ショパンを聴きつつ屋根裏に住むロシア貴族と遊ぶ 「モスクワの伯爵」(エイモア・トールズ)
2019年 10月 25日
蕭蕭(しょうしょう)というのだろうか、朝からもの寂しげな雨が降っている。
なぜか、見たこともない那覇の牧志市場脇の小さな古本屋の軒先と、そこでの暮らしを書いた女性のことを想う。
南国にも寂しく冷たい雨は降るのか。
さっきエレベーターであった上のお兄さんに「寒くなりました」と挨拶したけれど、沖縄の言葉ではどういうんだろう。 共産党の志位委員長が、ルービンシュタインが弾くショパンのマズルカ全集を聴いて、ショパンとルービンシュタインの思いについて書いたツイートを読んで、いいなと思って、ショパンに惚れこんでいるMayouさんにそのことをコメントしたら、彼女はこのCDを買った。
それで僕も我慢できなくなってアマゾンのワンクリックを二回、幻想曲集も買ってしまったのさ。
寝ころがって読むには分厚すぎる本をリビングのイスで読むのにラジカセを引っ張り出して幻想曲の方をかけた。
引っ越したときに買ったBOSEが鳴らなくなってそのままにしてあるからラジカセ。
椅子もへたっているので、サンチの座蒲団を取り上げて敷く。
読むのも、かなりへたってきた爺さん。
ショパンのおかげで最高の読書室でご機嫌だった。 読んだのは、ロシアの貴族の物語。
1922年、革命で危く死刑になりかかったロストフ伯爵は、それまでスイートに住んでいた高級ホテル・メトロポールの屋根裏部屋に軟禁される。
物質的には貴族を隠居したロストフは精神的には貴族であり続けるようだ。
それに机だ。
荷物を運ぶベルボーイたち、
だが、案ずるには及ばない、伯爵は隣りの物置になっている部屋との間の壁を破ってスペースを広げる、やれやれ。 伯爵は隠し持ってきた金貨のせい(だろうな)で、ホテルのなかでは、うまいものを食い、いい酒を飲んで優雅なもんだ。
一歩外に出たら銃殺刑だけど。
やはりホテル住まいをしている、おしゃまな9歳の女の子と親友になってホテルのなかを探検する。
大宴会場のバルコニーに潜んで、中で開かれている集会を心ならずも見る。
ホテルの暮し、若き良き時代の思い出などが、短いエピソードで綴られ、そのひとつひとつが哀愁を帯びたり、滑稽だったり、シニカルだったりして僕好み。
筋なんかないのかと思っていると列車は動いていて、第一章の終わりでロストフが身投げをしようとしている情景を予告するのだ。
ああ、明日からの旅行にももって行きたい、だけど620頁、重すぎる。
宇佐川晶子 訳
早川書房
なぜか、見たこともない那覇の牧志市場脇の小さな古本屋の軒先と、そこでの暮らしを書いた女性のことを想う。
南国にも寂しく冷たい雨は降るのか。
さっきエレベーターであった上のお兄さんに「寒くなりました」と挨拶したけれど、沖縄の言葉ではどういうんだろう。
それで僕も我慢できなくなってアマゾンのワンクリックを二回、幻想曲集も買ってしまったのさ。
寝ころがって読むには分厚すぎる本をリビングのイスで読むのにラジカセを引っ張り出して幻想曲の方をかけた。
引っ越したときに買ったBOSEが鳴らなくなってそのままにしてあるからラジカセ。
椅子もへたっているので、サンチの座蒲団を取り上げて敷く。
読むのも、かなりへたってきた爺さん。
ショパンのおかげで最高の読書室でご機嫌だった。
1922年、革命で危く死刑になりかかったロストフ伯爵は、それまでスイートに住んでいた高級ホテル・メトロポールの屋根裏部屋に軟禁される。
物質的には貴族を隠居したロストフは精神的には貴族であり続けるようだ。
新たな住まいの家財として選んだのは、背もたれの高い椅子二脚、祖母のシノワズリのコーヒーテーブル、祖母の好きだった磁器の皿のセット。黒檀で作られた象をかたどったテーブルランプ二個、妹の肖像画。1908年に<安閑荘>に短期滞在した、セローフ(肖像画家)が描いたものだ。ロンドンのアスプレイで特別に伯爵のために作られ、よき友人であるミーシカがいかにも似つかわしく”大使”と名付けた革鞄も忘れなかった。こうして引用していると、さっと読み過ごした時には活字でしかなかった家財の姿が形をとって表れる。
それに机だ。
荷物を運ぶベルボーイたち、
「だけどこれ、一トンはあるぞ」ひとりがもうひとりに言った。夕食への招待状ほどの大きさしかない窓に、天井に頭があたるような高さ、幅三メートルのスペース、これだけの家具にベッド、どうやって暮らすのだろう。
「王は城で自らを偉そうに見せる」伯爵は意見を述べた。「紳士の場合はそれが机なのだ」
だが、案ずるには及ばない、伯爵は隣りの物置になっている部屋との間の壁を破ってスペースを広げる、やれやれ。
一歩外に出たら銃殺刑だけど。
やはりホテル住まいをしている、おしゃまな9歳の女の子と親友になってホテルのなかを探検する。
大宴会場のバルコニーに潜んで、中で開かれている集会を心ならずも見る。
伯爵に判断できるかぎり、ボリシェヴィキの面々は可能であればどんな理由でも、どんな形式でも、一箇所に集まった。ほんの一週間に委員会、党員集会、討論集会、評議員集会、協議会が複数回開かれ、さまざまな顔ぶれが一堂に会して規約の確立や、行動方針の決定や、苦情の申し立てをし、ほとんどの場合、世界最古の諸問題について最新の名称をつけろとやかましく要求した。世界最古であり世界共通だな。
ホテルの暮し、若き良き時代の思い出などが、短いエピソードで綴られ、そのひとつひとつが哀愁を帯びたり、滑稽だったり、シニカルだったりして僕好み。
筋なんかないのかと思っていると列車は動いていて、第一章の終わりでロストフが身投げをしようとしている情景を予告するのだ。
ああ、明日からの旅行にももって行きたい、だけど620頁、重すぎる。
宇佐川晶子 訳
早川書房
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suzume-ritu at 2019-10-25 14:56
今はまず、マズルカの曲調を体にしみこませようとしてしますが・・・、うわぁ、そんなことを聞くと幻想曲集まで欲しくなるじゃないですかー!困った。(^^;
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ago1-filo2 at 2019-10-25 15:01
古本屋ウララの店主さんは、清楚で美しい方でしたよ。
モスクワの伯爵は、読み終えるのが惜しいですね。
確かにズシリと重い。旅行には不向きだけれど
連れて行きたいお気持ちも分かります。
映画化されるそうなので楽しみです。
個人的には、翻訳版の表紙はイマイチ。
ツイッターで見た、オリジナルバージョンが素敵でした。
モスクワの伯爵は、読み終えるのが惜しいですね。
確かにズシリと重い。旅行には不向きだけれど
連れて行きたいお気持ちも分かります。
映画化されるそうなので楽しみです。
個人的には、翻訳版の表紙はイマイチ。
ツイッターで見た、オリジナルバージョンが素敵でした。
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saheizi-inokori at 2019-10-25 15:26
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saheizi-inokori at 2019-10-25 15:29
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k_hankichi at 2019-10-25 16:41
ルービンシュタインのショパンは、聴き始めると離れられなくなる。そういう魔法をもっていると思います。
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saheizi-inokori at 2019-10-25 16:49
> k_hankichiさん、本を読むときは幻想曲、寝るときはマズルカを聴きました。BGMなんて失礼かも。
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そらぽん
at 2019-10-25 21:27
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saheizi-inokori at 2019-10-25 22:37
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saheizi-inokori at 2019-10-25 22:46
> そらぽんさん、学生時代に試験の前夜飲み過ぎて、酒を覚ますべくバーでショパンのレコードを聞きながら濃いコーヒーをがぶがぶ飲んで、気持ちが悪くなったことがあります。それでも甲だったから試験なんていい加減なものです。
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j-garden-hirasato at 2019-10-26 06:50
そろそろストーブを気にする季節です。
今朝も、長野は冷えています。
今朝も、長野は冷えています。
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saheizi-inokori at 2019-10-26 14:09
> j-garden-hirasatoさん、暖かい服を用意してきましたが、今安曇野はとても暖か、シャツ一枚です。もっともかなり飲みましたが。
by saheizi-inokori
| 2019-10-25 11:19
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(12)