあるのだ。
御礼状には、むかしのベーゴマ遊びのことなども書いてあって、バラック住宅のことなどを思い出していたら、今朝はこの電話。
こっちから行けない故郷が向こうからやってきて慰めてくれた。

Commented by tsunojirushi at 2020-09-29 13:19
ああ、素敵なお話…。
読める環境にないとなると読み上げてくれるその姿勢、なんだかとても尊敬しました。なんて明るく真っ直ぐなんだろう。
お腹痛くなったのを忘れちゃってるところも可愛い。
ご家族を含め素敵な方達と繋がっておいでなのだなと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-29 13:33
> tsunojirushiさん、67年前の腹痛は忘れるかもしれないですね、良いことだけを覚えているっていいなあ。
Commented by jyariko-2 at 2020-09-29 16:27
故郷を思う気持ちって実家を思う気持ちと似ているのでしょうか
故郷を思う気持ちに沿いきれないでいる私です
なんだか押しつけがましいように思ってしまうんです
懐かしさだけではない自分の原点見たいな魂みたいなものも
あるのでしょうか
なんだか胸が痛くなってきそうです
Commented by koro49 at 2020-09-29 16:55
残念、私のにも載ってませんでした^^;
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-29 16:57
> jyariko-2さん、引き揚げ者としてもともとは無縁の地に育ったので、また実家というものも持たないので、根無し草のような私です。
それだけにほんわかとでも故郷らしきものがあって、その証明としての先生とか友人が現存してくれるのは、懐かしさとともにほっとするのです。
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-29 16:58
> koro49さん、不思議ですね。
そんな二様のものをつくるなんて。
コピーが届いたらブログで紹介します。
Commented by pallet-sorairo at 2020-09-29 17:13
手元にちょうどあったので見たんですが…
私のにも載ってませんでした。
月号が違うとか?
Commented by Deko at 2020-09-29 19:23 x
こんばんわ
私も思わず大人の休日倶楽部9月号42ページジバング倶楽部72ページを取り出してみていましたがやはりありませんでした。幼馴染との会話はすぐにその頃に戻れますね。それにしても高高齢の先生は記憶力がすごいですね。私の同級生でも小学校時代を鮮明に覚えている人が私はというと最近の事も忘れてしまいます。
Commented by doremi730 at 2020-09-29 20:13
年老いるほど、同級生達との再会や会話が
一番心休まります。
先生もお元気で、電話でも話されて良かったですね。
コピーの記事を楽しみにしています。
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-29 21:26
> pallet-sorairoさん、10月号だそうです。
会員コーナーってありましたか?
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-29 21:29
> Dekoさん、10月号だそうですよ。
私は昔も今も忘れるなあ。
でも忘れると思い出させてもらったときの喜びが新鮮でいいです。
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-29 21:30
> doremi730さん、先生がいちばん喜んだのかも知れません。
Commented by hanamomo60 at 2020-09-29 21:33
おばんです。
>懐かしい話のずるずると、まるで芋ほりだ。今にして知る故郷の人間関係の真実なども。
芋ほり!表現が素晴らしい。
恩師がお元気なのですね。すごいことですね。
富子さん、saheiziさんに教えてあげたかったのですね。
同級生はいいものですね。
Commented by wawa38 at 2020-09-29 22:20
前日の記事のことを今ごろすみません。
7万円ではとても生きていけません。
いつの時代の人たちでしょう。

エキサイトも記事を削除することがあるのですか。
知らなかった!
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-30 06:23
> hanamomo60さん、先生も富ちゃんも話がとまらないのですよ。
たのしかったなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-30 06:24
> wawa38さん、投稿を拒否することもありうべし、そんな決まりになるようですよ。
Commented by j-garden-hirasato at 2020-09-30 07:08
92歳の先生、お元気で何よりでした。
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-30 09:43
> j-garden-hirasatoさん、92!驚く私も喜寿なのです。
長生き社会はすごいですね。
Commented by ikuohasegawa at 2020-09-30 10:17
故郷が向こうからやって来るなんて、羨ましい。

参加することを止めてしまった中学校の同級会の案内くらいしか来ません。同級会は正月二日開催なのでねえ。
Commented by saheizi-inokori at 2020-09-30 13:13
> ikuohasegawaさん、ぱっと来てさっと去っていきました。
余韻はたっぷり。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2020-09-29 11:48 | よしなしごと | Comments(20)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31