あの頃の私たちには顔があったわ 瀬川昌治「乾杯!ごきげん映画人生」
2018年 11月 07日
単なる面白おかしい(のは確かだが)エピソードの羅列ではなく、そういうエピソードが生み出された背景、日本の映画がどういう人たちのどんな苦労と努力によって変遷してきたかを説きあかす、日本映画史でもある。
楽しい脱線が多い語りの中には、キング・ヴィダー、チャールズ・ロートン、クラーク・ゲーブル、マーク・へリンジャーなどあちらのお噂も飛び出す。
ヴィダーが「戦争と平和」の戦争シーンでイタリア軍歩兵5千人と騎兵隊8百人を使う噺は読むだけで手に汗握る。
お笑いの公開番組に群れて、芸人とは言えない喜劇タレントのトークに「エーッ!」とか「おー」とかワンパターンの反応しか出来ない巷の若者に、知って欲しい人たちのことばかりなのだ。
「当時もし国民栄誉賞があったら、第一号は(尾上)松之助に贈られたであろう」とキネマ旬報の映画人名辞典に出ているような人々の話。
映画を愛し映画を作る人たちの物語には独特な魅力があるのは、ぎらぎらした個性をチームワークでまとめていく物語だからか。
こういう本を読むといつも感じるのは、礼儀の大切さ、僕の人生で一番ダメだった点だ。
固く結ばれた口元と鋭い眼光に決して挫折しなかった芯の強い男の人生が浮き彫りにされた。
グロリア・スワンソンの「あの頃の私たちには顔があったわ」という名セリフを引いて
それではテレビで育った今の若者たちには顔がないのか?残念ながら私は皆無に近いと言わざるをえない。と自問自答し、その根本的な理由として、
私は彼らの日常生活におけるテンションの欠如をあげたい。言い換えれば緊張感のない日常生活である。そうか、だから僕はテレビやさいきんの映画に出てくる若者の区別がつかないのか。
「ぽんこつ」「次郎長社長と石松社員」「乾杯!ごきげん野郎」「山麓」「馬喰一代」「図々しいやつ」「三等兵親分」「日本暗黒街」「喜劇・急行列車」ほか列車シリーズ、「喜劇・競馬必勝法」「喜劇・大安旅行」ほか旅行シリーズ、「アッと驚く為五郎」「喜劇・男の泣きどころ」ほか喜劇・男シリーズ、「喜劇・夫売ります」「ザ・ドリフターズの カモだ!!御用だ!!」「正義だ!味方だ!全員集合!!」「トルコ行進曲・夢の城」
テレビドラマ、山口百恵・宇津井健の「赤いシリーズ」「スチュワーデス物語」「赤かぶ検事奮戦記]「HOTELシリーズ」「新幹線物語シリーズ」
ほかに舞台演出なども手掛けている。
ごもっともです。
きっとさへいじさんがお好きな本だと、思っていました。
昔下らないと思っていた映画も今から考えると凄いものだった、思えば幸せな時代に生きていたのですね。
騒動にも顔があった思います。