大きな古時計からスサノヲまで 「共時性の深層 ユング心理学が開く霊性への扉」(老松克博)
2020年 04月 22日
おじいさんの生まれた朝に買ってきた時計さ。今はもう動かない。
It was bought on the morn of the day that he was born
But it stopped short, never to go again
When the old man died.
真夜中にベルがなった、おじいさんの時計。お別れのときがきたのを、みなに教えたのさ。
It rang an alarm in the dead of the night
An alarm that for years had been dumb.
And we knew that his spirit was pluming for flight
That his hour of departure had come.
意味のある偶然の一致、それをユングは共時性(シンクロニシティ)と呼んだ。
あるある、多くの人が「虫の知らせ」を感じたり、子供のころに見たイメージを目の前の現実として見つめることなどがある。
因果律では説明できないけれど、たんに「偶然の一致」だと言われるとちょっと違う、共感と感動がある体験。
ユングは、意味のある偶然の一致、偶然の符合に伴っている価値と重要性を捨て去ったり無視したりすることをよしとせず、その背後に因果性とは別の連関の原理があると仮定し、それを共時性ないしは共時律と呼んだ。
心が絡むと、そこには意味を介した連関というものが成立する余地が出てくる。心をただの幻と考えるのでないなら、意味を介した入れ込んだ連関をも入れ込んだ観点を持つことこそ、真に科学的な態度というべきだろう。深層心理学はそのような高次の科学の一端を担うものであることを自負している。
ユングが「蛮勇を振るって」共時性の概念を一般向けに唱えた記念すべき書物は1952年に出版された「自然現象と心の構造」。
それは「パウリの排他律」の発見などによりノーベル物理学賞を受賞していたヴォルフガング・パウリとの共著だ。
中身は忘れてしまったが、量子論の啓蒙書を読むたびに、日常馴れ親しんでいる因果律の世界とは異なる、原始仏教・唯識論で説かれるような時空が相対化された無限の先の世界の出現に目が眩むような感じがした。
共時性は占い、易学、「タオ」や錬金術の世界とも通じる何かがあるようだ。
一度や二度読んでも分からないことが多いのに、とても興味を惹かれる世界だ。
河合隼雄の「無意識の構造」もそばにおいて、ときどき参照してみたりする。
ビートルズが流行り始めた時、僕は単なる騒音としか聞こえなかった。
ミーハーが騒ぐからなおのこと、素直に受け入れることができなかった。
ところが、ダークダックスがこの曲をスローテンポで歌うのを聴いて、なんと美しい曲なのかと思い、それからビートルズが好きになった。
難しく取っつき憎い噺も話し手が変わると面白く聴けて、こんどは難しかった噺が面白くなるということだ。
ユング心理学の最大の特徴は、ひとりひとりの心を扱う実践的な学問であり技術であるにもかかわらず、個人と超個人的なものとの隠されたつながりを重視することにある。ユング心理学では、人の心あるいは心身の生涯にわたる成長のプロセスを個性化と呼び、この呼称からもわかるように個としてのあり方の確立を目標としているが、そのためには個が超個人的なものとどう折り合いをつけていくかが問われると考える。心の構造を三層で捉えるところが、法相宗の「末那識(まなしき)」や「阿頼耶識(あらやしき)」と呼ばれる深層意識が心の奥底に眠っているとするところに通うような気がする。
超個人的なもの、それは集合的無意識と呼ばれ、その内容は元型と呼ばれる。
人間の心は、意識と無意識からなり、その無意識は個人的無意識と集合的無意識に分けられる。
集合的無意識の内容は個人的経験とはまったく関係がない。
誰もがはじめから持って生れて来る、万人に共通のものである。
心全体から見ると、意識と個人的無意識が表面を覆う薄皮のようなものにすぎないのに対して、集合的無意識はその下にある実質として心の大部分を占めている。
本書を読んだら法相宗に飛んで行こうか。
スサノヲが共時性に関わる元型だと筆者は推測する。
そこがとても面白かったのだが、もう長くなりすぎたし、ちょっとしんどくなったので今日はここまで。
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りんご
at 2020-04-22 18:40
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「大きな古い時計からスサノヲまで」
いつも乍らのすてきなタイトルにわっとなりました~
ユングが自己とは何かと問われ「All of you」と答えた逸話を
思い出し乍拝読しました。仏教が物事の区分を取り払う意識を洗練させていった河合先生の指摘も。次も楽しみにしております!
いつも乍らのすてきなタイトルにわっとなりました~
ユングが自己とは何かと問われ「All of you」と答えた逸話を
思い出し乍拝読しました。仏教が物事の区分を取り払う意識を洗練させていった河合先生の指摘も。次も楽しみにしております!
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saheizi-inokori at 2020-04-22 19:24
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okanouegurasi at 2020-04-22 21:56
続き、楽しみにしています!
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saheizi-inokori at 2020-04-23 06:39
> okanouegurasiさん、どう書くかなあ。
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j-garden-hirasato at 2020-04-23 06:58
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saheizi-inokori at 2020-04-23 09:47
> j-garden-hirasatoさん、学、としてでなく読み物として楽しんでいます。
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Hana3131H at 2020-04-23 09:47
こちらに伺うと本を読みたくなります。ありがとう!
昨日は奇しくも😆同じBeatles、私も最初(中学生)は何でそんなに騒ぐの?と思っていました。が、大学生になった頃から、良い!と思うようになりました。それは詩とメロディーが良いからですね。
昨日は奇しくも😆同じBeatles、私も最初(中学生)は何でそんなに騒ぐの?と思っていました。が、大学生になった頃から、良い!と思うようになりました。それは詩とメロディーが良いからですね。
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saheizi-inokori at 2020-04-23 10:08
> Hana3131Hさん、そうかあ、だからビートルズはカバーされた方がいいのが多いのですね。
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よっしー
at 2020-04-23 11:43
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私は、ビートルズ、デビューは、遅くて大学生でした。父の影響で、ダークダックスや、デュークエイセス。ボニージャックスの方が詳しかったかも(笑)今の楽しみ。朝ドラいいですね。古関先生の偉大さがわかります。ほっとします。朝は。
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saheizi-inokori at 2020-04-23 13:37
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Deko
at 2020-04-23 21:05
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こんばんわ
↑の時計で思い出しました。連れが勤続15年で会社より柱時計を頂き何とその時計が未だに健在です。昨年連れの同期の友人が集つた時に時計が動いていたのは我が家のだけでした。友人もビートルズに心酔していました。やはり懐メロのほうが性に合っています。
↑の時計で思い出しました。連れが勤続15年で会社より柱時計を頂き何とその時計が未だに健在です。昨年連れの同期の友人が集つた時に時計が動いていたのは我が家のだけでした。友人もビートルズに心酔していました。やはり懐メロのほうが性に合っています。
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saheizi-inokori at 2020-04-24 07:52
by saheizi-inokori
| 2020-04-22 12:39
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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