「大好き」 映画「ローマ」
2019年 04月 17日
靴下の底に穴があいた。
穴があくほど履いたんだと思ってちょっと嬉しかった。
現役時代にお中元などで貰った靴下がまだある。
母が電球にかぶせて繕ってくれたことも思いだした。
落語「子別れ」で亀ちゃんに糸巻きの手伝いをさせるところを最近の噺家はあまりやらないようだ。
懐かしいのになあ。 きのうは早昼に豆ごはんのオムスビを食って銀座へ。
ドレミさんの書道展を拝見してからシネ・スイッチで映画「ローマ」を観た。
ネットでしか観られないのかと諦めていたら映画館でもやっていた。
タイトルに写される床、ざ~っと水が流れてお風呂に誰か入っているのかなあ、などと思っているとその水がだんだん多くなってきて、ご~つ、飛行機が横切るから、あ、屋外なんだと分かる。
それにしても意味深な飛行機の映像なのだ。 (廊下に椅子が並んでいる、昔は次の上映を待つ客があふれていた)
1970年代のメキシコの中流家庭に家政婦として住み込みで仕える若い現地人の女性・クレオが主人公だ。
モノクロの、それはそれは美しい映像がクレオの多忙な、しかし充実した日々を、懐かしい絵ハガキを見ているようになぞっていく。
無口で、主人夫妻に叱られても弁解のひとつもいわないけれど、子供たちを起こすときや寝かすときのやさしさと言ったらないし、同僚とは腹蔵なくなんでも話し合っては笑う。
淡々、あまりに淡々と日々の暮しをゆっくり見せられているとかえって不吉な兆候を感じてしまう。
(ここからネタバレです)クレオの微笑ましい恋、妊娠、男の不実、それでも女主人が病院に連れて行ったりして優しい。
その女主人も夫に捨てられ離婚する。 クレオが破水して緊急手術をするときに、せんじつ紹介した
「最初の悪い男」(ミランダ・ジュライ)で、主人公が保育器のなかで生死の境をさまよっている新生児に語りかける言葉を思い出した。
よぼよぼのお爺さんは、客席にいる。 犬の鳴き声、物売りの声や笛、子供たちの歓声、車の音、、BGMの代わりに世界の音が、古い映画館の後ろの方から聴こえる、それが心地いいのだった。
エンドロールは、タイトルが俯瞰だったのに対するように仰視で空をみる、やはり飛行機が飛んで行く。
「大好き」という言葉がキーワードだ。
大好きな人たちが支え合って空を見上げるのだ。
穴があくほど履いたんだと思ってちょっと嬉しかった。
現役時代にお中元などで貰った靴下がまだある。
母が電球にかぶせて繕ってくれたことも思いだした。
落語「子別れ」で亀ちゃんに糸巻きの手伝いをさせるところを最近の噺家はあまりやらないようだ。
懐かしいのになあ。
ドレミさんの書道展を拝見してからシネ・スイッチで映画「ローマ」を観た。
ネットでしか観られないのかと諦めていたら映画館でもやっていた。
タイトルに写される床、ざ~っと水が流れてお風呂に誰か入っているのかなあ、などと思っているとその水がだんだん多くなってきて、ご~つ、飛行機が横切るから、あ、屋外なんだと分かる。
それにしても意味深な飛行機の映像なのだ。
1970年代のメキシコの中流家庭に家政婦として住み込みで仕える若い現地人の女性・クレオが主人公だ。
モノクロの、それはそれは美しい映像がクレオの多忙な、しかし充実した日々を、懐かしい絵ハガキを見ているようになぞっていく。
無口で、主人夫妻に叱られても弁解のひとつもいわないけれど、子供たちを起こすときや寝かすときのやさしさと言ったらないし、同僚とは腹蔵なくなんでも話し合っては笑う。
淡々、あまりに淡々と日々の暮しをゆっくり見せられているとかえって不吉な兆候を感じてしまう。
(ここからネタバレです)クレオの微笑ましい恋、妊娠、男の不実、それでも女主人が病院に連れて行ったりして優しい。
その女主人も夫に捨てられ離婚する。
「最初の悪い男」(ミランダ・ジュライ)で、主人公が保育器のなかで生死の境をさまよっている新生児に語りかける言葉を思い出した。
どうかこの部屋だけで判断しないで、この部屋だけがこの世界じゃないんだから。世界のほかの場所では、まぶしいお日さまがつやつやした葉っぱに照りつけていたり、雲が何かの形になってまたべつの形になったり、クモの巣が少し破けて、それでもまだ用をなしていたりするの。ミランダ・ジュライの言葉に現れる人生の諸相が「ローマ」の画面に映し出される。
あなたはこれから何か食べたり、くだらないことで笑ったり、徹夜ってどんな感じか知りたくて朝まで起きていたり、苦しいくらい誰かに恋したり、子供を作ったり、迷ったり後悔したり憧れたり秘密を持ったりするの。そして齢をとってよぼよぼのお爺さんになって、長い人生にすっかりくたびれて、そして死ぬ。そうなってはじめてあなたは死ぬの。今じゃなく。
よぼよぼのお爺さんは、客席にいる。
エンドロールは、タイトルが俯瞰だったのに対するように仰視で空をみる、やはり飛行機が飛んで行く。
「大好き」という言葉がキーワードだ。
大好きな人たちが支え合って空を見上げるのだ。
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doremi730 at 2019-04-17 21:36
昨日はお忙しいなか、稚作品をご覧頂きまして
ありがとうございました。
感謝感謝です!!
本も暫く拝借させて頂きますm(_ _)m
ありがとうございました。
感謝感謝です!!
本も暫く拝借させて頂きますm(_ _)m
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Hana3131H at 2019-04-17 21:57
この映画は新聞で記事を読み、見たいと思ってチェックしていました。が、まだ当地では上映されていません。でも近い将来きっと見ることができる、見よう!と思いました。ありがとうございます。
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saheizi-inokori at 2019-04-17 22:32
> doremi730さん、子供の頃から、書き方は苦手でした。あんな字が書けるって憧れます。
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saheizi-inokori at 2019-04-17 22:34
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takoomesan at 2019-04-18 00:35
この映画の紹介、ありがとう!
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saheizi-inokori at 2019-04-18 06:24
> takoomesanさん、どういたしまして。
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j-garden-hirasato at 2019-04-18 07:12
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平名
at 2019-04-18 07:51
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ローマか、、 ローマの休日も良かったけど同じ白黒で人間の生き方を考える上でいいかも知れません。 「大好き」とか「愛してる」とか日本人は口に出しては云わないでしたね、、
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saheizi-inokori at 2019-04-18 07:54
> j-garden-hirasatoさん、ひさしぶりの銀座、映画館と貿易ビルの行き来だけで帰りました。もう私を惹き付ける魅力は乏しいです。
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saheizi-inokori at 2019-04-18 07:59
> 平名さん、大好きは書いてみたら、あのうるさいコマーシャルで頻発していました。同じ言葉なのにまったくうすっぺらな響き、映画の方はスペイン語で聴きとれなかつたけれど心が伝わりました。
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soymedica at 2019-04-18 12:24
あ、これ見に行くつもりで忘れていました!渋谷、まだやっているかな?
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テイク25
at 2019-04-18 12:54
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観ようか観まいかずっと迷っていたら、地元の映画館での上映は今日が最終日とわかりました。しかも夜、ということで断念します。帰りに一杯、ということが出来ない地域性が理由だなんてみっともないかな。ざんねん。
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saheizi-inokori at 2019-04-18 13:17
> soymedicaさん、きっと満足します、ぜひ!
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saheizi-inokori at 2019-04-18 13:20
> テイク25さん、惜しいな。あまり類のない映画です。
by saheizi-inokori
| 2019-04-17 11:52
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