ついついの一日 狂言「萩大名」能「咸陽宮」
2019年 10月 19日
冷たい雨の土曜日、起き抜けにパジャマのまま掃除をする。
やはり汗をかく、沸かしておいた風呂につかって歯を磨く。
視線を下にこらすと、ふだん気がつかない汚れが気になって裸でブラシをごしごし。
身体も風呂場もきれいになって、ああ、いい気持! きのうは能楽堂、早目にいってチケット売り場でネット予約した11月のチケットの割引分(身障者か老人かのどちらか)を払い戻してもらって、それでも時間があるのでカフェでサラダとコーヒー、ここで本を読まずにスマホを出したのが良くない。
ついついついったー、ついーとしたり、茶々を入れたりしてついーっと時が過ぎゆく。 狂言は「萩大名」、調べて見たら、2011年に野村萬の大名、野村扇丞の太郎冠者、野村万禄の亭主、2016年に石田幸雄の大名、月崎晴夫の太郎冠者、萬斎の亭主で見ている。
きょうの大名は山本泰太郎、叔父の東次郎が亭主で緊張しているのか汗かきなのか、顔が汗で光る。
萩を見せてもらうのはいいが、亭主に和歌を詠んで見せなければならない。
太郎冠者(山本凜太郎)に「七重八重九重とこそ思ひしに十重咲きいづる萩の花かな」という歌を教えてもらって、それを覚えられないから、太郎冠者の扇のサインでカンニングする、、はずだったが、そんな簡単なことすら、できないでしまいには亭主に「バカにするな」と怒られて、深々と頭を下げて「面目もおりない」と謝る。
「景のよい庭」だと、きょろきょろしながら、目につく、梅の古木や立石などを頓珍漢な褒め方をしては太郎冠者にたしなめられて、あわてて訂正したりもする。
能「咸陽宮(かんようきゅう)」
秦の始皇帝の宮殿が咸陽宮、はじめ作り物の玉座が貧相に置かれているのだが、始皇帝、花陽夫人に侍女や臣下が登場して、朗々と
燕の国からヒットマン、荊軻と秦舞陽がやってくる。
始皇帝から懸賞が出ている、逃亡者の首と燕の地図を携えているのだ。
皇帝に遇えと言われて「肝消す」ような階段を薄氷を踏む思い、身体わななかせて、秦舞陽は脱落しそうなのを荊軻が励まして皇帝の前に進み出て、懸賞の首と地図を渡す。
おや、地図の箱の中に氷の剣がみえる、と皇帝が覗き込むところを荊軻は隠し持った剣を抜き皇帝の胸に擬し、秦舞陽が左から抑え込む。
皇帝は、「わしには三千人の妃がいるが、そのなかでこの花陽夫人は琴が上手で毎日聴くことにしている。最後に琴を聞かせてくれ」という。
夫人が「飛ぶ鳥も地に落ち武士も和らぐほどの秘曲」を弾じるにつれ、二人の刺客の視線は下を向き、「緩緩として」、ゆっくりゆっくり眠れるが如くになっていく。
いまだ!始皇帝は七尺の屏風を越えて飛び降り、彼らと打ち合い、八つ裂きにしてしまう。
あっぱれ、花夫人、皇帝の命を救ったのだ。
音楽の勝利か。
シテ・直面の武田孝史の存在感、ワキ・刺客の宝生欣哉の精悍、引き締まった一曲だった。
「はじめ」に行くと飲みすぎてしまうかもしれないと思って、能楽堂の近くの寿司屋にほんのちょっとのつもりで寄ったら、同じ能帰りのお客さん二人と一緒になって、初めて会う方たち(それぞれ)だったが、能、文楽、落語、歌舞伎と話の花が咲いて、ついつい飲みすぎてしまった、まあ、いいか。
やはり汗をかく、沸かしておいた風呂につかって歯を磨く。
視線を下にこらすと、ふだん気がつかない汚れが気になって裸でブラシをごしごし。
身体も風呂場もきれいになって、ああ、いい気持!
ついついついったー、ついーとしたり、茶々を入れたりしてついーっと時が過ぎゆく。
きょうの大名は山本泰太郎、叔父の東次郎が亭主で緊張しているのか汗かきなのか、顔が汗で光る。
萩を見せてもらうのはいいが、亭主に和歌を詠んで見せなければならない。
太郎冠者(山本凜太郎)に「七重八重九重とこそ思ひしに十重咲きいづる萩の花かな」という歌を教えてもらって、それを覚えられないから、太郎冠者の扇のサインでカンニングする、、はずだったが、そんな簡単なことすら、できないでしまいには亭主に「バカにするな」と怒られて、深々と頭を下げて「面目もおりない」と謝る。
「景のよい庭」だと、きょろきょろしながら、目につく、梅の古木や立石などを頓珍漢な褒め方をしては太郎冠者にたしなめられて、あわてて訂正したりもする。
秦の始皇帝の宮殿が咸陽宮、はじめ作り物の玉座が貧相に置かれているのだが、始皇帝、花陽夫人に侍女や臣下が登場して、朗々と
(咸陽宮は)都のまはり一万八千三百余里。内裏は地より三里高く。雲を凌ぎて築きあげて。 鉄の築地方四十里。又は高さも百余丈。雲路を渡る雁も。鴈門なくては過ぎがたし。内に三十六宮あり。真珠の砂瑠璃の砂。黄金の砂を地には敷き長生不老の日月まで甍を並べておびたゞし。帝の御殿は阿房宮。銅の柱 三十六丈。東西九町。南北五町。などと歌い上げると、あ~ら不思議、貧相な玉座が見る見るうちに壮大にして目もくらむばかりの輝かしきお城に変じてしまう。
(略)
のぼれば玉の階の金銀を研きて輝けり。たゞ日月の影を踏み蒼天をわたる心地して。おのおの肝を消すとかや。
始皇帝から懸賞が出ている、逃亡者の首と燕の地図を携えているのだ。
皇帝に遇えと言われて「肝消す」ような階段を薄氷を踏む思い、身体わななかせて、秦舞陽は脱落しそうなのを荊軻が励まして皇帝の前に進み出て、懸賞の首と地図を渡す。
おや、地図の箱の中に氷の剣がみえる、と皇帝が覗き込むところを荊軻は隠し持った剣を抜き皇帝の胸に擬し、秦舞陽が左から抑え込む。
皇帝は、「わしには三千人の妃がいるが、そのなかでこの花陽夫人は琴が上手で毎日聴くことにしている。最後に琴を聞かせてくれ」という。
夫人が「飛ぶ鳥も地に落ち武士も和らぐほどの秘曲」を弾じるにつれ、二人の刺客の視線は下を向き、「緩緩として」、ゆっくりゆっくり眠れるが如くになっていく。
いまだ!始皇帝は七尺の屏風を越えて飛び降り、彼らと打ち合い、八つ裂きにしてしまう。
あっぱれ、花夫人、皇帝の命を救ったのだ。
音楽の勝利か。
シテ・直面の武田孝史の存在感、ワキ・刺客の宝生欣哉の精悍、引き締まった一曲だった。
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ikuohasegawa at 2019-10-20 06:37
写真一枚目の照明の妖しい塔は、どこの塔ですか。
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saheizi-inokori at 2019-10-20 08:07
> ikuohasegawaさん、新宿のドコモビルだと思います。いろんな色になるのです、あまり趣味よくないですね。
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hisako-baaba at 2019-10-20 08:35
なんとまあ、素敵な宵でしたね。
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saheizi-inokori at 2019-10-20 08:53
> hisako-baabaさん、はい、おかげさまで。感謝です。
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tona
at 2019-10-20 11:29
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萩大名3回目ですか!
能、文楽、落語、歌舞伎と話の花が咲いたというのがこの日のクライマックスですね。同好の方とのお話最高です。素晴らしい一日一日をお過ごしで後悔なしの人生に移行しきってしまわれた!
能、文楽、落語、歌舞伎と話の花が咲いたというのがこの日のクライマックスですね。同好の方とのお話最高です。素晴らしい一日一日をお過ごしで後悔なしの人生に移行しきってしまわれた!
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saheizi-inokori at 2019-10-20 12:20
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soymedica at 2019-10-20 16:40
「咸陽宮」観たかったのですが、名古屋に急遽行くことになり、「おけぴ」で売ってしまいました。観たかったなあ。
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saheizi-inokori at 2019-10-20 18:14
by saheizi-inokori
| 2019-10-19 12:31
| 能・芝居・音楽
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Comments(8)