グラタンは別世界の食い物なのだ
2020年 01月 29日
雨上がりの朝、湿った空気を気持ちよく吸い込んで隣家の梅を撮った。
いぜんとして人の気配がない。
老人と一緒に住んでいたとかいるとかいう話も聞いたことがある。
なにかあったのか、あのワンちゃんの散歩は誰がしているのだろうか。 洗濯機をまわしているうちに、どんどん晴れ間が広がって、久しぶりにベランダに干した。
じりじり熱いほどの冬の陽差し、あらゆるバイキンを殲滅せよ。
テレビで武漢から戻った日本人がインタビューに応じているのを、ちらっとみた。
あんなことをしていて大丈夫なのだろうか。
誰にも会わずに病院に行って暫く隔離生活を送らなくてもいいのかと思った。
たとえ、今現在ウイルスに侵されているという徴がみえなくても、ふわふわとウイルスを身にまとっているのじゃないか。
ウイルスの情報がはっきりしないから防ぎようがない、としてもあまりに無防備という感じがした。 きのう松陰神社前のビストロで食べたグラタンの思い出。
これは一度ならず書いたことがある。
内田百閒や山本夏彦などは同じ話題をなんどでも書いていた、だからということでもないが、また書く。
大学に受かって上京してきて親戚の女の子、そのとき初めて会ったのだが、彼女も女子大に受かって、二人で新宿ミラノ座に行った。
女の子とのデートなんて初めてだったからドキドキして待ち合わせた。
映画は「ティファニーで朝食を」、豪華な赤いじゅうたんの敷いてある映画館、ヘップバーン、みんな初めて、夢みる男の子だった。
映画のあとで、彼女がさっさと案内してくれたのが西武新宿と国鉄新宿の間にあったキッチン横丁といったか、今も「樽平」がある路地の「フライパン」(?)という、あれもビストロだったのか。
何をオーダーしたらよいか迷っているぼくにテキパキと「これ美味しいのよ」と勧めたのがマカロニグラタンだった。
小学校の国語の授業でチーズが出てきたときに、食べたことのない子が圧倒的で、会社社長の娘がひと箱のチーズを持ってきて、先生が50人以上の生徒にひときれづつ食べさせた。
「うえ、なにこの匂い?」「わ、石鹸みたい」うまいと言った子はいなかったような気がする。
そのチーズをこんな風にして食うのか、なんとうまいものか!
ぼくには、女性とのデート、新宿の大劇場、ヘプバーン、そしてマカロニグラタン、きらびやかな・どっしりした根っこのある東京の生活のシンボルと映った。
そして、彼女と別れて戻った汚い寮における田舎っペイたちの野蛮な貧乏生活が、そのきらびやかな・どっしりした根っこのある生活と対照的に待ち受けていた。
東京の小市民的生活が手に届かないものとしてぼくのヒガミ根性をくすぐり続けてきたような気がする。
東京に住んだ期間が圧倒的に長くなっても、自分の家(マンション)を持っても、いぜんとして仮の生活を過ごしているような気がする。
「移民で居続けたい」というよりも、東京に仮住まいしている、どこにも所属しない移民なのだ。
仕事で有名レストランの高級料理をなんども食べに行くことはあっても、そういうことが僕の日常にはならなかったのは経済的な問題もあるが、そもそもぼくには馴染まない世界だという気持ちがあった、あり続けて今にいたったような気がする。
やっぱりぼくには「はじめ」がいちばんなのだ。
いぜんとして人の気配がない。
老人と一緒に住んでいたとかいるとかいう話も聞いたことがある。
なにかあったのか、あのワンちゃんの散歩は誰がしているのだろうか。
じりじり熱いほどの冬の陽差し、あらゆるバイキンを殲滅せよ。
テレビで武漢から戻った日本人がインタビューに応じているのを、ちらっとみた。
あんなことをしていて大丈夫なのだろうか。
誰にも会わずに病院に行って暫く隔離生活を送らなくてもいいのかと思った。
たとえ、今現在ウイルスに侵されているという徴がみえなくても、ふわふわとウイルスを身にまとっているのじゃないか。
ウイルスの情報がはっきりしないから防ぎようがない、としてもあまりに無防備という感じがした。
これは一度ならず書いたことがある。
内田百閒や山本夏彦などは同じ話題をなんどでも書いていた、だからということでもないが、また書く。
大学に受かって上京してきて親戚の女の子、そのとき初めて会ったのだが、彼女も女子大に受かって、二人で新宿ミラノ座に行った。
女の子とのデートなんて初めてだったからドキドキして待ち合わせた。
映画は「ティファニーで朝食を」、豪華な赤いじゅうたんの敷いてある映画館、ヘップバーン、みんな初めて、夢みる男の子だった。
映画のあとで、彼女がさっさと案内してくれたのが西武新宿と国鉄新宿の間にあったキッチン横丁といったか、今も「樽平」がある路地の「フライパン」(?)という、あれもビストロだったのか。
何をオーダーしたらよいか迷っているぼくにテキパキと「これ美味しいのよ」と勧めたのがマカロニグラタンだった。
小学校の国語の授業でチーズが出てきたときに、食べたことのない子が圧倒的で、会社社長の娘がひと箱のチーズを持ってきて、先生が50人以上の生徒にひときれづつ食べさせた。
「うえ、なにこの匂い?」「わ、石鹸みたい」うまいと言った子はいなかったような気がする。
そのチーズをこんな風にして食うのか、なんとうまいものか!
ぼくには、女性とのデート、新宿の大劇場、ヘプバーン、そしてマカロニグラタン、きらびやかな・どっしりした根っこのある東京の生活のシンボルと映った。
そして、彼女と別れて戻った汚い寮における田舎っペイたちの野蛮な貧乏生活が、そのきらびやかな・どっしりした根っこのある生活と対照的に待ち受けていた。
東京の小市民的生活が手に届かないものとしてぼくのヒガミ根性をくすぐり続けてきたような気がする。
東京に住んだ期間が圧倒的に長くなっても、自分の家(マンション)を持っても、いぜんとして仮の生活を過ごしているような気がする。
「移民で居続けたい」というよりも、東京に仮住まいしている、どこにも所属しない移民なのだ。
仕事で有名レストランの高級料理をなんども食べに行くことはあっても、そういうことが僕の日常にはならなかったのは経済的な問題もあるが、そもそもぼくには馴染まない世界だという気持ちがあった、あり続けて今にいたったような気がする。
やっぱりぼくには「はじめ」がいちばんなのだ。
ヘイトスピーチという言葉はふさわしくない。嫌うこと自体は人間的で悪いことではないから。蜘蛛を嫌う人、にんじんを嫌う人、ナイロンを嫌う人、いろんな人たちがいていい。でもユダヤ人を嫌うということはありえない。トルコ人を嫌うということもありえない。中国人を嫌うということはありえない。自分の傷が腐敗しかけているのに治療する勇気を出せない臆病者が、無関係な他人に当たり散らしているだけだ。多和田葉子「百年の散歩」から。
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unburro at 2020-01-29 12:36
> 自分の傷が腐敗しかけているのに治療する勇気を出せない臆病者が、無関係な他人に当たり散らしているだけだ。
名刀でバッサリ、一刀両断。
見事な切り口を、見せてもらいました。
心が整った人にしか書けない強い言葉ですね。
ご紹介、ありがとうございます。
どんよりした気持ちが、ピリッとしました。
『百年の散歩』注文しました。
名刀でバッサリ、一刀両断。
見事な切り口を、見せてもらいました。
心が整った人にしか書けない強い言葉ですね。
ご紹介、ありがとうございます。
どんよりした気持ちが、ピリッとしました。
『百年の散歩』注文しました。
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saheizi-inokori at 2020-01-29 14:38
> unburroさん、心が整った人、そうですね。言葉の意味を究める人、それは心が整っている必要がありますね。
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j-garden-hirasato at 2020-01-29 16:11
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ikuohasegawa at 2020-01-29 16:20
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saheizi-inokori at 2020-01-29 16:37
> j-garden-hirasatoさん、子供たちが来たときにかみさんが作ることはありますが、外食でオーダーはしませんね。嫌いじゃないけれど。
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saheizi-inokori at 2020-01-29 16:39
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そらぽん
at 2020-01-29 23:39
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「はじめ」の光にほっとします お隣も明りもあたたか~
世界中無事に終息して~ 国民なぞどうでもいいアベ……
杉尾議員「総理にお伺いする政府対策本部は設置しているのか」
安倍首相「明日、設置する予定」(議場騒然) 27日国会
世界中無事に終息して~ 国民なぞどうでもいいアベ……
杉尾議員「総理にお伺いする政府対策本部は設置しているのか」
安倍首相「明日、設置する予定」(議場騒然) 27日国会
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saheizi-inokori at 2020-01-29 23:55
> そらぽんさん、それでも野党はコロナウイルスについて触れないとフェイクニュースを拡散する世耕、セコーイたらありゃしない!
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福
at 2020-01-30 06:37
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倉本聡『前略おふくろ様』というドラマでは、田中絹代の母親が上京してきて、せがれのショーケンにメモを開きながら「オニオングラタンスープっていうのを食べさせておくれ。友人にさんざん自慢されて悔しいから」とせがみます。
グラタンは都会のお洒落なもんなんですね。
グラタンは都会のお洒落なもんなんですね。
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saheizi-inokori at 2020-01-30 09:48
by saheizi-inokori
| 2020-01-29 10:44
| よしなしごと
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Comments(10)