暖気運転のプロと、本気の素人
2019年 07月 21日
このところ頓に増えたのは、「聞いていながら聞いていない」、気もそぞろ・上の空とはチト違って、ちゃんと聞いているつもりで、その話の大事な部分を聞き落してしまうのだ。
「白酒とはん治が出る」なんたらかんたらで薦められたチケットを買ってから気づいたのは朝9時半開演だということ、えらいこっちゃ。
上野鈴本で、青山学院高校の同窓会が主催する「IV寄席」、蔦の絡まるチャペルの学校だ。
10分前に入っていくと、おお、今日はペギー葉山のコンサートかい?そんな華やいだ会場だ。
二楽が白いジャケットで登場、座蒲団に座って「おはようございます」「おはようざまーす!」、同窓会会長の挨拶だった。
次回は菊之助(同窓)を見る大同窓会、その案内をして、席亭も同窓生らしく挨拶をする。
二楽の紙切り、「桃太郎」「花火」「七夕」「スカイツリー」、まだエンジンがかからないのか、時間がかかって出来も(かなり)悪いけれど、間に挟むトークも含めて大うけだ。
「すご~い!」「わっ!」、いいね、僕も初心に帰って素直に笑って感動しよう、、まあ、笑顔だけでも。
文菊「湯屋番」
才能がある本格派、それなのにマクラで自分の容貌を材料に「いい男は噺家に向かない」ようなギャグともいえないのをやるのが、軽味のない気障で、あちこちのブログでも否定的なコメントがあるのだが、久しぶりに目の当たりにすると、以前よりかなり重症、悪化している。
たしかに真っ青に反り上げたハンサムな茶坊主を見る客は一瞬、場違いなものをみたような戸惑いを感じるかもしれない、それを逆手にとって笑いに転じて、ネタに入りやすくする計算なのかもしれない、がイタダケナイ。
ネタもオカマっぽい若旦那の造型がしつこくて僕のスタイルではなかった。
あずみ・三味線漫談
はん治「妻の旅行」
定年後の夫が、もっとも辛いのは恐ろしい我儘な妻と一緒にいること。
その妻が旅行にでかけるのは、解放・自由、バンザイ!
でもそれを面に出すと妻は、「私なんかいない方がいいの」「留守になんか悪いことするのだろう」と怒り・猜疑心をぶつけて機嫌が悪くなる。
その経験を学習して、こんどは妻が旅行に行くと聞いた時から、心にもない不機嫌を装っているのだ。
現役時代は知らなかった妻なる者の恐るべき生態、哀れなる枯れ落ち葉の嘆き。
例によって飄々とした語りで笑わせる。
前の席の奥さんが、受けに受けて隣の旦那をつついていたのは、身に覚えがあるからか。
白酒「茗荷屋」
白酒と言う名前は百年ぶりで三代目だとか、鈴本の客層はブルジョアっぽく、特に今日はそうだとか、落語は中身がないからいくらでも聞き続けられるなどと、軽いジャブで客を乗せて、ネタは渋い。
早飛脚が預けた荷物には百両入っていると聞いた旅館の夫妻が、茗荷尽くしの料理責めにして、荷物のことを忘れさせようとする。
「茗荷の刺身、わさび醤油で」、ためしにやってみようか。
終わって11時、急いで不忍池へ、蓮の花がしぼむ前にと。
花もきれいだったが、大きな葉の海が見ごたえあり。
昼飯を食おうと思って行った「池之端 藪」が閉店していたことを忘れていた。
藪モードになっているので、「上野 藪」まで歩く、歩くしかない距離だ。
クシ、足し算。
仕事をしている職人がじろっと僕をみた。
アメ横は、昼酒を楽しむ連中でにぎわっている。
「納豆せいろ」、運動不足だからこれで我慢する。
隣に背筋のしゃんとした、70でこぼこの夫人が座ったかと思うと、ぶっとく切った板わさ、鴨と葱のうまそうに焼き目をつけたの、をつまみに漆の一合升から冷や酒を静かに飲む。
う~む、俺も、、誘惑を断ち切って、御徒町駅に向かった。
というわけは、千駄ヶ谷の能楽堂で、Uちゃんの「茂山あきら社中・タンポポ会 茂山茂社中・卯翔会 合同」の狂言の会があるのだ。
朝から夕方まで、入場無料、出入り自由、その14時半頃がUちゃんの出番。
「文荷」「右近左近」「附子」。
「附子」は中学で体育館に本物の狂言師が来て、演じて見せてくれた、懐かしいなあ。
太郎冠者次郎冠者の二人とも初心者らしく、たどたどしく、狂言の節回しで「扇げ扇げ」「扇ぐぞ扇ぐぞ」、附子=砂糖を「あむあむあむ」と食べるのが、とても可愛い。
Uちゃんは「佐渡狐」のアド・越後の百姓で、登場。
休憩後は、上級者なのか、それまでの人とはダンチの声量、節回し、足の運びでびっくりした。
佐渡にも狐がいるという佐渡の百姓と脇差をかけて争う。
その判断を奏者に頼むのだが、佐渡の百姓はずるいからこっそり袖の下を渡す。
奏者を抱き込んで佐渡の百姓が勝ったかにみえたが、、。
Uちゃんだけを見に来た人はすぐに帰ったが、僕はせっかくだから、そのあとの「二九十八」「那須之語」「猿婿」をみた。
那須の与一を語るのは若い女性一人で義経と与一を演じ分け、アイ語りのようにも語る。
なかなかの迫力で、終った時にひときわ高い拍手をした。
「猿婿」は7人(匹)が、猿語で「きゃきゃきゃ」「きゃあーきゃーきゃきゃ」と会話する。
ゆかい愉快。
素人の演じる狂言、いつものプロとは違う。
それなのに、のんびり聞いていると、とても気持ちがいい。
古い日本語の美しさ、のんびりした抑揚、響き、リズム、、しかも真剣、外の世界では逢えない空間を満喫、オモシロカリケル、キャーキャーキャキャキャ、めでたけれ。
「白酒とはん治が出る」なんたらかんたらで薦められたチケットを買ってから気づいたのは朝9時半開演だということ、えらいこっちゃ。
上野鈴本で、青山学院高校の同窓会が主催する「IV寄席」、蔦の絡まるチャペルの学校だ。
10分前に入っていくと、おお、今日はペギー葉山のコンサートかい?そんな華やいだ会場だ。
二楽が白いジャケットで登場、座蒲団に座って「おはようございます」「おはようざまーす!」、同窓会会長の挨拶だった。
次回は菊之助(同窓)を見る大同窓会、その案内をして、席亭も同窓生らしく挨拶をする。
二楽の紙切り、「桃太郎」「花火」「七夕」「スカイツリー」、まだエンジンがかからないのか、時間がかかって出来も(かなり)悪いけれど、間に挟むトークも含めて大うけだ。
「すご~い!」「わっ!」、いいね、僕も初心に帰って素直に笑って感動しよう、、まあ、笑顔だけでも。

才能がある本格派、それなのにマクラで自分の容貌を材料に「いい男は噺家に向かない」ようなギャグともいえないのをやるのが、軽味のない気障で、あちこちのブログでも否定的なコメントがあるのだが、久しぶりに目の当たりにすると、以前よりかなり重症、悪化している。
たしかに真っ青に反り上げたハンサムな茶坊主を見る客は一瞬、場違いなものをみたような戸惑いを感じるかもしれない、それを逆手にとって笑いに転じて、ネタに入りやすくする計算なのかもしれない、がイタダケナイ。
ネタもオカマっぽい若旦那の造型がしつこくて僕のスタイルではなかった。

はん治「妻の旅行」
定年後の夫が、もっとも辛いのは恐ろしい我儘な妻と一緒にいること。
その妻が旅行にでかけるのは、解放・自由、バンザイ!
でもそれを面に出すと妻は、「私なんかいない方がいいの」「留守になんか悪いことするのだろう」と怒り・猜疑心をぶつけて機嫌が悪くなる。
その経験を学習して、こんどは妻が旅行に行くと聞いた時から、心にもない不機嫌を装っているのだ。
現役時代は知らなかった妻なる者の恐るべき生態、哀れなる枯れ落ち葉の嘆き。
例によって飄々とした語りで笑わせる。
前の席の奥さんが、受けに受けて隣の旦那をつついていたのは、身に覚えがあるからか。

白酒と言う名前は百年ぶりで三代目だとか、鈴本の客層はブルジョアっぽく、特に今日はそうだとか、落語は中身がないからいくらでも聞き続けられるなどと、軽いジャブで客を乗せて、ネタは渋い。
早飛脚が預けた荷物には百両入っていると聞いた旅館の夫妻が、茗荷尽くしの料理責めにして、荷物のことを忘れさせようとする。
「茗荷の刺身、わさび醤油で」、ためしにやってみようか。

花もきれいだったが、大きな葉の海が見ごたえあり。
昼飯を食おうと思って行った「池之端 藪」が閉店していたことを忘れていた。
藪モードになっているので、「上野 藪」まで歩く、歩くしかない距離だ。

仕事をしている職人がじろっと僕をみた。


隣に背筋のしゃんとした、70でこぼこの夫人が座ったかと思うと、ぶっとく切った板わさ、鴨と葱のうまそうに焼き目をつけたの、をつまみに漆の一合升から冷や酒を静かに飲む。
う~む、俺も、、誘惑を断ち切って、御徒町駅に向かった。

朝から夕方まで、入場無料、出入り自由、その14時半頃がUちゃんの出番。
「文荷」「右近左近」「附子」。
「附子」は中学で体育館に本物の狂言師が来て、演じて見せてくれた、懐かしいなあ。
太郎冠者次郎冠者の二人とも初心者らしく、たどたどしく、狂言の節回しで「扇げ扇げ」「扇ぐぞ扇ぐぞ」、附子=砂糖を「あむあむあむ」と食べるのが、とても可愛い。
Uちゃんは「佐渡狐」のアド・越後の百姓で、登場。
休憩後は、上級者なのか、それまでの人とはダンチの声量、節回し、足の運びでびっくりした。
佐渡にも狐がいるという佐渡の百姓と脇差をかけて争う。
その判断を奏者に頼むのだが、佐渡の百姓はずるいからこっそり袖の下を渡す。
奏者を抱き込んで佐渡の百姓が勝ったかにみえたが、、。

那須の与一を語るのは若い女性一人で義経と与一を演じ分け、アイ語りのようにも語る。
なかなかの迫力で、終った時にひときわ高い拍手をした。
「猿婿」は7人(匹)が、猿語で「きゃきゃきゃ」「きゃあーきゃーきゃきゃ」と会話する。
ゆかい愉快。
素人の演じる狂言、いつものプロとは違う。
それなのに、のんびり聞いていると、とても気持ちがいい。
古い日本語の美しさ、のんびりした抑揚、響き、リズム、、しかも真剣、外の世界では逢えない空間を満喫、オモシロカリケル、キャーキャーキャキャキャ、めでたけれ。
私もいつか、その蕎麦屋のご夫人のように、冷酒を静かに格好良く飲みたいものですが、お猪口で2杯が限度。
一合飲んだら大変なことになりそうだけど^^;
一合飲んだら大変なことになりそうだけど^^;
0
>「附子」は中学で体育館に本物の狂言師が来て、演じて見せてくれた
あっ、私も中学校の体育館で見ました。
演目は「棒しばり」だったように覚えていますが
本物の狂言師の一人はもしかしたら若き日の野村万作さんだった
んじゃないかしらと思っているのですが(あり得ない?)。
体育館の舞台の両脇にかかったビロードの緞帳?が破れていて
中学生ながらなんだか申し訳ないなぁと思っていたのをはっきりと覚えています。
懐かしいなぁ。
あっ、私も中学校の体育館で見ました。
演目は「棒しばり」だったように覚えていますが
本物の狂言師の一人はもしかしたら若き日の野村万作さんだった
んじゃないかしらと思っているのですが(あり得ない?)。
体育館の舞台の両脇にかかったビロードの緞帳?が破れていて
中学生ながらなんだか申し訳ないなぁと思っていたのをはっきりと覚えています。
懐かしいなぁ。
上野の藪かぁ、ずいぶん行ってないなぁ・・・
よし、こんど鈴本に行ったときは鴨葱と板わさ! 決めました! (笑)
よし、こんど鈴本に行ったときは鴨葱と板わさ! 決めました! (笑)
> koro49さん、そのときはお助けしたいなあ。
> pallet-sorairoさん、おお!ビロードの緞帳!懐かしいなあ。
> uronteiさん、私もそれでいこうかな。
「珍々軒」のラーメンうまし、また、この界隈にはよく行きます。『大統領』でクサヤでいっぱい、とか。上野で好きなものを食い、落語を聴く。当たり前のようなことですが、これがとても幸福です。
> j-garden-hirasatoさん、昼間からよっぱらって、、後先考えないで陶然となるのが極楽なんですね。
とろろと納豆の「納豆せいろ」
今日の昼食はこれにします。
今日の昼食はこれにします。
> ikuohasegawaさん、さっぱりして、なんか体にもよさそうで。
by saheizi-inokori
| 2019-07-21 12:42
| 落語・寄席
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