夢を見よう 「狐の手套」(堀辰雄)&「明恵 夢を生きる」(河合隼雄)

あっちこちが痛んで病院で診て貰わなくてはと思うが、それも怖くて我慢している。
医療費の節約になって国は喜ぶことだろう。
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ハイデガーの難しい言葉の遊び?に疲れて堀辰雄の「大和路・信濃路」のなかの「狐の手套(てぶくろ)」と「雉子(きじ)日記」を読む。
芸術品の魅力は、結局、そういう謎めいたものにある。謎のないものは、すぐ私達を倦きさせるのだ。

芥川さんのような作家は、そういう謎をいつも作品の奥深くに秘めている。それが作品を解りにくくさせている。が、室生さんの場合は、その謎をあんまり開けっ放しのところに置いているので、反って誰からも気づかれずにいるのだ。(「狐の手套(てぶくろ)」)
芥川と犀星に見いだされた堀の短いけれど、含蓄に富んだ二人の批評。
残念ながら、僕は芥川も犀星も通り過ぎるようにしてしか読んでいないから、堀の言葉の言葉としての面白さしか味わえない。
三年ほどまえに、この本を手に取って、そのときは「信濃路」のなかの「辛夷の花」と「橇の上にて」を読んでいた。
そのブログでも
今のぼくも暮れまでのあの「まだまだ若いぞ」という高揚感がうそのように消えてしまった。
ジエットコースターの下降だ。
ジエットコースターならまた上がっていく、それは分かっているがその先はまた下って、、さいごは降りなきゃならない、ということを思う。
などと書いている。
あれから、いったん上がったジェットコースターは、今また下降し、こんどはもう上がることはないのではないかと思っている。
そこが三年前との違いだ。
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40年近く前に入院した亡妻から頼まれて買った本、なんども読みかけては、はじめの数ページで放り出していたのだが、きのう読み始めると面白い。
このところ、河合隼雄などのユング精神分析とか、共時性のこと、仏教関連の本などを読んでいたから、そして、山本七平&増原良彦の「般若心経」に、明恵が北条泰時に「貞永式目」に盛るべき経済思想を指南したことなどがあったから、強い共時性を感じたのだ。

1173年に生まれ、平家から源氏、北条へと権力がうつり、法然、親鸞、道元、日蓮などが現れる激動の時代に生きた名僧・明恵は、19歳から死ぬ60歳の前年まで、まいにち見た夢の日記をつけた。
その夢は彼の人生の中に重要な位置を占め、覚醒時の生活と見事にまじり合って、ひとつの絵巻を織りなしているのである。
と、ちょっとくどく河合はいう。
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夢分析という精神医学の手法がある。
その話のなかで、六つの学派のうち、現存在分析学派という学派がフロイト派と両極端に位置して、「個々の夢の一回限りの個別性を極端に強調し、夢の内容やテーマによっては、ある程度一般的に考えられる象徴理論をも受け入れない」とあった。
ん?現存在だと?
ググってみたら。やはりハイデガーの「存在と時間」に影響を受けた人間学的精神病理学者たちで、「人間の現存在の本質に志向的意識の世界解釈や対他対応を認め、、、云云かんぬん」とある。
しつこく「難解」が追いかけてくる、難解共時性だ。
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初めて知ったのは、マライ半島に住むセノイ族のこと。
セノイ族は少なくとも数世紀にわたって、警察、監獄、精神病院の類を一切必要とせず、すべての成員が平和に暮らしてきた。
彼らの生き方を長年調査してきた、人類学者スチュアートは、その秘密が彼らの夢分析の能力ることをつきとめた。
朝食の時に、年長者は幼少の者たちの語る昨夜の夢について耳を傾け、その内容を、たとえば「怖い」夢であっても肯定的に受けとめて、次回はその続きを、もっとリラックスしてよく見ておけ、などとアドバイスする。
自分の夢を傍観者として「見る」のではなく、それを主体的に「体験」し、深化して自らのものとする。
このような「体験」の蓄積によって、セノイ族の人々は精神の健康を保つことが可能としたというのだ。

ウイキペディアなどでちょっと調べたけれど、そのことについての記述はなかった。
いくら共時性に導かれた日々を送りたいと思っても、これからマレー半島の奥地まで出かけることはムリだ。
ほかに、ネット上で「それほど夢中心の生活をしているわけではない」などという記事も見つけたが、なんしろスチュアートの「マラヤの夢理論」は1951年の発行だから、その後夢のない生活になったのかもしれない。
バクのような人が現実にいると考えて、本を読み進める。
Commented by at 2020-05-28 06:29 x
あらなつかしや、この新潮文庫の表紙絵が好きです。
堀辰雄の掘り炬燵、なんてわけのわからないことをほざいて読んだ記憶が・・・

Commented by j-garden-hirasato at 2020-05-28 07:10
夢分析、興味はあるのですが、
ちゃんと学んでいなくて…。
Commented by saheizi-inokori at 2020-05-28 07:14
> 福さん、いいですね、この絵。
私も気に入りました。
Commented by saheizi-inokori at 2020-05-28 07:19
> j-garden-hirasatoさん、専門的に学ぶのはとても無理ですが、概要を知るのが面白いです。
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by saheizi-inokori | 2020-05-27 12:30 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori