一茶はルノーと仲がいい ルノー・ガニュー メモリアル・コンサート

小学校の友達、池田充君から恵比寿日仏会館のコンサートへの招待状が届いた。
昨年亡くなったフランスの作曲家、ルノー・ガニューを偲ぶメモリアルコンサートだ。
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(雲ひとつない恵比寿)

ガニューは、信濃町野尻湖に来て一茶の俳句を知り、ジャコメッテイを思わせる、無駄をそぎおとした世界に魅せられて、句に合わせた曲を作った。
また、その地に住む池田君の一茶の句を描いたみごとな版画に接し、その版画にも曲をつけた。
酒飲みの音楽家は面倒見のよい池田君と親交を深めずいぶん世話にもなつたようだ(ピアノの末高明美さんの話)。

会場について池田君と久闊を叙す。
病気と聞いていたのに元気そうでほつとする。
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日本語、フランス語それぞれ二回づつ句を読んでピアノを弾く。
フランス語の響きが詩的だ。
一句はぴたり一分(残響を除く)とガニューの言葉が遺されている。
山寺や 雪の底なる 鐘の声
先日みた狂言「鐘の音」の鎌倉の極楽寺の鐘の音に負けないぞ。
三弦(しゃみせん)の ばちで掃きやる 霰かな
一番に 乙鳥(つばめ)のくぐる 茅の輪かな
赤馬の 鼻で吹きたる 蛍かな
これと次の句は池田君の版画に作曲したものだ。
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ゆう然として 山を見る 蛙かな
俳句のもつ視覚的聴覚的イメージ、さらに思弁的イメージを音と絵で表し、その絵(版画)にまた音をつける、ややこしくも楽しい曼荼羅。
しずかさや 湖水の底の 雲の峰
ひぐらしや 急に明るき 湖の方
しばらくは 湖いっぱいの 玉火かな
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ひぐらしや、の句ではピアニストが小さな鈴をかそけく鳴らす。
中勘助が、野尻湖の弁天島宇賀神社に籠って「銀の匙」を構想したとか書いたとか、池田君とモーターボートで神社に行ったのは数年前のことだ。
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間奏曲「宇賀神社」を聴き、日本の歌メドレ―(フルート、フアゴット、ピアノ)で「浜辺の歌」「七つの子」「故郷」と畳みかけられると涙腺が緩んでくる。
70年前からのいろいろ忘れられない思い出のある野尻湖を詠んだ句と音楽と絵が渾然となっているのだもの。
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池田君と長野での再会を約して帰った。
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Commented by テイク25 at 2019-01-15 13:20 x
心から溢れ出てしまいそうな幸福感に浸った時間・・・・・
趣きのあるコンサートですね。
Commented by saheizi-inokori at 2019-01-15 13:49
> テイク25さん、会場で思いがけない先輩に遭遇したのも驚きでした。
一茶の力おそるべし!
Commented by hisako-baaba at 2019-01-15 13:59
趣き深いコンサートに行かれて、羨ましいです。
さぞかし皆さん の感動を呼んだことでしょう。

もう白梅が咲いているのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2019-01-15 14:13
> hisako-baabaさん。肩の凝らないコンサートでしたよ。
近所も背の高い梅の木、お日様に近いから日当たりもいいのかな。
Commented by jarippe at 2019-01-15 17:06
なんとも不思議な所に入り込みそうです
一茶の句+池田君さんの版画+フランス語+音楽

野尻湖はロマンを感じていたところです
Commented by saheizi-inokori at 2019-01-15 17:31
> jarippeさん、ナウマン象とか、ね。
Commented by takoomesan at 2019-01-15 23:29
ええ時間でしたねぇ〜
Commented by saheizi-inokori at 2019-01-15 23:38
> takoomesanさん、はい、別世界に遊んだ半日でした。
Commented by j-garden-hirasato at 2019-01-16 06:24
ルノー・ガニュー、
知りませんでした。
句に合わせた曲、
聞いてみたくなりました。
Commented by at 2019-01-16 06:34 x
若者には違ういっさがダンス受けしてるようですが。
一茶は人を惹きつけますね、藤沢周平、金子兜太・・・
近代人の先駆けとして苦悩する生活者としての面を持つからでしょうか?

Commented by saheizi-inokori at 2019-01-16 06:41
> j-garden-hirasatoさん、他にもソナタを聞きましたが、これは難解な現代音楽でした。
Commented by saheizi-inokori at 2019-01-16 06:49
> 福さん、嫌らしさや欲望を含めて人間臭く、自然や小動物への眼差しも親しみやすいから幅広いファンがいるのではないでしようか。
大分前に似たような企てに参加したとき、フランス人は芭蕉に劣らない一茶愛好者がいる、アニミズムに親近感を抱くのだというような話を聞いたような記憶があります。
Commented by tona at 2019-01-16 09:00 x
こんな世にも稀な芸術があるのですね。
saheiziさんがだんだん別世界の人になっていくような。
Commented by saheizi-inokori at 2019-01-16 09:07
> tonaさん、橋掛かりを歩いて、ですか?
幽霊も悪くないなあ。
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by saheizi-inokori | 2019-01-15 10:16 | 能・芝居・音楽 | Trackback | Comments(14)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


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