小説を読む悦び 「最初の悪い男」(ミランダ・ジュライ)
2019年 04月 13日
一週間の過ぎるのがあまりにも早いので、ホーフも汚れず部屋の隅や棚の埃もたまるひまなんかないだろうと、つい大掃除や大洗濯をサボりたくなるがちゃんと汚れているのだ。
それは汗をかいたあとの部屋の空気が違って感じられることが証明している。
心にたまった埃の重さも、落としてみて知られる。
たとえ小さくても感動することで心の埃は落ちて心は軽くなるようだ。 時は誰に対しても同じ速度で流れるけれど、人生のありようは千差万別だ。 小説の女主人公・シュリルは43歳独身、独特の「システム」で「合理的」「快適」に暮らしている。たとえばフライパンからものを食べることで皿をつかわない、物は出来るだけ動かさず、動かしたらすぐに元に戻す。
落ち込んだときも部屋がいつも整理整頓されていたら快適じゃないか。
年の離れた男に片思い、9歳のときに出会って心が通じ合った運命の赤んぼをいつか我が手に取り戻すことを夢みている。 孤独だが安らかな自分の城で満足しているかにみえたシュリルの家に転がり込んできた20歳のクリー、巨乳の美人だが足が臭い、衛生観念はゼロ、教養もない、だらしがない、両親(シュリルの上司)が持て余して「仕事を見つけるまで」と押し付けてきた子なのだ。
窘めようとすると暴力をふるう。
護身術エクササイズのDVDを販売しているシュリルもあっけなくやられてしまい、あっという間にシュリルの城は、めちゃくちゃに壊れてしまう。
シュリルの性的妄想や狂言回しを演じる妙に色っぽいセラピストとの会話などに飽きて、読むのをやめようかと思った。 図書館に返そうと思っていたのに、なんとなくシュリルとクリーの二人から呼ばれたような気がして、もう一度読み始めたら俄かに二人が生きて動き回るではないか。
そして波乱万丈、愛の(奇跡の)物語に突入する。
はたが見たら悲惨ともいうべきカオス、だがそこに人間がほんとうに生きる喜びと苦しみと感動があった。 部屋が汚くたって、他人が何と言おうが、規則正しくなくっても、ほんとの現実世界に自分をさらけ出して、自分もその巨大な不可解な世界の一員となってこそ、「生きる」ということなのだ。
妄想のセックスよりリアルなそれ、いかに苦渋に満ちていようとも。
母であることの喜び(苦しみ)!
文字のなかから起き上がって命を得たシュリルとクリーを知った。
図書館に返さなくてよかった。
小説を読む悦びとはそこに書かれた人物が命を得て自分の知り合いの一人になることではないだろうか。
それは汗をかいたあとの部屋の空気が違って感じられることが証明している。
心にたまった埃の重さも、落としてみて知られる。
たとえ小さくても感動することで心の埃は落ちて心は軽くなるようだ。
落ち込んだときも部屋がいつも整理整頓されていたら快適じゃないか。
年の離れた男に片思い、9歳のときに出会って心が通じ合った運命の赤んぼをいつか我が手に取り戻すことを夢みている。
窘めようとすると暴力をふるう。
護身術エクササイズのDVDを販売しているシュリルもあっけなくやられてしまい、あっという間にシュリルの城は、めちゃくちゃに壊れてしまう。
シュリルの性的妄想や狂言回しを演じる妙に色っぽいセラピストとの会話などに飽きて、読むのをやめようかと思った。
そして波乱万丈、愛の(奇跡の)物語に突入する。
はたが見たら悲惨ともいうべきカオス、だがそこに人間がほんとうに生きる喜びと苦しみと感動があった。
妄想のセックスよりリアルなそれ、いかに苦渋に満ちていようとも。
母であることの喜び(苦しみ)!
文字のなかから起き上がって命を得たシュリルとクリーを知った。
図書館に返さなくてよかった。
小説を読む悦びとはそこに書かれた人物が命を得て自分の知り合いの一人になることではないだろうか。
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jarippe at 2019-04-13 18:17
生きるって 自然の事なんでしょうねー
環境をよくするとか美味しいものを食べるとか
綺麗な姿になるとか欲得徳とかって後付けで
生き物の原点に戻りたくないけど考えてもいいような・・・・・
環境をよくするとか美味しいものを食べるとか
綺麗な姿になるとか欲得徳とかって後付けで
生き物の原点に戻りたくないけど考えてもいいような・・・・・
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saheizi-inokori at 2019-04-13 18:21
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たま
at 2019-04-13 22:07
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saheizi-inokori at 2019-04-13 22:14
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j-garden-hirasato at 2019-04-14 06:08
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saheizi-inokori at 2019-04-14 07:39
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urontei at 2019-04-14 07:53
面白そうな小説ですね。読んでみようかな。
いったん断念した本を再び開くと、文章が水のようにスーッと入ってくる時ってありますよね。
でもその逆もあって、毎年春先になると吉田健一の 〔時間〕 を開くのですが、これはもう五年越し、何度読んでもちっとも頭に入らない。今年も断念しました (笑)
いったん断念した本を再び開くと、文章が水のようにスーッと入ってくる時ってありますよね。
でもその逆もあって、毎年春先になると吉田健一の 〔時間〕 を開くのですが、これはもう五年越し、何度読んでもちっとも頭に入らない。今年も断念しました (笑)
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saheizi-inokori at 2019-04-14 09:44
> uronteiさん、吉田健一はほんとに名文なのか、疑問に思うような文章がありますね。
食い物とか旅の話ならついていけるけれど、難解な批評には私もお手上げです。
分かっている人向けの文章なのかもしれない。
食い物とか旅の話ならついていけるけれど、難解な批評には私もお手上げです。
分かっている人向けの文章なのかもしれない。
by saheizi-inokori
| 2019-04-13 10:55
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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Comments(8)