次作に期待するか 「破局」(遠野遥)

帰省する、しない、という話を見聞きしていて、学生時代の夏休みだったか、母が具合が悪くて入院しているのに、帰省しないで寮の仕事をしていたことを思い出す。
往復の旅費も惜しかったのだ。
友人が、代わりに見舞いに行ってくれた。
大秀才だった友人は早くに亡くなった。
憎まれっ子僕はまだ生きている。
次作に期待するか 「破局」(遠野遥)_e0016828_10412356.jpg
きのうはもう一つの芥川賞受賞作品「破局」を読んだ。
作者の遠野遥(遥)は、1991年生まれ、2019年の「改良」で文藝賞をとって、二作目の本作品がいきなり芥川賞の候補になり、そのまま受賞、受賞後の本人は「頭がついていない状況」といい、それはそれほど感動しているのかと思うと、文春のインタビューでは「嬉しいとか嬉しくないとか以前に、自分の感情を把握できていないところが、昔からあります」「嬉しいとは何ですか?と聞きたいような感じです」と言ってるから、ちょっと違うのだ。

慶応大学(とみられる)法学部4年生、公務員試験一本に絞ってちゃんと受験勉強をする、母校の高校ラグビーのコーチもして、なんとかして自分のとき達成した準決勝まで進めるチームにしたいとシゴいている。
筋トレに励み、自慰も日課、世の中の正義に忠実で、女性にはやさしくしろという父の言葉に従って女性の意に染まないセックスはしないが、セックスそのものは大好きだ。

子供の頃から同級生だった政治家志望の恋人にふられ、田舎からきた一年生と付き合いだす。
その子は料理が得意で初体験だったが、やがてニンフォマニアのようになる。

ハードボイルドのような淡々とした文体で、さいしょは主人公はテロリストなのかと思ったくらいだが、そこらにいそうな坊ちゃん大学生にすぎないようだ。
次作に期待するか 「破局」(遠野遥)_e0016828_10410215.jpg
女性と手を握ったら、その先の結婚を考えなければいけないかと思っていた、アルバイトに明け暮れて、公務員試験の一次にはとくだん勉強しなくても合格したけれど、大蔵省なんて会計係に過ぎないのだろうと二次試験を受けなかった僕とは、まるで違う学生だ。
好きになれそうもないが、どこか僕にも似ているところがあるとも思う。
無知であった、というところか。
次作に期待するか 「破局」(遠野遥)_e0016828_10423256.jpg

間違いなくやろう、と思っていたのに、自分が得意だと思ったものに足を救われてしまう。
黒いユーモアもある。
でも選者がこぞって受賞作に推して褒めている、それほどのものかと思う。
本人が「破局」は、代表作にはならないと手応えを述べる次作を読んでみようか。
Commented by hanamomo60 at 2020-08-09 13:22
こんにちは。秋田はまだ梅雨のような天気です。
昨夜は怖いほど降りました。

遠野遥のようにすんなりと芥川賞に選ばれる人もいれば、毎回のように候補になりながらかなり経って賞を貰う人もいる。
>嬉しいとか嬉しくないとか以前に、自分の感情を把握できていないところが、昔からあります」「嬉しいとは何ですか?と聞きたいような感じです
嬉しいって嬉しいことですよね。
偶然の受賞なのでしょうか?
選者の顔触れも若いですね。
川上弘美、平野啓一郎・・・・・
Commented by unburro at 2020-08-09 13:28
佐平次さんが、大蔵官僚になっていたら、
この国は、もう少しマシな国になっていたかもしれない!
しかし、
心身の健康のためには、官僚にならなくて良かったですね。

立秋過ぎて、本格的に夏らしくなってきましたね。
どうぞ、お身体に気をつけてお過ごし下さい。
Commented by rinrin1345 at 2020-08-09 17:45
佐平次さんの読書の速さにはタイトルだけでもついていけません。私も十分ばーさんですが仕事をやめたらそんな日が来るのでしょうか?無理ね
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-09 18:13
> hanamomo60さん、たかが芥川賞、されど芥川賞ですね。
なぜこれほど揃って評価したのか、私には分かりません。
プロの読み方があるのでしょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-09 18:15
> unburroさん、とうていあんな仕事はつとまりません。
暑い暑い!エアコンなんとかしなくちゃ!
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-09 18:17
> rinrin1345さん、エンタメみたいな小説ですから。

Commented by ikuohasegawa at 2020-08-10 05:26
今芥川賞作品は,saheiziさんの紹介文で由とします。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-10 06:28
> ikuohasegawaさん、単行本一冊より安い文春、この号だけは買うのです。
Commented by j-garden-hirasato at 2020-08-10 08:47
今年は、娘も帰省しない、
自分も、静岡に帰省しない。
感染しても、へっちゃらな時代に
早くならないものでしょうか。
Commented at 2020-08-10 09:12 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-10 09:36
> j-garden-hirasatoさん、さびしいことですね。
でも心臓にも悪い影響が残るとのこと、用心にこしたことはないです。
Commented by saheizi-inokori at 2020-08-10 09:37
> 鍵コメさん、え!そんなあ!
またいつか読ませて(見せて)くださいね。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2020-08-09 12:20 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori