気が引ける

きのうは雨の中を眼科に行き、簡易な検査のあとドライアイの薬を処方してもらった。
強い雨に困惑しながら歩き始めたら、すぐ近くにヴィーガンのレストランがあり、これ幸いと飛び込む。
二階を勧められたが階段を降りるのが嫌なので、一階のソフアを独り占め。
目の前のオープンキッチンで忙しそうにしている男性、手伝う女性、接客をする女性、そのうちもう一人若い男性が出勤してキッチンに入る。
気持ちのいい応対だ。次々に来店するのがみんな若い女性で予約客のようだ。
しばらくして出されたのが、「おお、ままごとみたい」と思わず口をつくほど、少しずついろんなものが乗ったプレート。いろいろ説明があったが、覚えていない。
少しずつだから、食べる方も少しずつ味わいながら食うと、これがけっこういける。
店の記事を読むと、ヴィーガンとは

野菜と穀物だけで、食の嗜好を問わず誰もが美味しく、楽しく食事をすることができるラトゥリエ・ドゥ・ヴィーガニックの料理。さらに言えば純植物性のヴィーガン料理の良いところは、人種・宗教・国籍問わず万人が同じテーブルを囲んで笑顔になれるスタイルです。

万人のひとり・僕は心のなかで笑顔になった。店を出て写真を撮っているとまた二人の女性、するっと座れた僕は、どうやらラッキーだったようだ。
（須坂駅）

ご馳走をいろいろ並べて、談笑しながら飲み食いするのは嬉しいものだが、たとえば鬼無里会のバスの中で、房総からきたＡさんが塩ゆでにした蛸をみんなに回してくれて、そのひとかけひとかけをしみじみ味わいながら、コップ酒を飲むのも格別だと改めて知った。
百閒が、動く汽車の中で景色を楽しみながら、ものを食うということ自体がゼイタクなのに、そのうえその料理が不味いなどというのは、贅沢過ぎると列車食堂の味を云々することの非を窘めていた。
動くバスのなかで大笑いしながら、うまい蛸を食うということについては百閒さん、なんというだろう。
（長野電鉄車内からの千曲川）

ヴィーガン料理を食って、買い物をして帰宅、ショパンを聴きながら、サンチを構いながら「モスクワの伯爵」を読んで午後を過ごし、夜はふたたび「ヒブスマ」で、この間できなかった台湾旅行の打ち合わせ。
たった二泊なのに、あれもしたい、これもぜひ、落語の「藪入り」で、たった一日里帰りをする子どもを、あれも食わせたいこれもぜひ、あそこに連れて行こう、ついでにここにも、と父親がいうのと同じだ。
僕は、とくに行きたい希望はない、みんなと楽しく過ごせればそれでいいのだ。台風の被害で立ち直れるかどうかという人もたくさんいるのに、贅沢な話でちょっと気が引ける。