暗い海の底から、晴れた空を眺めやる
2018年 11月 22日
この前紹介したのは、「ぶらり両国」「新聞旧聞日本橋」「千住、幻のちまた」「つくづく築地」までの表題だったが、それに続くのが「ぼちぼち谷中」「たまには多摩へ」「しみじみ新宿」「両国ご供養」、とぼけた語呂合わせの詩人・小沢信男の「東京骨灰紀行」だ。 2001年から9年まで、8年かけて東京を歩いて、近代史の下層に生き虐げられた者たちの墓がどんな佇まいの街にあるのか、どんな有徳の士たちが彼らを弔ったのかを、軽妙にして深遠な文章にしてくれた筆者は、解説の黒川創によれば、日本敗戦をはさむ10代後半から20代前半、死神のように彼に取りつく結核の療養体験で
その「韜晦」の見本が、小沢自身のあとがきにある。
だからどこにも抵抗を感じないで読んで行けて、僕も同じように彼の跡をうろつきたくなったのだ。
(夕方、右上に月が)
きのうは、小満んの独演会があったのに、すっかり忘れていた(切符はとってない)。
それでいいのだ、このところ、いささかウロツキ過剰だ。
図書館に予約した本が一挙に三冊到着、在庫が増えるばかり。
今日は読みかけのミステリを読んで過ごそう。 水道事業民営化に反対しよう。
たびたびの休学と復学、入院、そして退校、同世代の者らが次つぎと彼を抜き去り、はるか先へと消えていく、死をつねに意識しながら、それを見送る経験は、孤独のみならず、他者への鋭い観察眼を、彼の内側につくったろう。暗い海の底から、晴れた空を眺めやる。とあって、なるほどそういうことだったのかと納得させる。
そうした老成した元シティボーイならでは、本書は、対象との距離と韜晦をよろしく保って、語りだす。
けんそんでも自慢でもなく私は、米の生る木をろくに知らず、鰯の一匹掬いもせず、火打石で火がおこせず、ましてや井戸を掘ったおぼえもない。つまり生存のための労働が、なにひとつできないままに、八十年も生きのびてきました。非力なくせに先輩にさからい後輩をいじめ、憎まれながら世の片隅にはばかってきたのかもしれない。どうしてか。生まれてこのかた、ずうーっと東京に暮らしてきたおかげでしょうね。都会というところは、はんぱなでくのぼうどもが、けっこう肩で風きってうろついていられる。まことに、どうも。生れ育ちこそ田舎者の僕にも前半はよくあてはまる、「はんぱなでくのぼう」というのも、肩で風は切ってないが「うろついている」ところも。
だからどこにも抵抗を感じないで読んで行けて、僕も同じように彼の跡をうろつきたくなったのだ。
膨大な数にのぼる、この街の亡き者たち、つまり人民の歴史の街頭行列に立ちまじり、現世の東京をにらみ返すがごとく(黒川解説)というほどの凄味は及びもつかないが。
きのうは、小満んの独演会があったのに、すっかり忘れていた(切符はとってない)。
それでいいのだ、このところ、いささかウロツキ過剰だ。
図書館に予約した本が一挙に三冊到着、在庫が増えるばかり。
今日は読みかけのミステリを読んで過ごそう。
Commented
by
そらぽん
at 2018-11-22 17:45
x
水道民営化法案は7月5日衆院で可決。今参院で「審議中」。
この怖っそろしい案が、国民に知られていないのは
メディアが正気で報道しないからでしょうか
むちゃくちゃですわ 日本に蠢く狂気にぞっとします
この怖っそろしい案が、国民に知られていないのは
メディアが正気で報道しないからでしょうか
むちゃくちゃですわ 日本に蠢く狂気にぞっとします
0
Commented
by
saheizi-inokori at 2018-11-22 22:34
> そらぽんさん、ちょっと前に東京新聞が書いてましたがテレビでも見たことがないです。
アメリカの要求なんでしようかね。
アメリカの要求なんでしようかね。
Commented
by
sweetmitsuki at 2018-11-23 05:49
現在水道局が持っている貯水ダムに水力発電所をどんどん作れば、脱原発できる上に発電による収入で水道料金は逆に安くなる、そのためにも水道事業は民営化すべき、という記事を以前どこかで読んだのですが、現実はそんなに甘くはないのでしょう。
こんな時こそ政治力が必要なのですが、信用できる政治家がまったくいません。
それから、小泉進次郎による農政民営化という動きもあるようで、こちらも要チェックですね。
こんな時こそ政治力が必要なのですが、信用できる政治家がまったくいません。
それから、小泉進次郎による農政民営化という動きもあるようで、こちらも要チェックですね。
Commented
by
j-garden-hirasato at 2018-11-23 06:19
Commented
by
saheizi-inokori at 2018-11-23 08:29
Commented
by
saheizi-inokori at 2018-11-23 08:31
Commented
by
ikuohasegawa at 2018-11-24 16:04
小満んをお忘れとは、少し残念でしょう?
Commented
by
saheizi-inokori at 2018-11-24 17:02
> ikuohasegawaさん、しかも行った人によると奇跡的に素晴らしかった由、逃がした魚は大きい!
by saheizi-inokori
| 2018-11-22 10:46
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
Trackback
|
Comments(8)