私たちは右翼の大海原で生きている 「『右翼』の戦後史」(安田浩一)

口の中の違和感はひと頃より落ち着いた(馴れた)ようだが、相変わらず気にならない日はない。
会う人ごとに「いい歯医者しらない?」と尋ねていたら(今の歯医者が悪いというのでなく、セカンドオピニオンをくれる医師という意味)、ある医師を紹介してくれた。
症状や今までの経緯、東京医科歯科大学の先生の向精神薬を使用する心療方法についての不安などについて一時間も話を聴いてくれて、これという治療法はなさそうだったが、自分も東京医科歯科の出身で親しい教授がいるから、その薬の強さなど訊いてあげようという。
二三日して、その医師から電話で医科歯科の○○医師から電話があると思うとのこと、ご丁寧なことで痛み入る。
一週間ほどしたら、○○先生から電話がかかって「薬を使わないやり方もあるから、いちど来院されたし」と明るい声でおっしゃった。
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寒くなるという予報でコートを着て行ったら暑いくらいの寒さ。
若い○○先生、やっぱり明るくはきはきと、薬といっても精神疾患に使う量の十分の一以下だから心配はいらないのだけれど、佐平次さんの気持ちもわかるので薬を使わない「認知行動療法」というのをやりましょう。
毎日の症状とかを記録するだけでも効果がある、といって日記用の用紙をくれて、これを次回(一か月後)に持ってきてください、個性的なのを期待しますよ、と笑った。
口中の保湿のためのゼリーとリンスを売店で買って帰り下さい。
「藁をもつかむ」、藁が一本、藁しべ長者になるといいのだが。
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朝日新聞の社長室で少数派・諸派の立候補者を排除するマスコミの選挙報道を公職選挙法違反として抗議、謝罪を求めたのち、「皇尊弥栄」を三唱後に拳銃自殺した(享年58)、「新」右翼の論客でもあった野村秋介は、右翼を「民族の触角」と表現したそうだ。
時代への感受性と、危機に直面した際の順応性を、野村は火事場の半鐘に喩えた。
弱いものが強いものに抗するための暴力が必要な時はある。だが、一般の人に体を張れということはできない。そのために民族運動家がある。
野村の持論だった。

元々は自由民権運動から生まれた大アジア主義の玄洋社、一殺多生で腐敗した権力者を暗殺した血盟団などの流れを汲む戦前右翼は、神と仰いだ天皇の人間宣言で拠り所を失うが、占領政策の右展開を機に、全国に散開し、あるいは地下に潜っていた者たちが息を吹き返す。
反共、愛国の「大日本愛国党(赤尾敏)」「防共挺身隊」、その多くは鬼畜米英のアメリカに親和的だ。
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赤色革命を恐れ、全国の博徒、テキヤ、愚連隊ほか約20万人を反共の旗のもとに結集させ、左翼のデモや集会を暴力でつぶすために「反共抜刀隊」をつくる。
1951年時の法務大臣・木村篤太郎がたちあげようとし、予算措置も約束、実現しかかるが吉田茂が待ったをかけた。
だが、その流れは、60年安保のデモに対して岸首相が右翼&任侠組織による「アイク歓迎実行委員会」として博徒18000人、テキヤ1万人、旧軍人と宗教関係者1万人、右翼4000人を組織するところにも生きていた(樺美智子さん死亡でアイク訪日が延期されて実施には至らなかった)。
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戦前から戦中戦後にいたる「右翼」の歴史が、具体的な事件の実相も交えて興味深く語られる。

興味深いが不気味な現状、それは
どこにでもいるサラリーマン風の『背広を着た右翼』が、大衆の中に入り、大衆運動を組織して、今日の右傾化、反動化の先兵となっている(堀幸雄「戦後の右翼勢力」)
大衆は「制服の右翼」を恐怖するが『背広を着た右翼」のイデオロギーを受け入れてしまう。「日本会議」、閣僚の大半がその構成員である「日本会議」だ。
元号法制化、教育基本法の改悪、歴史修正主義の教科書採択、、着々と成果をあげて、今は改憲にまっしぐらだ。
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さらに「ネトウヨ」!
マイノリテイ、貧窮者を排除する差別とヘイトの怒号、「弱い者の味方」なる右翼とはまるで逆な無知なる者たち、だが、今は昔からの右翼や権力もネトウヨに近づく。
日本青年会議所(JC)、あの麻生太郎も会頭を務めたことのある若手経営者の組織が、「宇予くん」なる珍妙なキャラクターを使ってツイッターに
中国、韓国は自分たちを棚に上げて、日本だけに文句を言ってきてるど。一言で言うとバカだど、、、日本はこのバカ二国と国交断絶、もしくはミサイル爆撃したほうがいいど。
のような国民感情を煽る戦略を採用した(その後、陳謝して取り消し)。
JCの憲法改正推進委員会によって「憲法改正をはじめとする歴史や愛国心など保守的なことを面白くつぶやく」「対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う」と決定されたという。

「南京大虐殺じゃなくて鶴橋大虐殺を実行しますよ」とヘイトデモでスピーチした女子中学生は、朝鮮総連中央本部に五発の銃弾を撃ち込んだ右翼活動家の娘だった。
内閣府政府広報室が開設している「国政モニター」に「在日韓国人を叩き出せ」「在日の強制退去が必要」「沖縄にいる朝鮮人を内乱罪で取り締まれ」、、などの「国民の意見」が掲載されもする。

かつて野村秋介↑が表現した「民族の触角」は、醜悪な形で安直なポピュリズムに堕した。触角どころか、世間の、いや、国家権力の番犬だ、と筆者は慨嘆する。
これこそが社会の極右化だ。
私たちは右翼の大海原で生きている。
と。
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この皮のトートを下げて医科歯科に行ったのだが、地下鉄の階段でどこかのオバサンが追いかけてきて、トートを引っ張って(おどろいた)、「おしゃれ~!どこで買ったんですか?一目見てすてきだなあ、とおもった」とおっしゃった。
カミさんのをいただいたから、どこで買ったかは知らない。

Commented by kanekatu at 2018-11-13 16:35
右翼が国家権力の番犬だというのは昔からです。戦前に鬼畜米英を叫んでいたのが、戦後になると一転してアメリカ万歳になったのはその典型です。指導者だった者の多くは戦犯を免れ、戦後は文字通りアメリカの手先となりました。
そのくせ、欧米帝国主義からのアジア民族解放なんてスローガンは、とっくにどこかに捨て去っているんですから余計に始末が悪い。
今の右翼はナショナリストでさえないんです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-11-13 17:01
> kanekatuさん、その右翼の大幹部が総理大臣だというのですから!
Commented by そらぽん at 2018-11-14 01:16 x
Bagのこと 森田たま「もめん随筆」に着てた物を引っ張られ
振り返ったら女性連が着物の端を掴んで品定めしてたとあった
そんなのを思い出しました~~  

「騙り右翼」の海で、「国家権力の番犬」に成り下がった
メディアは、いつになったら正業に覚醒するのか 焦燥感。
Commented by saheizi-inokori at 2018-11-14 09:00
> そらぽんさん、近代の独裁は反対党の存在を許す、という「兵士というもの」のなかの記述を思い出します。
東京新聞などはその証明かも知れないけれど、読む人が少ない!ネットばかり。
Commented by テイク25 at 2018-11-14 09:12 x
右翼、というと暴力的、大音響、罵詈雑言を思い浮かべ、要するに権力に楯突くものを排除する手先になっているんだろうという印象しかありません。國體=天皇制を守る、国民は国=天皇のために命を捨てろ、人権は認めないという考えなのかとあやふやに理解しています。

右翼の大海原に生きている身としてこの本を読んでみようと思いました。背広を着た右翼、ワンピース姿の右翼がそこいらにウヨウヨしているのでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2018-11-14 10:03
> テイク25さん、教科書の内容も変わり新聞も読まず、スポーツとスキャンダルに明け暮れると右翼的になるのでしようか。
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by saheizi-inokori | 2018-11-13 14:13 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(6)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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