古事記は文書改竄の事始めだったか 「共時性の深層」

きのうの続き、スサノヲが共時性の元型的基盤＝神話上のモデルだという話のクライマックスというか肝について、老松「共時性の深層」に教えを乞う。

それは、イザナギに叱られて追い出されたスサノヲが姉・アマテラスにお暇乞いに高天原に来た時、山川が轟きわたり地震が起きたので、アマテラスはスサノヲが高天原を奪いに来たと思って完全武装をして待ち構えていたときのことだ。

「いかなるわけにて、上りきたるや」と弟をなじった。
「わたしには、邪な心などありません」スサノヲ。
アマテラス、「それはどうして知ることができるのだ」（疑り深い女だ）
スサノヲ「おのおのウケヒをして子を産むことにしましょう」

というわけで、ウケヒ（誓約）をすることになった。
ウケヒとは古事記では「宇氣比」日本書紀では「誓約」とあり、古代にさかんに行われたさかんに占いの方式、現れた象によって隠された神意を知るのだ。
ここでは二人がそれぞれに産んだ子供の性質でスサノヲの心の正邪を知ること。アマテラスはスサノオの十拳の剣を取って、三つに折って天の泉で濯いで、口の中に入れたと思うとバリバリと噛みに噛んで、息を霧のように吹きだして三柱の女神を生み出した。
スサノヲはアマテラスの珠を取って、同じようにしたところ、五柱の男神が生まれた。

すると、どうだろう、アマテラスは「後に生まれた五柱の男の子は、私の物から生まれたから私の子、先に生まれた三柱の女の子はお前の物から生まれたからお前の子」と詔り別けてしまう。
スサノヲは

わが心は清く明し。それゆえに、わたしは手弱女を生み成すことができたのです。これによりて申せば、わたしは、おのずからウケヒに勝ったのです.

と言って、「勝ちさび」て大暴れをするのだ。占い、裏＝隠された神意、易学、Ｄ・ボームの「暗在系」＝明在系では相互に独立していて偶然に起きているように見える諸事象がそれ以前に一つに畳み込まれていた隠れた次元。
剣や珠を分解して唾や息と混ぜ合わせることで神々を生む≒創世記≒元型的観念。
共時性・元型の特徴がアリアリ。

問題は、ウケヒの判定だ。
ふつうなら男の子（しかもその名を「正勝吾勝天之忍穂耳」を生んだ）のだから、スサノヲが勝ったと見てもよいはずだ。
日本書紀はそのように判定しているので、日本書紀を正伝、古事記を訛伝とする専門家が多い。
しかし、それならアマテラスが、男の子を自分の子だと詔り別けるのはおかしくないか。
それから、もっと不思議なのは、そもそもウケヒをする際に、どうした方が勝ちかという判定の基準が述べられていないこともおかしい。
古事記を伝えた人の記憶違い、失念？
国の礎を明らかにし王権の正統性を主張しようとする公式の書において、アベ内閣の財務省役人のようなことがあり得るはずがない。
あったとすれば、

それこそ、共時的な現象が起きたのだと思わざるをえない。神がかった暗誦者のなせる業である。
そう考えてくると、邪心の有無と子どもの性別の連関に因果論的な見方を持ち込むのは不自然な気がしてくる。まさにそこには不可知の神意が入り込んでいるにちがいなく、もしもつながりがあるとするなら、非因果的な連関なのではないか。

ここで脱線する。
古老が語るというユニークな口語訳で古事記を身近なものにしてくれた三浦祐之はこのくだりで古老にこう語らせている。

それにしても、男の子を生み成したのはどちらじゃのう。やはり、物実（ものざね）をもっておったアマテラスなのかのう。なにせ、遠い遠い神の振舞いじゃて、この老いぼれにも、しかとはわからぬのじゃ。
それでものう、この老いぼれは、スサノヲがいとしゅうてのう。いくたびも異（け）しき心は持たぬと云うてござったじゃろうが、、、。あの言葉にいつわりはなかったと思いたいのじゃ。
そもそも、ウケヒの前に、なんの取り決めもなさらなかったというのは、なぜじゃろうのう。それがないとウケヒは成り立たんのじゃが、、、。いや、どうにも、この老いぼれには分からんわい。神の代のことじゃでのう。

（いや、どうにも、アベのやることはわからんのう）

さらに、三浦はアマテラスの強引な詔り別けについて、註のなかで

どうも、この神話は本来の形からねじ曲げられているように思えてならない。そして、そのねじ曲げは、天皇家の、アマテラスから男系への接続を語るためにこそ必要だったのではないか。

と書いている。
これはこれで興味深い見方だけれど、共時性のワクワク感はないな。

三浦はスサノヲを疑ったことによって、物語が予期せぬ展開をみせることについて、

そこに、この神話の起伏に富んだおもしろさがあるといえるだろう。しかも、そうした構想は、文字による推敲を重ねた結果として生じたというよりは、語られる物語がおのずと進んでいったものだとみなければならない。

とも書いている。
やはり語り部に共時的現象が起きたのだ。使い物にならない、回収しなければならないようなマスクに不透明な４６６億円を無駄遣いして、人々を路傍に野垂れ死ぬ恐怖に追いやっても、捕らぬ狸の皮算用に耽る自民党＆公明党よ、呪われてあれ。