裏からみた寄席 「新宿末広亭のネタ帳」(長井好弘)

きのうの暖かさから一転、窓ガラスが曇るような寒気のぶり返し、きょうは開花も足踏みだ。
それでいいのだ、春よゆっくりやって来い。
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シーツなどの洗濯や大掃除も明日におくって、けさは久しぶりにカミソリで髭を剃る。
シエービングクリームを塗りたくってカミソリを滑らす、この気分は電気カミソリでは味わえない。
寝坊なサンチが起きてきて、足に飛びついてオハヨウ。
おもちゃの引っ張りっこをして遊んでやる。
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読みたい本がいろいろあって、読む時間がなくなり(いろんなことをやるのに時間がかかる)速度も遅くなったので、楽に読めそうな本を後にして面倒くさそうなのから片付けようと思っていたが、、ついつい表紙と裏表紙の魅力に負けて読んでしまった、楽に読めそうで楽に読めた本。
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裏表紙は
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末廣亭で噺家たちが演じた演目(ネタ)を前座が記録しておくネタ帳7年分をタテヨコ斜めから分析してみせる。
冒頭、志ん朝最期の高座10日間の様子の実況中継を読むと、兵どもが入れ替わり立ち替わり彷彿してもうイケマセン。
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単にネタ帳のデータを分析するだけでなく、ネタ帳を書く前座経験者の一之輔や夢吉に裏話を訊いたり、寄席によく出る寿輔、さん喬、権太楼、雲助、市馬、扇橋(ああ、もういない!)、志ん輔、小遊三、桃太郎、平治(今の文治)、鯉昇、一朝に、それぞれが良くやる噺についての思いなどを訊きながら、噺家の横顔を浮き彫りにする。
こんなもの見せられたら、落語がますます好きにならないことなどあろうはずがありません。
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寿輔が
末廣亭はね、骨がありますよ。フリの客、男性の一人客がけっこう多いですからね、何でも笑ってくれる日があるかと思えば、何をやってもダメな日がある。いつもボクシングやレスリングの試合に臨むような気持で上がっています。派手な着物と、変なヒゲがアタシのユニフォーム。この姿で、いつもお客さんときびしい勝負をしているのです。
と言うのを読むと、あの日の僕、がら空きの桟敷で足を投げ出してガラケーのメールをチエックしていて「お客さん、ずいぶん度胸がありますね」といじられた僕を思いだす(寿輔は客いじりが特技)。

さん喬が世間の定評である「人情噺のさん喬」というより、「滑稽落語のさん喬」と呼んでくれと自ら言うと、そうだそうだと相槌を打って、「棒鱈」をまた聴きたくなる。
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一朝が、毎朝起きるとどんなネタでもいいからまず一席稽古をしているけれど、そんな姿を恥ずかしいから弟子には見せないと語ると、そうだろうなあと粋で達者な高座を思い納得もする。

どの噺家も師匠の思い出とともに生きているような気配もあって、羨ましいようでもある。
その思い出には厳しい稽古とか躾の噺もあるけれど、ずいぶんおかしな話もある。
一朝の話から、
柳朝とぼくと師弟で旅に出て、温泉旅館の露天風呂に入ったんです。その露天風呂が、境はあるけど、もぐれば女湯のほうへ行けるんですよ。「じゃ、オレ行ってくるよ」って柳朝がすぐにもぐって行ったんです。しばらくして顔を真っ赤にして戻ってきたんですが、「ダメだダメだ、ババアばっか」って。そしたら、そばでお湯につかっていた初老の紳士が「すみません、うちの家内なんですが」。もう二人して平謝りですよ。
これは僕もじかに聞いたことがあるような気がする。
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「寄席ってどんなところなの?どんな人がどんな噺をしてるの?」丸わかりの寄席入門だ。

アスペクト

Commented by jarippe at 2019-03-23 13:30
この本を脇に置いて難しい本からというわけにはいかないでしょうねー
私も読んでみたいです これから図書館に行くのですが・・・
多分ないよね  
Commented by saheizi-inokori at 2019-03-23 16:39
> jarippeさん、取り寄せかな。私は友人に借りました。
Commented by mita2637 at 2019-03-23 16:51
こんばんは・・・本がお好きなようですが、今まで沢山の本を読まれたこと事でしょう…(#^^#)身の周りのことはゆっくりで良いのではないでしょうか?
せっかちな人は失敗も有ります・・・(私です。)

     mita2637
Commented by saheizi-inokori at 2019-03-23 21:20
> mita2637さん、おっしゃる通り!
ゆっくり生きたいなあ。
Commented by hisako-baaba at 2019-03-24 05:42
寄席行きたかったです。
人生忙しすぎた。
YouTubeで我慢です。
Commented by saheizi-inokori at 2019-03-24 06:04
> hisako-baabaさん、寄席に行かなくても、はるかにいろんなことをされてきた充実の人生ではないですか。
Commented by j-garden-hirasato at 2019-03-24 06:10
「噺家の横顔を浮き彫りにする。」
落語好きには堪らない本ですね。

長野は今朝、また雪化粧です。
そんなには降らないようですが…。
なかなか春本番にならないです(涙)。
Commented by saheizi-inokori at 2019-03-24 06:21
> j-garden-hirasatoさん、昔は4月になっても舗装のない道がぬかるんでいたような気がします。乾くと嬉しかったけど、風がふくと土埃や牛馬の糞が飛びました。
Commented by maru33340 at 2019-03-24 06:33
僕もこの本読んだことあります。
記事を拝見していて益々寄席に行きたくなりました。
まもなく思い立てば寄席に行ける日が近づいて来ました。
楽しみです。
Commented by saheizi-inokori at 2019-03-24 08:09
> maru33340さん、思い立てば行けるのは楽しみですが、なかなか行けないところを逃げ出して行ったことが、とても懐かしいです。
Commented by kanekatu at 2019-03-24 11:54
末廣亭は生まれて初めて行った寄席で、一番多く通った寄席でもあります。嘗ては仲入りになると売店のオバサンが篭に飴や煎餅を入れて売り歩いていました。下手の前方の席だと、時々トイレの匂いが流れてきました。
一度、寿輔がいじった客が怒り、出て行ってしまった事もありましたっけ。
あの建物の風情が何とも言えません。
Commented by saheizi-inokori at 2019-03-24 13:25
> kanekatuさん、私は根津にあった(と思う)寄席が最初かもしれません。
トイレに行くとき土間の通路で夫婦漫才コンビが喧嘩して奥さんが泣いていたのですが、そのあとの高座で能天気に明るくやっていたのが忘れられません。

Commented by ikuohasegawa at 2019-03-25 07:13
紹介ありがとうございます。読みます。ポチッとしました。
Commented by saheizi-inokori at 2019-03-25 09:33
> ikuohasegawaさん、権ちゃんも語ります。
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by saheizi-inokori | 2019-03-23 11:48 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori