文楽はじつに楽しい! 文楽「傾城恋飛脚」「鳴響安宅新関」

文楽を東京で見られるのは、年に4回かな。
ぼくが文楽を見だしたのは遅いから、出来ればその都度すべての演目をみたい。
一回の公演が16日間続くので、一回しかやらない能より取りやすいかと思うと、けっこう激戦で、国立センターのシステムが使いにくいせいもあって、まごまごしていると、取り損ねたりする。
ふつか連続であっても、最前列の片隅であっても、こうして名前だけは知っていた演目を見られるのは幸せなことだ。
文楽はじつに楽しい! 文楽「傾城恋飛脚」「鳴響安宅新関」_e0016828_11252050.jpg

住太夫の至芸は持つべき友に教えられて、ようやく最期の公演を見ることができた。
それは「よかった」けれど、文楽の面白さをそれほど知らないうちに観たのであったから、猫に小判みたいなものだったかもしれない。
おとといと昨日と二日続けて観て、今までとひと味違った楽しさを感じることができたように思う。
太夫の座る床の真下、舞台のかぶりつきだったからか、太夫、三味線、人形遣いの仕草、表情、目の光、息遣い、汗のしずくまで仔細にみることができたら、人形浄瑠璃文楽が、どれほど多くの微細な動きの調和のもとに成り立つ、奇跡みたいな瞬間の積み重ねかということを痛感できた。

とくに弁慶が主遣いだけでなく、左遣いと足遣いも顔を出す出遣いになったので、弁慶の勧進帳読み上げ、富樫との問答、義経打擲、大酒食らい、勇壮な延年舞、飛び六方という見どころを主遣いの玉男だけでなく、他の二人が、主遣いの激しい動きに精妙に合わせて、踏み込み、あとずさり、ピポットターンをし、延び上がり沈みこみ、、驚くべき動きを連続して作り上げていることが分かって、それだけでも感動した。
鈍感な僕でも、太夫や人形遣い、ときには三味線ですら、ひとりひとりの個性を感じる瞬間もあった。
今また住太夫を聴けたらと思う。
だから、今のうちに見たり聞いたりしておこうと思う。
文楽はじつに楽しい! 文楽「傾城恋飛脚」「鳴響安宅新関」_e0016828_11241415.jpg
「傾城恋飛脚 新口村の段」
公金横領の大罪を犯して、心中を覚悟した梅川と忠兵衛が、実父・孫右衛門に一目会おうと在所の新口村にやってくる。追手が迫っているから、堂々と会うこともできない。
二人を誘い出すために養母の妙閑が入牢しているので、その義理からも父は息子に会うことはできない。
そういう状況の中で梅川の(世が世なら)舅が雪道に転んだのを駆けよって介抱し下駄の緒を据える姿の健気さ・優しさが心をうつ。
これが梅川かと気づきながら知らないふりをして、他人ごとのようにして、隣室にいる息子への愛情と憤懣を語り、梅川ともども伏し悶え泣く、浄瑠璃の男はよく泣く。
一目だけでもあってやってというと、見れば縄を打たなければならないと妙閑への義理立て。
梅川は手拭いを出して目隠し、これで逢ってください。
文楽はじつに楽しい! 文楽「傾城恋飛脚」「鳴響安宅新関」_e0016828_11235202.jpg
言葉を発することなく父と子は、手を握り顔を触って、、泣き出す、、つと梅川が手拭いを外す機転。
二人はひしと抱き合って泣くのだ。

追手に掴まらないうちに大阪にもどって養母を救いだすべく二人は別れを告げる。
孫右衛門は二人が落ちのびた
裏道見やって伸びあがり「ヲゝさうぢゃそうぢゃその道ぢゃぞ。ソレその藪をくぐるなら、切株で足突くな」と届かぬ声も子を思ふ、平沙の善知鳥血の涙、長き親子の別れには、やすかたならで安き気も、涙々の浮世なり
ぐっと、きました。
文楽はじつに楽しい! 文楽「傾城恋飛脚」「鳴響安宅新関」_e0016828_11250014.jpg
「鳴響安宅新関 勧進帳の段」(なりひびくあたかのしんせき)

五人の太夫、七人の三味線がずらっと並ぶ。
舞台正面は大きな松、上手に能舞台の幕、「かやう候ふ者は、加賀の国富樫の何某にて候、、」脇の名のりのように始まる。
地の「旅の衣は鈴懸の」で三味線、「これやこの」で七丁の合奏して、これはとくに後半大迫力だった。
弁慶が勧進帳を読み上げる、その最後「『帰命稽首敬って申す』と『天へも響け』と読みげたり」は、ほんとに劇場を揺るがすほどの声が響いた。
御簾のうちからの笛や鼓も活躍して、とてもとても楽しい一幕だった。

歌舞伎や能で、なんどか観たことのある『勧進帳』だが、楽しいという意味では昨日の文楽が一番だ。
歌舞伎はほんとの人間がやるから「嘘っぽさ」が気になるし、能は楽しいという面ではイマイチ。
オーバーな動きと歌三味線の文楽が庶民に愛されたのも宜るかな。
文楽はじつに楽しい! 文楽「傾城恋飛脚」「鳴響安宅新関」_e0016828_11243025.jpg
「はじめ」がまたも満員、ラーメン屋に寄って帰った。
おかげさまで休肝日となった。
ただ、行きつけない店に行くと、みんなコロナ持ちに見えて来るのが困ったもんだ。
なったらなったで、と覚悟を決めなければ。
COPD、ペースメーカーではあるけれど。


Commented by tsunojirushi at 2020-02-19 15:06
コロナ持ち…(・ัω・ั)
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-19 15:14
> tsunojirushiさん、持ち具合、どんな感じですか?
Commented by ppjunction at 2020-02-19 15:15
良い席でご覧になりましたね。
あの席はなかなか座れませんよね。

文楽の男は良く泣く・・ほんと!・・女は揃って気丈。
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-19 15:22
> ppjunctionさん、そういえば落語も女性のほうがしっかりしてますね。
あの席、狙ってはとれないかな。
ぜんじつは第二列の左隅、これはこれで面白い視点でしたが昨日のほうがいいなあ。
Commented by silku928 at 2020-02-19 15:45
かなりご無沙汰しています。
お元気ですか?
文楽観たことはないのですが、
死ぬまでに一度観たいものです、笑
最近は映画もずいぶん遠ざかっておりますが。。

春になりまたblogも少しずつ。。
コロナ、落ち着きませんね。

宜しくお願いします。
Commented by そらぽん at 2020-02-19 17:11 x
保育園は閉じたいが親が仕事を休めない時給の人は?
2ヶ月半前からできた防護策はなーんにもせず

野党が求めても 国会の厚労委員会が全然開かれず
全て政府の対策会議で決められる 官邸案件に!

海外の日本政府非難は当然を言っているだけですね  
岩田氏のレポートがCNNで流された =貴Twitter
 
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-19 18:00
> silku928さん、おひさしぶりです!
文楽、五月国立は「義経千本桜」通しです。ちゃんす!
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-19 18:02
> そらぽんさん、橋龍二世がバカやってますね。
世襲のバカボンが日本を壊しています。
Commented by tona at 2020-02-19 21:40 x
文楽のチケットは激戦なのですね。
私は友人任せですが、買えたためしがありません。
楽しんでいらして良かったですね。
月曜日に「ワタシが日本に住む理由」という番組で徳島に住むアメリカ人男性62歳が人形浄瑠璃にはまってしまったそうでアメリカの大学を退職してから日本へ。2年になるそうですがずっと住み続けてやるそうです。人形をもうずいぶんたくさん部屋にためていました。その情熱たるや!!
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-19 21:44
> tonaさん、きのう横に座った背広の紳士は詞章を印刷したメモを手に、手を動かし声に出さずに唸っていました。
ずっとです。
Commented by hanamomo60 at 2020-02-19 23:56
はじめは大繁盛ですね。
ラーメンあっさりしていてそうで美味しそうです。

もう馬酔木が咲くのですね。
東京の春は早いな~。
Commented by doremi730 at 2020-02-20 01:19
よい席でご覧になれて良かったですね、
こちらにまで臨場感が伝わりました!
文楽は久しく観にいってないのですが、
今年は挑戦しよう!
Commented by at 2020-02-20 06:25 x
このラーメン、僕の好みです!欲を言えば、海苔が一枚ほしいですが。
スープに「仕事」を感じます。麺が少ないのもいい。ラーメンの大盛りはかえってまずい。
ラーメンのときはいつも単品で(餃子などはなし)それのみを楽しんでいます。
以上、ラーきちの福でございます。

Commented by j-garden-hirasato at 2020-02-20 06:35
文楽の関係のエリアなら、
まだ、安心でしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-20 09:04
> hanamomo60さん、常連が増えている感じがします。
ミモザが咲き出しました。
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-20 09:05
> doremi730さん、ちょつとはまりました。
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-20 09:07
> 福さん、たしかに見た目もうまそう、きれいですね。じっさいにもうまかったですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-20 09:11
> j-garden-hirasatoさん、会場のあちこちからクシャミ、咳がきこえました。広い範囲から集まるから、リスクは高いでしょうね。
こんご上演中止のような事態にならないように祈ります。
Commented by ikuohasegawa at 2020-02-20 10:30
歌舞伎はほんとの人間がやるから「嘘っぽさ」が気になる。

邦画も日本人がやるからテーマによっては「嘘っぽさ」が気になることがあります。その点、洋画は「嘘」を楽しめるような気がします。
Commented by saheizi-inokori at 2020-02-20 12:02
> ikuohasegawaさん、生身の、しかも同じ日本人がやると見えてしまうのですね。
ガイジンの見分けがつかない私です。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2020-02-19 13:52 | 能・芝居・音楽 | Comments(20)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori