慰安婦問題は人権対国権の戦いだ 映画「主戦場」

テイクさんのブログに教えられて、さっそく観てきた映画「主戦場」。
電話で訊いてみると満員になるというので、ネット予約して夕方の回、若い人の姿もみられた。



慰安婦問題の真実は?20万人という被害者の数、強制連行だったのか(売春婦の自由意志ではなかったか)、「性奴隷」という表現は的確か(自由もあり報酬もあったから奴隷ではない)、日本政府の責任、歴史教育のあり方(教科書問題)などを軸に異なった立場の人たちがあたかもその場で議論しているような画面構成、迫力あったなあ。
とくに、否定論・歴史修正主義者の櫻井よし子、杉田水流、ケント・ギルバートなどの目が怖かった。

数々のホットな論点があって、軍配をどちらに上げるのかは、観客に委ねられている。
とはいえ、「アメリカに慰安婦像を建てるのは中国の策謀であって、それは中国がどうやっても日本に勝てないから何とかして日米韓のあいだを裂くのが目的だ」と大きな口を開けて言い放った杉田水流の発言(場内から失笑・嘲笑)とか、以下のような発言を聴けばおのずから勝負は決している。
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(安倍首相・国会で)まぁいわば、官憲が家に押し入って、人さらいのように連れて行く、そういう強制性はなかった、、
こういう風に勝手に言葉を極端狭義に捉えて、それはなかったというのは、逆に言えば、外見上平穏に連れていかれた、または自ら出頭せざるを得ないように強制したケースなどはあったということだ。
(ケント・ギルバード)彼女たちは性奴隷ではなく売春婦でした。自由だったんですよ。まあ、、すべてのケースで完全に自由だったわけではありませんが、、奴隷ではありませんでした。監禁されたわけじゃない。実際、多額の金を稼いでいました。
すかさず(という感じで)
一億円もらったとしても、性奴隷は性奴隷だと思いますよ。自分の自由を奪われて性的に、強姦され続ける、、一億円もらったとしても性奴隷であったといって何がいけないのですか。
「女たちの戦争と平和資料館」の渡辺美奈がいう。
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慰安婦についての記録・証拠がない・証言に一貫性がないことについても、未成年(違法だった)の少女たちが思いだすだに辛く切ない衝撃の体験を覚え細部にわたって記憶している方が不思議・不自然だし、日本軍は敗戦が決まるとあとで問題になりそうな文書はすべて焼却してしまっている。
それでも
(ケント・ギルバード)記録が全く存在しません、ええと、全く、、というわけではないけど
などと口が滑る。

否定派の藤木俊一が「フェミニズムは不細工で誰にも相手にされない、心も見た目も汚い女性たちが始めたんだ」と品なく言ってのけ、「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝が
国家は謝罪してはいけない、それは基本命題だ、覚えておいてください。国家はね、たとえそれが事実であったとしても、謝罪したら、その時点で終わりなのだ
と御託を垂れ、日本会議を中心とする日本復古運動のキーパーソンである加瀬英明が、慰安婦についての他の研究者の本を読んだことはない、人の書いたものは読まないと、言い放ち(歴史学者の肩書)、教科書の慰安婦についての記述が載せられなくなった(そのようにしたのが藤岡であり加瀬であり安倍なのだ)ことを訊かれ「子供の頃は明るい楽しいことだけを教えればいいでしょう、そうじゃない?」と気持ちの悪い笑顔をみせた。

それで、慰安婦問題は日韓の問題というよりも、すぐれて日本国内の人権派・憲法の価値観を守ろうとする人々と戦前回帰派・旧憲法の男性優位の家父長制・国家神道下の軍国主義「神の国・日本」を目指す人々との闘いであることが、はっきりした。
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彼らにとっては、大東亜戦争はアジアを解放する正義の戦いだった、日本はなにも間違ったことをしていない。南京大虐殺、慰安婦性奴隷、、そんなことがあるはずがない・あってはならないのだ。
生産性の低い人は国家の利益にならないとする、女性差別‣優生思想・多様性排除の人々。
だから、慰安婦問題についてもなにがなんでもなかったことにしなければ収まらない、理屈じゃない信仰に近いものだ。
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そういう連中がいまや権力の中枢をがっちり握ってしまった。
理性・知性があって彼らを押しとどめるべき使命を持っているはずのインテリは死んでしまったのか、どこかに潜ったのか。

こうしている間にも、生まれながらにしてもっている個人の人権のことなど知りもせず、上司第一・会社第一・日本第一を叩きこまれ、日本がアメリカの先頭に立って戦う時が来る、そう教えられた・慰安婦などと言う言葉すら知らない若者たちが、どんどん増えてくる。
いよいよもって、国民の出番ではないだろうか。
令和だオリンピックだなんて浮かれていないで、この映画を見に行こう。
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Commented by テイク25 at 2019-04-29 15:51 x
佐平次さんの映画評が素晴らしくて圧倒されます。
これは絶対観なければならぬ、と改めて思いました。

予告編でも見られる杉田水脈氏の言い分の中身の無さやケント・ギルバートの「彼女たちは売春婦」という見下した言い方が嫌になります。

性奴隷という言葉がもう世界では周知されている現在、日本軍がそんなことをする筈がないと言い切れる根拠は何なのでしょう。

「理屈じゃない信仰に近いものだ」という佐平次さんの評価は頷けます。ありがとうございました。やはり東京に出かけて観てきます!
Commented by saheizi-inokori at 2019-04-29 17:49
> テイク25さん、いい情報をありがとうございました。ぜひご覧下さい。
学校で連れていくなんて夢のまた夢かな。
Commented by そらぽん at 2019-04-29 20:01 x
貴重な映画と解説を感謝します。 「あるはずない
あってはならないのだ」の台詞の連中が権力の中枢と!

国民も、この台詞でお片ずけする傾向があるかも。
多数の自治体や省庁と高額契約してる新潟や各地の秋元
少女隊。そこを通じ税金が反社会への危惧にも此の台詞。
大型教育研修ビジネスに乗り出す吉本の舞台に、アベが
舞台出演したとか。もうナチ流の手口にぞっとします。
Commented by cocomerita at 2019-04-29 20:32
Ciao saheiziさん
要するに輝かしい、、とぜひ銘打ちたい日本帝国軍の歴史の汚点を曝け出したくないから、必死なんでしょ?
もはや糞まみれなんだから、さっさと目に付いたところからシミ抜き洗濯すれば良いのに。
みっともない。しかない。
負の感情をいつまで引っ張り続ければ気が済むのでしょーか?

しかしながら、ケントギルバートって何者?の何様?
アメリカ人ですよね
オメーに言われたくないし、、、。
この小判鮫集団は、実に鼻持ちならないです
Commented by saheizi-inokori at 2019-04-29 22:20
> そらぽんさん、総ぐるみ総がらみで締め付け染め上げてきますね。
ナチに習えと言った男がいまだ中枢です。
Commented by saheizi-inokori at 2019-04-29 22:27
> cocomeritaさん、ケントの正体にも気をつけたいけれど櫻井、加瀬などは葛西(JR東海)竹中などと並んで安倍をあやつっているのではないでしようか。
下品な国になりました。
Commented by KSatPhotos at 2019-04-29 22:46
今日は。
日本政府側は、それこそ「人権」という立場に立って問題を認識し、財団を両国政府同意のもとで作りましたよね。そして、その後の展開は、一方的に、韓国政府側が財団を解散させかつ合意した事項を守らずにいて、現在の状況に至っていると思います。映画ではどの段階まで描かれているのでしょうか。何も描かれていないのでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2019-04-30 06:30
> KSatPhotosさん、はい、アメリカの後押しのもと、被害者には一言も話のないままに合意されました。
韓国の外務省?の役人が被害者に説明しようとして猛烈な抗議を受けて(座れと言っても座らない)立ち往生する場面から始まりました。ぜひ映画をご覧になって確かめて下さい。
Commented by ikuohasegawa at 2019-04-30 07:50
「子供の頃は明るい楽しいことだけを教えればいいでしょう、そうじゃない?」
そうじゃ無い!!
Commented by saheizi-inokori at 2019-04-30 08:00
> ikuohasegawaさん、明るく楽しいだけの人生なんて!
Commented by KSatPhotos at 2019-04-30 10:38
saheiziさん、おはようございます。そうですか。
すると、基本的には、「韓国政府のこの問題への取り組み方」がノーグッドというようなスタートなんですかね。
あと、我が国の有名新聞の誤報道、それと、ウソだった証言などの事実には、その映画ではどのように取り扱われているのでしょう?。そういうのを超えた「問題」としているのかなぁ?
Commented by saheizi-inokori at 2019-04-30 12:31
> KSatPhotosさん、ウソだった証言のことも出てきます。
私は慰安婦だった人たちの問題は嘘の証言があっても変わらない問題だと、そう云うのを超えた問題だと思っています。
Commented by KSatPhotos at 2019-04-30 22:44
saheiziさん、そうですよ。正しいと思います。
そして、日本政府もその通りの考え方で、まさに「人権」の観点から韓国政府と歩み寄って、この問題を解決しようとしたのだと思います。私が上に書いた「そういうのを「超えた問題」として」ということがそのことです。だから「従軍---」という言葉は使わないんだと、日本政府は言い、納得して、財団の資金を出しました。まさに「人権」のことを思い、です。
それが、このことに関しての両国の関係は、昨年からうまくは行ってないですね。私は、一方の国の問題と思っています。
なんか、とても残念なことでした。
韓国側には、日本政府としては、もう「何をしても終わらない」ことがわかったのだろうから、1000年位はこのままの状態でいくしかないのでしょう。
なんか残念なことでしたね、と言うしかないような事態になっちゃいましたが、仕方ないですよ、うーん、うーん、悲しい、。(日本政府は、合意事項の履行を求めることしかできないと思います。)
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-01 06:23
> KSatPhotosさん、韓国にも日本にも慰安婦問題は存在しないと言う人がたくさんいます。
それか慰安婦問題の本質だと思います。
おつしやる通り悲しいことですが、世界はそういう悲しみに溢れています。
アメリカに慰安婦の像が建てられていくのもそういうことを表していると思います。
Commented by KSatPhotos at 2019-05-01 08:51
saheiziさん、そうですか。でもそれは「従軍」がつく「○○慰安婦問題」のことではないでしょうかね。
そして、日本政府側は、「慰安婦問題は存在する」という認識で取り組んだ結果が、先の合意だと思います(「従軍」ではなくて、ですよ)。つまり、それは「従軍---」というようなものではなくて、ということ。「その悲しみ」を、日本政府も認識したからだと思います。
それなのに、まさか、合意が破られる、とは。

「自然人」に「人権」が認められるように、「国」にもそれに似たような権利を少しは認めてもよいのではないかとも思ったりします。慰安婦像もあまりあちこちで作ってほしくない、、というのは、私なんかの思い(個人の思いにすぎない)。
でも、日本政府は「大使館の前とかだけ」はしてほしくない、、という立場で、。「慰安婦」問題を真摯に捉えてるからこその、立派なスタンスだと思っています。
「このこと」での2国間の関係は、どうしようもなく、今のままいくのでしょう。韓国は、合意を破棄したわけでないという立場だし、。
日本政府側は、1ミリもぶれることなく、今のスタンス・考え方を維持していかなければならないと思います。「慰安婦問題はなかった」、、なんて言ったら「いけない」とか、です。このことだけは、いつの政権にも伝えていくことが重要と思います。かたや、「従軍---」という語は、消えていくべき言葉と思っています。
いつもすみません。わかりにくければ、ごめんなさい。



Commented by saheizi-inokori at 2019-05-01 09:36
> KSatPhotosさん、従軍慰安婦こそが問題の核心です。
それがあったこと、あの中曽根康弘も主計将校としてそれにかかわったことなどの証拠もあります。
しかし、このブログはその問題を証拠立てるためのものにしたくないので、納得がいかなければご自分でネットでも書籍でも、いろいろ当たって見てください。
慰安婦問題は日韓の間の問題ではない、というのが拙ブログ記事の要旨なので韓国政府が不実だとかなんだとか言われても困ります。
Commented by KSatPhotos at 2019-05-01 16:40
saheiziさん、すみませんでした。お許しください。
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-01 17:51
> KSatPhotosさん、どういたしまして。またおいでください。同じことの繰り返しでなければいろんなご意見をいただくと私も勉強になります。
独りよがりの拙文ですから。
Commented by antsuan at 2019-05-01 23:05
日本民族抹殺計画である「WGIP」の存在が江藤淳により我が国でも明らかになりましたが、多分、この映画の製作者は「WGIP」の存在を否定したい真の歴史修正主義者なのでしょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-02 05:39
> antsuan、不勉強でよく知りません。
彼も否定論者でしたね。
Commented by sweetmitsuki at 2019-05-02 08:46
なるほど、慰安婦問題は日韓問題ではなく人権問題だということですね。
では、戦後の日本企業も日頃の鬱憤を解消するため「社員旅行」という名目で、性を商品として提供する施設で会社の経費を使って社員を遊ばせていました。
それならばこれも広義で慰安婦問題として扱われるべきです。
ここは是非ともひとつ佐平次さんの体験談をお聞ききしたいです。
まさか「俺はそんなの聞いたこともない。」なんていうつもりじゃないですよね。
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-02 13:17
> sweetmitsukiさん、したことないです。
Commented by sweetmitsuki at 2019-05-02 16:59
したことないですか。でも、他の人がしてるのを見たことはあるでしょう。
その辺のことを聞きたかったのですが検診中にそんなことを聞くわけにもいかないですから、日を改めていずれお聞きします。
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-02 17:16
> sweetmitsukiさん、さっき帰ってきました。従軍でなくとも人権無視でしようが、国家目的のために強制した、そのことを認めようとしない人びとに人権をないがしろにする考え方があって、そういう日本に戻そうとしていることが問題だと思います。
Commented at 2019-05-03 16:40
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-03 16:43
> 鍵コメさん、わかりました。
でもそんなに気になるならご覧になったらいかがですか?
Commented at 2019-05-04 01:01
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-04 06:00
> 鍵コメさん、お好きなように。
Commented by LiberaJoy at 2019-05-04 16:14
私も、saheiziさんのこのブログに刺激され、憲法記念日の翌日、観に来ました。平成・令和の空騒ぎを気持ち悪いなと感じていたものに、この映画を観て、少しホッとさえしました。満員で、立ち見でしたが、ここの観客の安倍や加瀬への嘲笑がある限り、まだまだ日本も‥‥‥と思います。それにしても、今年70歳の爺には、立ち見はきつかったです(笑)。
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-04 16:42
> LiberaJoyさん、立ち見!評判が評判をよんているのかな。上映館を増やすといいのですがね。
Commented by LiberaJoy at 2019-05-04 17:39
安倍(と、書くのも気持ち悪いが)は、本当に笑い飛ばすしかないですね。あの、スーパーマリオになったことといい、また、吉本の舞台に上がったことといい、バカバカしい。
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-04 19:48
> LiberaJoyさん、国辱、それを奉る者共も含めて、情けないですね。
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by saheizi-inokori | 2019-04-29 12:36 | 映画 | Trackback | Comments(32)

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