旅をいたさねば

金沢から帰ってから募るあの町への思い、こういうのをなんというのだろう。
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(ひがし茶屋)
若いとき旅を致さねば老いての物語のない
修行僧が住吉天王寺に行くときの動機、金を持たずに旅に出る坊さんは気楽だったか。
狂言「薩摩守」

無賃乗車のことを薩摩の守と、子供の頃は平家物語を知らない人でも多くの人が言ってたね。
「平家の公達」、その心は「薩摩守」、その心は「タダノリ(忠度)」、シャレの好きな船頭をこれで胡麻化して無賃に、と茶屋の主人に教わった、肝心の「タダノリ」が出てこなかった坊さん、はじめに「サツメイケの公達」なんて言ったのは、あれは間違えだろう高野さん。
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船頭、黒い長いひげで口元を隠し頭にも帽子みたいなのを被っているから誰か分からなかったが、一言しゃべっただけで萬斎としれた。
舟をこぎながら「ウハハハハ」と朗らかに笑う。
あまりに心地よくてこっちも舟をこぎそうになる。
千両役者とはこうしたものか。
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(国立能楽堂の庭に生えていたキノコ、作りものかとさざめく人たち)

能「藤栄」

兄亡き後、遺児の相続すべき所領を分捕った藤栄を、旅の途中の最明寺時頼(北条時頼)が「この肩書が見えないか」と恐れ入らせて子供の土地を安堵する。
一寸先の定めも知らず、楽し気に浦遊びで藤栄の舞と能力の少しエロティックな舞が見どころか。
藤栄の鞨鼓の舞、修行僧の正体を暴こうと扇で顔を隠した時頼に近づく時の眼光は鋭い(直面)。
笛が元気、小鼓の掛声が単調な気がした。
最明寺をワキが演じる、幕を出る時の黒い傘と黒装束にちょっと不気味な存在感があった(装束の、だ)。
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「文化浴泉」に入って「はじめ」でカミさんと晩飯、僕のブログの読者、顔を存じ上げない方が訪ねて見えたとお礼を云われて恐縮する。
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金沢もうまいが「はじめ」もうまい、店の空気はなおのことだ。
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マンションの掃除のおばさんが活けてくれたドクダミの花。
こういう心をもって仕事をするから86歳でも元気、前の仏頂面のオジサンよりきれいにしてくれる。
人見知り・サンチがようやくなついてくれて僕の方が嬉しい。
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微醺(でもないか)を帯びて帰った目の先の郵便受けにそっとおいてある。
ありがとう、と心でつぶやく。
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Commented by たま at 2019-06-06 21:53 x
幼い頃、腫物ができるたびに、祖母がドクダミの葉をあぶって患部に当て、”タコの吸出し”として重宝していたような。
雪隠近くの湿っぽい所に白い花を開く”忌み花”ながら、上の娘には、その若葉にオリーブオイルを垂らしてサラダにすると超美味だというものの・・・?
Commented by saheizi-inokori at 2019-06-06 22:55
> たまさん、私も吸出しの経験があります。
ベトナムのレストランでは黙っていても野菜サラダが山盛りででたのでしたが、そのなかのかなりがドクダミ、うまかったですよ。
Commented by takoomesan at 2019-06-07 01:18
ドクダミの花、羨ましい。バンコクでは暑くて花が咲かなかった。
で、やっぱり暑過ぎて消えてしまった。
Commented by そらぽん at 2019-06-07 05:32 x
旅した地への思いが光って 写真がさらに美しいです~ 
   
そのよき地には、よき人々が活きいきいてくれてるし
戻れば、美しく挿された花や「はじめ」が待っているし 
はあ 何でしょ 私まで幸せなきもちー 
Commented by saheizi-inokori at 2019-06-07 06:59
> takoomesanさん、東京はタイと変わらない暑さといわれますが、そのタイもさらに温暖化しているのですね。
いま、花盛り、あちこちで清楚な花。
Commented by saheizi-inokori at 2019-06-07 07:00
> そらぽんさん、生き生きすると見える風景も美しくなるようです。
Commented by j-garden-hirasato at 2019-06-07 07:04
人間の味覚は、
実際の味+店の雰囲気でしょうね。
行きつけの「はじめ」さんなら、
何をいただいても美味しいでしょう。
Commented by soymedica at 2019-06-07 09:48
いいなあ、藤栄、観たこと無いんですよ。
いいなあ、はじめ、みたいな店が近くにあって。
Commented by saheizi-inokori at 2019-06-07 10:01
> j-garden-hirasatoさん、ほっとして楽しくて、そりゃうまいにきまってますね^^。
Commented by saheizi-inokori at 2019-06-07 10:02
> soymedicaさん、おや、おいでになってるかな、もしかして帰りに寄られるのかななんて考えましたよ^^。
Commented by hisako-baaba at 2019-06-07 12:57
86歳で立派にお仕事!凄いかた。でも考えちゃう。隠居が普通。
金沢、行ってみたい街でした。
雰囲気が素敵ですね。
帰られたら、狂言鑑賞。萬斎さんの声も聴いてみたいものです。
Commented by saheizi-inokori at 2019-06-07 13:19
> hisako-baabaさん、思いきって出掛けてよかったです。
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by saheizi-inokori | 2019-06-06 12:10 | 能・芝居・音楽 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori