二者択一

大人になるなんてただの幻想だ。結局のところ、本当の意味で大人になる人間などいない気がする。背が伸びて毛深くなるだけだ。
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吉田健一は旅、とくに列車のなかで本を読むことを諌めていた。
せつかく、訪れている土地、その時空間と異なるところに心を奪われるくらいバカげたことはない、とか。
異なる奪われないような本なら読むだけ無駄だと。
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今僕は総武線のベンチシートに座ってミステリーを読んでいる。
冒頭の文章はその中ほどに出てくる主人公のことばだ。
房総の友人のお誘いでかみさんと出かけるところ。

本を読まなくても懐かしい景色を眺めて、今よりもっと子供大人だった頃のことを、あれこれ思いだしていたり、待ち構える「おもてなし」のことを楽しみにしているのもいいのだけれど、
真ん中あたりにさしかかって、ますます錯綜するミステリの魅力に抗いがたい。
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人みな、多忙を極める年の瀬に、なんとゼイタクな二者択一ではあるまいか。

Commented by takoomesan at 2018-12-26 17:33
何所に行っても本を持って行くんやけど、
何時もついつい外の風景に目を取られてしまいます。
Commented by saheizi-inokori at 2018-12-26 19:12
> takoomesanさん、今帰りのバス、ゆっくり読みました。外は暗い。
Commented by mother-of-pearl at 2018-12-29 03:25
ある事情で、本当に本が読めなくなってしまったのが約20年前。
今は乗り物でも外の景色を眺めるのが慣いになっていましたが、
今日の記事を拝読してなんだか救われました。
今日はルクセンブルクへの道を眺め続けていました。落葉した樹々の鳥の巣や宿り木がたくさん見えました。
Commented by saheizi-inokori at 2018-12-29 06:40
> mother-of-pearlさん、木々や鳥たちの佇まいの方が活字より多くの何かを語ることって多いのではありませんか。
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by saheizi-inokori | 2018-12-26 10:07 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori