悪かったねサンチ

おとといは「はじめ」で、飲みすぎてしまった。
カミさんが神戸の友人に会いに、彼女としては珍しい旅にでているので、歌舞伎の後、いったん帰宅してサンチの餌をやったりしてから、外に出たら待っていたように「はじめ」の近くに行くバスが来たので乗ってしまった。

家にはサンチが一人だから、今夜は軽く食べて、はやく帰ってやろうと思った。
それで隅のほうで静かに食って（飲んで）いたのだが、隣の男、その男とは顔なじみであっても話をしたことはあまりなかったのに、あまり黙っているのも気まずいので、考えた末に（こういのって考えてやるもんじゃないのにね）「ゴーンがつかまっちゃいましたね」といったことから、ゴーンのことはそっちのけでいろいろ話しだして、とくに先般の会津ぶらり旅のことを言ったら、「いままで居残りさんは規律正しい人で、そんなことをする人とは思えなかった」などというものだから、なぜか嬉しくなって「規律正しくないこと」をしてしまったのだ。
誰にせよ今まで距離があるように思えた人との間の垣根が取れるというのは嬉しいものだ、とはいえ子供みたいな爺だった。
お銚子お代わりのときに「ペースが速いですねえ」、訊いてみたら４本目、じゃあもう少しゆっくり行きましょう、なんていううちに別の女性が来店、お囃子に加わり、これがまた調子がいいので、もう面白くてたまらなくなって、こんどはビール（ここのビールはウマいのがキズ）を、こんどで最後を連発しながらずいぶんやってしまった。
もう一人の若い男が、落語の「もう半分」ですね、なんていうから消えそうになった火に油だった。
というわけで、１０時過ぎ（始めたのは６時）に家に帰るといつもなら飛びついて迎えるサンチが出てこない、「サンチ‼」呼んでも出てこない。
靴をぬぐのももどかしく入ってみると、カミさんのベッドに寝ていて、眠そうに僕の顔を仰いで、また寝てしまう。
こんなのは初めてだから、あちこち触ったり撫でたりしてみたが、とくだん異常は感じられない。
僕も歯を磨いたり薬を飲んだりさしたり、あれこれやって寝てしまったが、カミさんが居間にいるときは僕のベッドの裾にやってくるのに、呼んでも来ないまま、朝を迎えた。

朝は元気そうにじゃれついてきたので一安心だったが、僕の方が頭どんより、ぐずぐず洗濯をしてトーストとヨーグルトでごまかして（ミニトマトをつまんで）、ストレッチは入り口でやめる。
はしゃいで楽しく飲んでいるときは、時間よ止まれと思うのだが、過ぎると「なにかみっともないことを言わなかったか」と不安になる。
手放しではしゃいだことが恥ずかしいような気持になる、いろいろチエックしてみても楽しかった（周りの人も）のに、なんだか後悔する気持ちがある、こんなことは珍しい。
サンチに対する後ろめたさがあるのだ。
温かくなったので、散歩に行くかと訊くと飛び上がって喜ぶサンチを連れて、解凍しておいたロールパンをそのままに、ワンちゃんＯＫのカフエでランチ、二日酔いでもこれだけ食えれば問題ない。待ってろよといってトイレに行ってる間、一歩も動かず待っている。
リードを離すとそこで止まって待ち、座って「おいで」というと嬉しそうに駆けてくる。
可愛くてたまらなくて、昔より駆ける速度が遅くなったのが寂しい。
駒沢公園どころか都立大学前だって平気で歩いた（歩かせた）が、今は半分は抱っこしてやる。
抱っこ、というと止まって座るような抱きやすい格好をするから本人も抱っこして欲しくなるときがあるのだろう。
夕方、リハビリに行って、そこは「はじめ」のすぐ近くなのだが、まっすぐ帰る。
今日は昨日の分も合わせたように狂気乱舞して、ソフアで新聞を読ませないようにじゃれる。
ひとしきりじゃれると玄関に向かい、じっとカミさんの帰りを待つ。
しばらくすると、ふたたび猛然と僕の膝に飛び乗ってじゃれまくる。
又玄関に、、。
タタキとの間の戸を閉めたらようやく諦めた。
外ではほとんど吠えないサンチだが、家ではテレビの映像に反応したり、注意を引き付けるために良く（昔よりずっと）吼える。
なのに昨日は家の中でも一度も吠えなかった。
晩飯は解凍してあったロールパンを開いて炙って、オリーブ油をたらして、有り合わせの菜っ葉を挟んで食う。
キューリは半分を丸かじり、練り梅をつけて。
黒ニンニクひとかけ、ヨーグルトにはナッツとイチジクジャムの汁を。
けさも、チーズを乗せて焼いたトーストにアマニ油を垂らし玉子焼き（半熟）を乗せたところだけが違う。
さあ、温かくなったぞ、サンチィ～！