個性化への道はおそろしい 「共時性の深層」＆「無意識の構造」

きょうはカミさんとサンチの誕生日だ。
会わざること久しくなった子供たちから誕プレが届いた。
妙にサンチが荷物に強く興味を示すと思ったら、玩具が入っていたのだ。僕は何もプレゼントの用意がない。
近所の散歩以外外出しないから、、なんていうのは逃げ口上、通販で調えればいいのだが、なにも思いつかないままになってしまった。
その代わりということもないが、いつもの掃除洗濯を入念に３時間かけてやった。
いつもやっていなければ、きょうの掃除洗濯は俺に任せとけ、なんて格好つけられるのだが、いつもやっていると有難みはないだろう。
トイレに這いつくばって床掃除もしたのになあ。
まあ、多事多端なおりから、なんとか元気にこの日を迎えたことをもってプレゼントとしたい。
僕だって、なにか貰うよりもカミさんやサンチが元気に機嫌良くしてくれることが最高にうれしいもの。「共時性の深層」から引きたい箇所はまだまだたくさんあるけれど、今日は一箇所だけ。

ユングは、心の治療に際して、症状の因果性よりも目的性を重視した。つまり、過去に遡って原因を突きとめ、それをコントロールすることによって、結果である症状の解消を図るのではなく、その症状が将来的に現状をどう変えることを目指しているかを見出し、その目的を成就させることにより症状の存在意義を失わせ、問題を解決しようとする。

原因がはっきりしない心の問題は少なくない。しかし、そのような場合でも、目的を明らかにして、その実現に手を貸すことができる。だからこそ、ユングは目的性にこだわった。
過去に拘泥するのではなく、未来に目を向ける。

無意識、とくに集合的無意識のなかにどんな元型が現れて自我に働きかけているのか、自我とのあいだでどういう折衝をしているのか、そういったことを分析することが、その人の目的を明らかにして、その実現に踏み出すことにつながる、それが個性化の一側面だということなのか。

覚醒中に、明晰な意識状態の自我が、想像のなかにおのずから現れてくる無意識的イメージと直接のやりとりを行う、アクティヴ・イマジネーションという技法があるそうだ。
それが個性化に寄与するというのだ。

では『個性化』＝自己実現、とはなんだろう。

河合隼雄「無意識の構造」には、

普遍的無意識内の元型は人類に共通であっても、それが個人内の意識にあらわれるあらわれかたは、個人によって異なるものである。

「普遍的無意識内の元型は人類に共通」、ぼくのブログではこのことは説明していない。
多種多様な元型（そのなかにはきのう書いたようなスサノヲ的元型もはいる）が人類の心の奥底の集合的（普遍的）無意識を作っているということなのだ。
元型は、時代や民族のちがいに関係なく、人間の心の動きを示す不変の典型的パターンだ。
それは典型的イメージであって、元型そのものに姿かたちがあるわけではない。
ユングは、プラトンのイデアをそのルーツの一つとして挙げている。
個性化についての河合の説明に戻る。

その個人内の実現傾向と、その人に対する外界からの要請の中で、その人はまさにその人なりの、人となり、すなわち、個性を形成してゆくのである。

その道は危険に満ちた道なのだ。
なぜか？

個性化の道を歩むためには、われわれは自分の内界に目を向けねばならない。しかし、ここにいう内界は、すなわち無意識界である。それは内省可能な領域を指しているのではないことに注意しなくてはならない。

自己を見つめる、自分の感情や心境をあれこれすることとは違うのだ。

われわれが問題としている内界は、自我によってコントロールできない、あちらの世界なのである。この世界の存在は自ら体験したものでないかぎり、おそらく解らないであろう。
無意識の深層における体験にもっともぴったりのものは、昔話や神話などにある他界の話であろう。それらには、他界の不思議さがいろいろと述べられ、そこにおける危険性も十分に語られている。時間、空間による定位が不能なこともそっくりである。他界へ旅立って帰れなかった人、他界から帰ってきたものの、この世には適応しがたくなっていた人の話もある。個性化の道は恐ろしい道である。

参考書を買ってきて、アクティヴ・イマジネーションを自分でやってみようかと思ったが、やはり怖い。
個性化できないままに人生を終えていくのもチト淋しいものがあるけれど。やめておこうか。