歴史とは根本において批判である

予報では50%の雨、部屋干しして、ベランダの日差しをみて、外に干しなおして、雲が厚くなってきたのでまた部屋干し、火加減だいじな洗濯シエフなのだ。
きのうは期日前投票に等々力までわずかな距離をバスに乗って行った。
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とちゅうで開店準備中の焼き鳥やを横目でみて、あらあら、密そのものだ、
換気扇が形ばかりでモウモウたる煙立ち込め、譲り合ってぎゅうぎゅうに座り、口角泡を飛ばして、巨人の勝利を喜びかつは悲しみ、ろくに洗ってないジョッキでビールを呷り、飛沫だらけのバッチイ焼き鳥を食うから焼き鳥屋なのだ。

むかし商店開発に関わった時に、電線コイルの芯をひっくり返したテーブル、ビールの箱に腰かけて、バケツに串を放り込み、ビルにかかる月を仰ぎながら立ちション、というコンセプトの焼き鳥屋を提案したことがある。
新都心に働く故郷を失くした人たちに、せめてもの安らぎの場所をと、なに実は僕自身がそういう店が欲しかったのだ。
猪苗代の田んぼの中の農道に面したバラックの居酒屋、そのころ流行りだしたステレオでサブちゃんが「はるばる来たぜ函館へ」と飽きもせずに歌っていた、そんな店だ。
立ちションは、しゃれとしても、他のすべてが却下されて、その代わりにできたものは、こじゃれた焼き鳥やのチェ‐ン店だった。
秋刀魚は目黒に限るということが、分からない連中ばかりだったのよ。
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等々力からバスで駒沢まで行き、三浦半島直送の魚を売っている店でカツオを買い、向かいの和菓子屋で赤飯を一折求めて、公園を歩いた。
テラス席でコーヒーを飲みたいという強い衝動を覚えたが、我慢した。
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「天皇と軍隊の近代史」(加藤陽子)は面白かった。
ときどき、妙に省略した文章があって、あれはそんなことは先刻承知の助を相手にして書いているらしいが、逆説・反語なのかそのまま読めばいいのか、解釈に窮する表現も多いのだ。

いくつかの論文を編んだ本書、その中に、東大教養学部で「この国のかたち‐日本の自己イメージ」と題して行われた連続講義を文章化したものも載っている。
そのなかに
日本のみならず、ロシア、中国、韓国など、日露戦争に関係した当事国において史料の保存と公開に支えられて格段に進展してきた研究史を確認する必要があり、同様のことは、日露戦争の10年前に戦われた日清戦争についてもいえるでしょう。日本人および日本の国家としての記憶=「この国のかたち」が、現実に起きた歴史の事実とかけ離れているとしたら問題です。戦争に関する国家と国民の記憶が歴史的事実と異なっている場合、日本と密接不可分の歴史を共有する隣国と共存してゆくのは不可能です。
とある。
研究の成果としての、新しい歴史解釈については、すでにこのブログにも日清戦争の原因などについて紹介した。
隣国との間で、最新の歴史研究の成果を共有していることが、共存の必須の条件だという指摘は、アベなどの歴史改竄主義者たちが跋扈している現状に鑑み、しごく真っ当な指摘だと思うと同時に、いささか暗澹たる気持ちにもなる。
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1940年に羽仁五郎が、徴集を猶予されている大学生に、ほかの青年たちが戦場で命をかけて戦っているときに、それを猶予された学生は、
学問の戦場において理性の戦線より退却するがごときことがあったならば、諸君は何のかんばせかあって、現在常務学業をなげうって砲煙のなかに辛苦する同胞朋友にまみえることができようか。
と説き、
歴史とは、根本において、批判である。
と喝破しているそうだ。

怠惰な学生だったときにこの言葉を知りたかった。
もっとも浮かれトンビの胸に落ちたかどうか。
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本書から、もう一か所、アメリカが1924年にいわゆる「排日」移民法を採択した折の陸軍参謀本部に生じた反米感情について。

年間150人ほどの移民のことであったが、これまで日米紳士協約で認められてきた特別待遇を与えなくなり「支那人其の他と同一なる、市民権を獲得することを得ざる外国人」と同じくくりに入れられてしまう、そのことに参謀本部は強い衝撃を受けた。
その論理は
アメリカが日本を、帰化不能外人として扱うことは、アメリカが中国人と日本人を同等と見ていることを意味し、中国に対する日本の武威の減少となり、それは中国の日本に対する軽蔑を招く、よって戦争の機会が増大する。
というものだった。
古代の日本が、中国と対等の外交関係を築いていることで国内的な威信を高めようとしていたことを思えば、このような認識が、国防計画を策定する中心の一つであった参謀本部に生じていたことは感慨深い。
と加藤は書いている。
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与世山澄子の「イントロデューシング」、長く沖縄で歌っていた彼女の初アルバム。
こんな天気によく似合う。
Commented by urontei at 2020-06-30 22:02
幸田露伴は『虚を束ねて歴史となす』と言ったそうです。

まさに今のニッポンの状況を言い当てた先見の明というべきか、それとも、歴史とはそもそもそういうものなのか・・・

為政者による “虚” の歴史は、だからこそ批判され続けるべきであるという、きょうの佐平次さんの記事につながる至言ではないかと。
Commented by りんご at 2020-06-30 22:50
きょうも緑や心地よさそうなカフェ、聴いてみたくなる音楽の
ご紹介に支えられて 厳しい記事を読ませて頂きました 

「日本と密接不可分の歴史を共有する隣国と共存してゆくのは
 不可能です」 日本は本気で孤児になるつもりでしょうか
人口減少は止まらず、暮らしを感じる町の灯は消え続けている
リベラルな芯を把持する国を目指すのか 令和陸軍でいくのか 
Commented by saheizi-inokori at 2020-07-01 06:16
> uronteiさん、達観ですね。

Commented by saheizi-inokori at 2020-07-01 06:18
> りんごさん、アメリカにひれ伏した陸軍です。
Commented by at 2020-07-01 06:21
>等々力からバスで駒沢まで行き、三浦半島直送の魚を売っている店でカツオを買い、向かいの和菓子屋で赤飯を一折求めて、公園を歩いた。
ああ、懐かしい、「男性自身」ですね。
瞳氏の場合、知り合いの店の人との交流が描かれますが、
丸谷才一は文庫本の解説で「そのような親密な感じにはなじめない」なんて言っていました(笑)
Commented by saheizi-inokori at 2020-07-01 09:24
> 福さん、魚屋とはいつもちょっとした会話、ワサビをサービスしろ、なんてことを言いあうのです。
今はマスクですからね。
Commented by KAZUMAKI at 2020-07-01 18:32
はじめまして。KAZUMAKIと申します。
とても興味深い内容でした。
本のざっくりとした内容を拝見しても、現在の歴史問題や安倍政権のあり方を考えさせられました、、
また拝見させていただきます!
よかったら私のチャンネルもご覧になってください!
〈ライフハックサラリーマン〉
Commented by saheizi-inokori at 2020-07-01 21:37
> KAZUMAKIさん、いらっしゃいませ。
そちらにもお邪魔します。
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by saheizi-inokori | 2020-06-30 12:43 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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