可愛くて可哀想なお三輪さん 文楽通し狂言「妹背山婦女庭訓」
2019年 05月 17日
でも前から見たかった文楽の「妹背山婦女庭訓」(いもせやまおんなていきん)だ、ワクワクして国立劇場に向かった。
舞台真ん中に吉野川をはさんで上手が背山大判事の質素な山荘、下手に妹山太宰家の雛を飾った女館、両家は長年領地の争いで不仲、しかしその息子・久我之助と娘・雛鳥は一目ぼれ、相思相愛の仲なのだ。
芝居は川を挟んだ両家が、それぞれに蘇我入鹿からの無理難題(久我之助に出仕、雛鳥に入内せよ)に苦しみ、久我之助は切腹、雛鳥は母親による斬首を経て首だけの嫁入り(雛流し)、そして両家の仲直りまでを二時間近く濃密に描く。
太夫と三味線が上手と下手に分かれ、上手は侍らしく胸を張り「顎をつかって」語り、下手は花びら模様のピンクの肩衣をつけて女らしく情感たっぷりに語る。
ときに川越しに掛け合い、合唱もする。
冒頭で三味線鶴澤富助が、「うっうっうっ、、」と唸って、強い調子でベンベンベンと弾くと豊竹藤太夫が、低く「駆けりゆく」と出て「古の御世の昔、、」久我之助の語りを竹本住太夫は
なかなか一朝一夕では語れん枕で、若い太夫には、ムリはムリです。ムリやけども、お客さんに「こんなええ役をつけてもろうて頑張ってるな、そこそこ語ってるな」と思わせないかんのです。(「文楽の心を語る」竹本住太夫)というてはる。
大丈夫!たいへんよくできました、ナンチャッテ。
久我と雛鳥が川越しに「顔」(藤太夫)と「顔」(織太夫)、心ばかりが、「い」(藤)「だ」(織)「き」(藤)「あ」(織)「ひ」(合唱だったか)のくだりも切々といい。
住太夫が泣かせどころという、雛鳥が嫌な入鹿に入内しなくても母の定高が首を斬ってやる、「心ばかりは久我之助の妻になったつもりで死にゃあ」というと、雛鳥が「アイ」母「やー」娘「アイなあ」の掛け合い、ここで客が手を叩いてくれはったら、「こっちは非常に語りよい」、ちゃんと手がきました。
入鹿の妹・橘姫と求馬(じつは藤原淡海)を争い、一歩も引かない口論、「人の男を盗むあなたは婦女庭訓をべんきょうしていないだろう」とやっつける。
しんそこ男を愛して浮気を見せつけられてもきっと奪い返せると二人の跡を追って入鹿の御殿にまで侵入する。
御殿女中たちに見つかって、求馬に会わせるからとからかわれて馬子唄まで歌わされたうえに暴力を振るわれおっぽり出される。
閉鎖社会にある女中たちの意地悪さや歪な好色ぶりを作者は抉りだす。
しかもお三輪さんは、鱶七(じつは鎌足の忠臣)にグサリ、脇腹に刀、激しい疑念と嫉妬の情に取りつかれた形相の女の生き血が入鹿退治に必要だと云うことで、なんとまあ、それを聞いたお三輪さんは、愛する求馬の役に立つならと喜んで死んでいくのですよ。
寺子屋からうきうきと帰ってくるお三輪、隣の求馬が怪しげな女と会っていると聞いて、すぐに求馬を呼んできてといい、堂々と正面から問いただす、まっすぐでケレンのない、ほんとに好い女だ。
道行恋苧環で、求馬を挟んで橘姫と三人で踊る場面のお三輪、なんともいえない健やかな色気が感じられた。
それだけに男の理不尽にいたぶられ、あげくのはてに殺されてしまうところが哀れでならない。
僕はこっちの方が背山妹山親子の死別よりもストレートにぐっときた。
勘十郎すごい。
隣りの居眠りおばさんや、舞台をみないで床本ばかり見ていたおじさんはもったいないな。
saheiziさんのあたたかい写真に感謝致します
歩道もない道を気をつけてね パパも仕事ご苦労さま
トヨタが終身雇用制を止めたいと発表と。会社は空前の
最高益で、豊田氏らへ役員賞与を2億円以上支払うと。
なんだコレ!彼等の下で辛吟汗して働く数十万人を何だと!
トヨタも日産も廉恥心というものを亡くしてしまった経営者、亡国の新自由主義の行きついた醜い姿です。竹中の顔も浮かびます。