A・R・ストーン先生のことを知ってますか

信濃町といっても、長野県の野尻湖のある町、柏原村・富士里村・信濃尻村・古間村が合併してできた町だ。
そこに住む小学校の友人・池田充君からCDが届いた。
「ヒマな時に見てくれ」、ヒマだとも!すぐに見た。
信越放送/SBCのローカルワイド番組「ずくだせテレビ」(7月29日)の録画だった。
「ずく」とは懐かしい長野の方言で「やる気」、僕は「ズクなし」のように否定的に使った。
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信濃町はトウモロコシがうまくて、いまでは戸隠までもろこし街道なんてのがあるのだという。
ツルツルピカピカのゴールドラッシュネオという新品種を生でかじったり、醤油をつけて焼いたりしてみせる。
僕も小さいころはトウモロコシというともっぱら焼きトウモロコシだった。
画面から香ばしい匂いが漂ってくるようで、思わず生唾ゴクリ。

さて、そのトウモロコシを信濃町に広めたのは、カナダから届いた手紙ならぬ、牧師のアルフレッド・ラッセル・ストーンだ、そのストーン先生のことを調べました、というのが番組のテーマだった。
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番組のリポーターは、ポカスカジャンの大久保ノブオ、長野市出身なのだ。
野尻湖の畔に「A・R・ストーン先生の記念碑」というのがあると聞いて、現地に行く。
おお、懐かしの野尻湖!霧が出ている、弁天島もあるある!
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石碑の文字は「A・E・マシューズ書」となっているが、なんとなく池田君の字に似ている。
何度か(池田君とも)野尻湖にいったけれど、この石碑をみたのだろうか。
一茶の句を版画にし郷土史家といってもいい池田君が、一茶の句碑とか弁天島で泊まった中勘助の碑などを教えてくれたときに見せてくれたのかもしれないが、覚えていない。

この碑のことを池畔の旅館・藤屋の女将に尋ねた大久保は、「みつるさんが、中心になって作った」ことを聞き、蕎麦やを営む池田君に会いに行く。
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野尻湖の国際村村長をしていたA・E・マシューズから同じ宣教師仲間のストーン先生が信濃尻村の人たちに尽してくれたいろいろを聞いて、地元の人たちに話したのが、石碑を作るきっかけだった(1992年)。

それまでここで採れるもろこしは、モチモロコシと言って、紫色で甘くない。
ストーン先生は寒暖差の大きいカナダと気候が似ている野尻に、新種のクロスバンダムを移入した、それが信濃町の名産の元祖となった。
先生は、ルバーブやトマト、アスパラなどの栽培も指導した。
池田君は赤い茎のルバーブも栽培してジャムやケーキなどを作っている。
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信濃町は450年前から刃物の生産でも有名だが、かつて鉄を打ち出すのは人力であり、過酷な労働だった。
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ストーン先生は、カナダから電力で動くハンマーを導入する。
信濃町の小学校で英語も教えてくれた。
貧しい 力がない人に寄り添う人だった
と池田君は語る。
戦争中、カナダに帰国して、日本人の移民が強制収容所に入れられたときには、先生は収容所をなんども訪れて、励ましたり食事に連れ出したりもしたという。
戦争をしている相手にですよ。
それがなにより有り難かった!
と池田君は自分も収容されていたかのようにいうのだ。
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そして、胸を打たれたのは、ストーン先生の最後だ。
1954年の洞爺丸事故の際、船に乗り合わせた先生は、泳げない日本人に自分の救命胴衣をあげて死んだのだ。
三浦綾子の「氷点」には先生をモデルにした人物が登場するという。

録画を見終わって、池田君に電話した。
ストーン先生の子供と付き合いがあるそうで、その話によると、先生は自分は泳げないくせに、泳げない子供を野尻湖で無理やり泳がせたそうだ。
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カナダからの便りならぬ野尻湖からの便りは涼しさと懐かしさ、そして感動を運んできた。

Commented by rinrin1345 at 2020-08-17 12:29
昔、野尻湖畔に別荘がある友達に誘われて行った事があります。湖が近くにあるっていいな〜と思いました。夏になると思い出すけしきです。でもそんな立派な方が居たとは知りませんでした。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-17 13:08
> rinrin1345さん、湖もいいし周囲の山々がなんとも言えないですね。
もう一度いくことができるかなあ。
Commented by tsunojirushi at 2020-08-17 15:08
なんて立派な人なんだ。ご紹介くださってありがとうございます。
茅野の親戚の家に子供の頃行ったという話をいつか記事に書きました。お昼ご飯に蒸したとうもろこしをご馳走になり、その美味しさにビックリしたのを今でも覚えています。私はあれでとうもろこし好きになったように思います。
Commented by jyariko-2 at 2020-08-17 15:30
saheiziさんぜひぜひまた野尻湖へお出かけになてください
松本よりこちらが先ですね
胸が熱くなるようなロマンあふれるお話し
池田君さんも素敵な方ですね
野尻湖は高校の時に始めて行きました 
林の中にテントを張って飯盒でご飯を炊いて・・・・・
男の先輩がカッコよくて遠くからみていたり
ドキドキしていたものです   懐かしい
信濃町と言えば一茶ですね 一茶を求め歩いたこともあります黒姫高原も 秋にはコスモスが沢山咲くことでしょう
私も行きたくなってきました
Commented by りんご at 2020-08-17 16:25 x
ご友人からの嬉しい贈り物ですね
ストーン先生 素晴らしいお方でしたね!

洞爺丸には知り合いが乗船し亡くなりました
幼心にも七重浜は悲しい地名として刻まれました
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-17 16:59
> tsunojirushiさん、もっと知られてもいい人ですよね。
トウモロコシ、スイカ、今年はまだ食べてないです。
ああいうものでも、買ってきて食べようとするのは気持ちのゆとりが必要です、私には。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-17 17:00
> jyariko-2さん、秋の野尻湖は寂しさも募ってなかなかいいと思いますよ。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-17 17:02
> りんごさん、ああ、そうだったのですか。
ストーン先生と一緒にいるのかなあ。
Commented by テイク25 at 2020-08-17 17:19 x
ストーン先生が残した信濃町の美味しそうなトウモロコシ。お友だちの「池田君」のストーン先生の思い出。ストーン先生が育て方を指導したルバーブ栽培を引き継いで「池田君」はジャムも作る。「A.R.ストーン先生の記念碑」の「池田君」の字に似ている字・・・。

「困っている人を救えるのであれば 自分の命に代えても助ける」というストーン先生の崇高な信念を知ることができました。「ずくだせテレビ」「池田君」そして「梟通信~ホンの戯言」のお陰です。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-17 18:27
> テイク25さん、氷点を読もうと思います。
Commented by doremi730 at 2020-08-17 20:48
ストーン先生のいいお話をありがとうございます。
50年前の大学時代に信濃学寮でのゼミの合宿で主人と会い
野尻湖でボートに乗った夏を想い出しました。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-17 21:02
> doremi730さん、私も野尻湖にはたくさんの思い出があります。
もういちど行けるかなあ。
Commented at 2020-08-17 21:13 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-17 22:04
> 鍵コメさん、私も学生時代の夏休みに野尻湖の寮で遊び、自転車で湖一周したことがあります。そのあと、みんなをバラックのような我が家に連れてきてスイカを食べました。
楽しい思い出です。
氷点、読んだこともないのになんとなくメロドラマかと思っていましたが、読んでみましょう。
Commented by ikuohasegawa at 2020-08-18 05:44
何度か行っています。
ザワザワしていない、落ち着いた所という印象が強いです。
とても遠いところですからねえ。
また行きたくなりました。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-18 07:21
> ikuohasegawaさん、そうなんですね、遠い!どこからって話でもありますが。長野にいたころも遠足でした。
Commented by みい at 2020-08-18 12:17 x
こんにちは~
 そんな方が居られたのですね。
いつかその場所に行ってみたいと思いました。
行きたい場所リストに追加しました^^。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-18 12:20
> みいさん、ぜひ!ちょっと遠いけれど戸隠や黒姫、妙高などもコースにいれて。
Commented by okanouegurasi at 2020-08-19 10:10
昔のかなりの宣教師さんたち、心構えが違いますね。現代の教会(プロテスタント、カソリック、カルトを問わず)の堕落ぶりったら。
アメリカは慣用句のようにちょっとしたスピーチの後<神の祝福をあなたに>というんですが...ストーン宣教師は本当に信濃と人々がお好きだったのでしょう。胸打たれますね。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-19 12:31
> okanouegurasiさん、幼い双子を亡くされてその遺骸を野尻湖の人の土地に葬った縁もあると聞きました。
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by saheizi-inokori | 2020-08-17 12:12 | よしなしごと | Comments(20)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori