裏からみた寄席 「新宿末広亭のネタ帳」(長井好弘)
2019年 03月 23日
それでいいのだ、春よゆっくりやって来い。
シエービングクリームを塗りたくってカミソリを滑らす、この気分は電気カミソリでは味わえない。
寝坊なサンチが起きてきて、足に飛びついてオハヨウ。
おもちゃの引っ張りっこをして遊んでやる。
冒頭、志ん朝最期の高座10日間の様子の実況中継を読むと、兵どもが入れ替わり立ち替わり彷彿してもうイケマセン。
こんなもの見せられたら、落語がますます好きにならないことなどあろうはずがありません。
末廣亭はね、骨がありますよ。フリの客、男性の一人客がけっこう多いですからね、何でも笑ってくれる日があるかと思えば、何をやってもダメな日がある。いつもボクシングやレスリングの試合に臨むような気持で上がっています。派手な着物と、変なヒゲがアタシのユニフォーム。この姿で、いつもお客さんときびしい勝負をしているのです。と言うのを読むと、あの日の僕、がら空きの桟敷で足を投げ出してガラケーのメールをチエックしていて「お客さん、ずいぶん度胸がありますね」といじられた僕を思いだす(寿輔は客いじりが特技)。
さん喬が世間の定評である「人情噺のさん喬」というより、「滑稽落語のさん喬」と呼んでくれと自ら言うと、そうだそうだと相槌を打って、「棒鱈」をまた聴きたくなる。
どの噺家も師匠の思い出とともに生きているような気配もあって、羨ましいようでもある。
その思い出には厳しい稽古とか躾の噺もあるけれど、ずいぶんおかしな話もある。
一朝の話から、
柳朝とぼくと師弟で旅に出て、温泉旅館の露天風呂に入ったんです。その露天風呂が、境はあるけど、もぐれば女湯のほうへ行けるんですよ。「じゃ、オレ行ってくるよ」って柳朝がすぐにもぐって行ったんです。しばらくして顔を真っ赤にして戻ってきたんですが、「ダメだダメだ、ババアばっか」って。そしたら、そばでお湯につかっていた初老の紳士が「すみません、うちの家内なんですが」。もう二人して平謝りですよ。これは僕もじかに聞いたことがあるような気がする。
アスペクト
私も読んでみたいです これから図書館に行くのですが・・・
多分ないよね
せっかちな人は失敗も有ります・・・(私です。)
mita2637
一度、寿輔がいじった客が怒り、出て行ってしまった事もありましたっけ。
あの建物の風情が何とも言えません。
トイレに行くとき土間の通路で夫婦漫才コンビが喧嘩して奥さんが泣いていたのですが、そのあとの高座で能天気に明るくやっていたのが忘れられません。