日垣隆「いい加減にしろよ(笑い)」(文藝春秋)と 「ウエブ進化論」についても

昨日紹介した「ウエブ進化論」のもう一つの大事なテーマは「Web2・0で想定される”総表現者社会”はいわゆる”衆愚”を集めるに過ぎないのではないか?」。
果たして世の中の誰が物事を「正しく判断する」能力を持つのか。誰がどのように重要な意思決定をすべきなのか。
「”個”を鍛え上げた優れた個人や専門家がその任にあたるべし」というのが今までの・今でも既成秩序のエライサンを中心とする人々の常識になっている。
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日垣は小泉政治のウソを始め世の中の欺瞞をいくつも例を挙げて痛烈に批判する。その根っこにはこの国の”国民のレベル”に対するもどかしさ・いらだたしさ・腹立たしさがあるかのようだ。国民・国の運命に対する愛情と裏腹の怒りだ。
少なからぬ国民が騙されやすい存在であることを最もよく知っているのは、実は小泉首相なのではないか
憲法弟95条の定めるところにより正式に”民意”によって(国会で)廃案となった郵政民営化法案についての賛否を意識的に郵政民営化についての賛否と混同し「郵政民営化に賛成か反対かが最大の争点だ」と言い放つ。つい一ヶ月前まで「郵政民営化に関心がある」は2パーセントしかなかったのに、いつのまにか「最大の関心事は郵政民営化だ」と世論調査に答えてしまう36パーセントの国民。郵政民営化に夢中になるのは小泉が総裁出馬の公約だったからというならアジア外交の改善も、国債発行縮減も、国の借金を減らすことも、、みんな公約だったのに。
世論に文句を言うのはマスコミ的タブーですが、そういうくだらないタブーを作るから、さらに誤った世論誘導をやり続けてしまうのです。おかしいことはおかしいと、とはっきり言うべきでしょう。

マスコミが本来果たすべき”権力の監視人”としての役割を果たさないからこそ、これからの総表現者時代の必然があるのではなかろうか?
梅田はいう。
ネットが悪や汚濁や危険に満ちた世界だからという理由でネットを忌避し、不特定多数の参加イコール衆愚だと考えて思考停止に陥ると、これから起こる新しい事象を眺める目が曇り、本質を見失うことになる。・・(略)・不特定多数無限大の良質な部分にテクノロジーを組み合わせることで、その混沌をいい方向へ変えていけるはずという思想を、この「力の芽」は内包する。そしてその思想は、若い世代の共感をグローバルに集めている。思想の精神的支柱になっているのは、オプテイミズムと果敢な行動主義である。

この楽観が本当にどこまで通ずるものか、特に彼が本の中で言う「ネットが”神の視点”をもつ」ということまでは?ただし多くの人々が情報を集めやすくものを言いやすくなることは間違いではないと思う。
Tracked from 建築家の育住日記 at 2006-02-26 12:07
タイトル : まるでオセロゲーム、@堀江メールに見る日本人の生理
一瞬に攻守ところを変えました。オセロゲームの様相をていしています。 23日、政治倫理審査会を終えて出てきた伊藤公介・元国土庁長官は笑いを噛み殺していたそうです。永田のオンゴールで逃げ切れると踏んだのでしょう。 永田をいじり倒して、おもちゃにして、すべてがチ....... more
Tracked from *king fantas.. at 2006-02-27 01:18
タイトル : [Wisdom of Crowds]やっぱり僕たちはアホ..
[http://d.hatena.ne.jp/norinoring/20060225:title=昨日のエントリー]を書いてから、ブラブラしていたら犬飼さんがWisdom of Crowdsについて書かれていたので、ちょっと考えを深める意味も込めて反応してみたい。 [http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50389932.html:title=Apathy of Crowds − 404 Blog Not Found] 僕は、ウェブの可能性を信じている...... more
Commented by YUKI-arch at 2006-02-26 14:19 x
郵政民営化は噴飯モノでしたね。アナクロニズムです。

この問題はプラトンまでさかのぼります。
賢人政治か、衆愚政治か。

梅田さんのオプティミズムには立てません。
そこには論理の飛躍があって、やや粗雑ですね。
3章までは、得るところが多いことも付け加えておきます。
Commented by saheizi-inokori at 2006-02-26 14:47
YUKI-arch さん、TBとコメントありがとう。噴飯モノであっても大きな顔をして国民の支持を得ているところが問題です。
Commented by saheizi-inokori at 2006-02-27 12:00
*king fantas.さん、なかなか難しいTBありがとうございます。そちらにコメントさせていただきましたが、価値観の問題などは”神の視点”というのは無理だと思います。それ以前で機能する場面はたくさんあると思いますが。
Commented by norinoring at 2006-02-28 14:15 x
saheiziさん見失って探してましたw
"神"とか出しちゃうと議論が不明確なのですが、梅田さんの言うところの神の視点ってのは、ひとりひとりには把握不可能な普遍性ということだと僕は理解しています。世界的な視点、すべてを巻き込むというような意味で。
もちろん、ネットが使える使えない、字が読める読めないみたいなことが介入してくるので現時点では達成されていないませんが、理論的には世界がつながっていて可能性が見えているみたいな感じですかね。
とても難しいですが、これから世界にとってものすごく重要な課題だと感じています。
また遊びに来ますので気が向いたら考えてみてください。
では。
Commented by saheizi-inokori at 2006-02-28 15:27
norinoringさん、重要な課題、救いになるかもしれないし必要でもあるが間違えるととんでもないことになるかもしれない課題だと思いますよ。
Commented by norinoring at 2006-03-01 00:51 x
そうですね。重要な指摘ありがとうございます。
やっぱり僕たちはアホなのか・・・。w
今、僕たちの世界はGoogleを認めていて、まるで神のように言う人もいる。でも、Googleが今後もGoogleでいれるかどうかは僕たちにかかっていると思います。それが民主主義であり、Wisdom of Crowdsが機能する意味かと。
つまり、saheiziさんの言う「間違い」がそのような世界で起こるなら、それは世界中の人が「認めた」ことが間違っていたということになると思います。
という世界では決してないから問題なんですよね。

マスの中にも乖離があってその一方で僕みたいな議論をするのは確かに危険です。もっと考えます。
Commented by saheizi-inokori at 2006-03-01 08:37
norinoringさん、ご丁寧なコメント恐縮です。この問題はつまるところ利用するわれわれの”確かさ”みたいなところにかかわるのでしょうが、そこに今ひとつ自信がもてないのと、やってみて考えるというような話ではなくいつのまにかすべてが取り込まれている、といった恐怖がどこかにあります。規制しようとする政府の情報すら・・。根拠のない不安。でもこうして書いているコメントもブログにアップしたとたんG00GLEは確かに把握して編集しているのですからね。
Commented by jetblue at 2006-03-04 10:48 x
TBありがとうございます。
http://blog.livedoor.jp/takahashikamekichi/ の斉藤さんが
指摘されているように、ネットと地域の声、
これにこそ目を向けて生活する視点が抜けて、
中途半端な中空で批判する視線がもっとも、たちが悪いのでしょうね。

そんな気がしております。
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by saheizi-inokori | 2006-02-26 10:34 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(2) | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori