小三治もサンチも笑わせる
2018年 09月 30日
キッチンで食器を洗っているとサンチが入って来ようとする。
めったにやらないことだ、じゃれているのかと思ったがどうも様子がヘンだ。
あ!ピンときて、リビングをみるとスツールの上に大小取り混ぜて大失敗。
いつもは朝一番で「おしっこ」と命じてやらせるのに、けさはルンバのブラシを掃除していてやらなかったのと、汚れたシートを片付けたあとを敷いてなかったから、やつもしそこねたのだろう。
カミさんは怖いから僕に報告、そのあとも僕の後ろにぴたっとついてカミさんを上目遣いでみる、背中を丸めて尻尾はだらり、悪いことだと自覚している。
点眼のときに五分タイマーが鳴るたびに次の薬をさしているのを見おぼえたらしく、隣室で用をしていてタイマーを鳴らせ続けていると吠えて、それでもいかないと隣室まで走って知らせに来る、食事中に急き込むと吠えて後ろに回り込んでどういう訳か耳を舐める、その真剣なようすを見ているとたまさかの粗相も笑いの種になってしまう。
もうだめだと諦めたのに奇跡的に取れたチケット、小三治の出る国立名人会に行った。
前から二列目の真ん中、目の動きなどの表情が迫力たっぷりに見えて、なるほど前の席を取りたがる常連がいるわけだ。
小三治「出来心」
長いマクラ、78歳であることについて強がりや弱音雑感、渥美清が歌った「泣いてたまるか」をさらっと歌って歌詞をなぞって「俺が泣いてもなんにもでない、でねえんだよな」としんみり。
以前のグルグル同じことばかり繰り返すマクラよりはマシだったが、どうも調子がでないらしく「あたしはネタだし(あらかじめ話が決まっている)は嫌い、自由がない」「今日はダメ、はっきりいって今日は皆さん不運です」と言って噺にはいった。
間抜けな泥棒初心者の兄貴とのとぼけたやり取りを聴いていると、やっぱり思い出すのは喜多八、師匠に弟子の面影が遺っているなんて逆だぜ。
間抜け泥が貧乏長屋に入ったところが、あるのはフンドシ一丁が干されているだけ、鍋におじやの残り物があったのを「うめえ、カツブシ使ってる」とむしゃむしゃやってると主が帰宅、泥棒が入った痕跡をみて、しめた、これを使って家賃を払えない申し訳にしようと、大家に「4か月分の家賃を持っていかれた」「それじゃ、しょうがないなあ」まではよかったが、「そのほかに何をとられた」と帳面を取り出す。
つじつまを合わせるために「夜具は?」「そうそう夜具、布団をとられました」「どんな布団だ」「へえ、綿が入っている」「表はどうなんだ」「大家さんの干しているようなの」「花色木綿だな」「そうそう花色木綿」、それからはタンスも花色木綿、羽二重の羽織も花色木綿、「帯は」「そうそうハダカ」「博多だろう」、、。
とぼけたやり取りが延々、長すぎる(50分)、明らかに小三治の不調なのだが、そこは名人と言うべきか不調なりにその間におかしさがあって、退屈はしない。
笑わせようなんて気持ちはこれっぽちもないからおかしいのだ。
サンチという名前は小三治からとったのだ。
初めて見たときに小三治の四角な顔に似ていたし。
小三治小三治!って呼びにくいので、サンチにした(小三治から「サンチさんへ」と署名入りの「ま・く・ら」「ば・い・く」を持ってます)。
どちらも年を取るとたまには失敗・ウマくいかないこともあらあな。
ウマくいかなくてもおかしいご両人だ。
きのうの一番は、はん治「禁酒番屋」だった。
なんども聴いて暗記できそうな噺なのに、その先の展開を聴きたい気持ちにさせるような語り口、酒屋のスタッフや番小屋の小役人の造型、酒好きの近藤ウジの飲みっぷり、落語の楽しさを満喫した。
前トリの今松「質屋蔵」も良かった。
さいごの蔵の中のお化け、相撲の行司と天神様の風格が好い。
質物には質に入れる人たちの恨みが籠っている、それは大金持ちの知らない恨みつらみだ。
その実例を番頭に想像で事細かに話して聞かせる。
それだけ「貧しい」人たちの苦労を知っている質屋の主人だからこそ(であるのに)熊さんが驚くようないい酒の樽やウマイ漬物の樽をいくつも常備できるのだ。
ほかに、三之助「黄金の大黒」、どこといって文句のつけようがないちゃんとした芸なのに、イマイチ湧かないのは客席が温まっていなかったからか。
𠮷窓「里帰り」、言い間違えが多くちゃんとさいごまで言葉を完成させない、どうしたもんだ。
正楽「紙切り」、「相合傘」「刀の手入れをしている小三治師匠」「秋祭り」、夏祭りと同じですと師匠、「お月見」「藤娘」「薪能」、どうしよう、わっからな~い、とつぶやきながら。
帰りに赤ひげ先生の所によったら「リハビリは土曜日二時まで」と言いながら、看護師さんがウオーターべッドをやってくれた。
めったにやらないことだ、じゃれているのかと思ったがどうも様子がヘンだ。
あ!ピンときて、リビングをみるとスツールの上に大小取り混ぜて大失敗。
いつもは朝一番で「おしっこ」と命じてやらせるのに、けさはルンバのブラシを掃除していてやらなかったのと、汚れたシートを片付けたあとを敷いてなかったから、やつもしそこねたのだろう。
カミさんは怖いから僕に報告、そのあとも僕の後ろにぴたっとついてカミさんを上目遣いでみる、背中を丸めて尻尾はだらり、悪いことだと自覚している。
前から二列目の真ん中、目の動きなどの表情が迫力たっぷりに見えて、なるほど前の席を取りたがる常連がいるわけだ。
小三治「出来心」
長いマクラ、78歳であることについて強がりや弱音雑感、渥美清が歌った「泣いてたまるか」をさらっと歌って歌詞をなぞって「俺が泣いてもなんにもでない、でねえんだよな」としんみり。
以前のグルグル同じことばかり繰り返すマクラよりはマシだったが、どうも調子がでないらしく「あたしはネタだし(あらかじめ話が決まっている)は嫌い、自由がない」「今日はダメ、はっきりいって今日は皆さん不運です」と言って噺にはいった。
間抜けな泥棒初心者の兄貴とのとぼけたやり取りを聴いていると、やっぱり思い出すのは喜多八、師匠に弟子の面影が遺っているなんて逆だぜ。
間抜け泥が貧乏長屋に入ったところが、あるのはフンドシ一丁が干されているだけ、鍋におじやの残り物があったのを「うめえ、カツブシ使ってる」とむしゃむしゃやってると主が帰宅、泥棒が入った痕跡をみて、しめた、これを使って家賃を払えない申し訳にしようと、大家に「4か月分の家賃を持っていかれた」「それじゃ、しょうがないなあ」まではよかったが、「そのほかに何をとられた」と帳面を取り出す。
つじつまを合わせるために「夜具は?」「そうそう夜具、布団をとられました」「どんな布団だ」「へえ、綿が入っている」「表はどうなんだ」「大家さんの干しているようなの」「花色木綿だな」「そうそう花色木綿」、それからはタンスも花色木綿、羽二重の羽織も花色木綿、「帯は」「そうそうハダカ」「博多だろう」、、。
とぼけたやり取りが延々、長すぎる(50分)、明らかに小三治の不調なのだが、そこは名人と言うべきか不調なりにその間におかしさがあって、退屈はしない。
笑わせようなんて気持ちはこれっぽちもないからおかしいのだ。
サンチという名前は小三治からとったのだ。
初めて見たときに小三治の四角な顔に似ていたし。
小三治小三治!って呼びにくいので、サンチにした(小三治から「サンチさんへ」と署名入りの「ま・く・ら」「ば・い・く」を持ってます)。
どちらも年を取るとたまには失敗・ウマくいかないこともあらあな。
ウマくいかなくてもおかしいご両人だ。
なんども聴いて暗記できそうな噺なのに、その先の展開を聴きたい気持ちにさせるような語り口、酒屋のスタッフや番小屋の小役人の造型、酒好きの近藤ウジの飲みっぷり、落語の楽しさを満喫した。
前トリの今松「質屋蔵」も良かった。
さいごの蔵の中のお化け、相撲の行司と天神様の風格が好い。
質物には質に入れる人たちの恨みが籠っている、それは大金持ちの知らない恨みつらみだ。
その実例を番頭に想像で事細かに話して聞かせる。
それだけ「貧しい」人たちの苦労を知っている質屋の主人だからこそ(であるのに)熊さんが驚くようないい酒の樽やウマイ漬物の樽をいくつも常備できるのだ。
ほかに、三之助「黄金の大黒」、どこといって文句のつけようがないちゃんとした芸なのに、イマイチ湧かないのは客席が温まっていなかったからか。
𠮷窓「里帰り」、言い間違えが多くちゃんとさいごまで言葉を完成させない、どうしたもんだ。
正楽「紙切り」、「相合傘」「刀の手入れをしている小三治師匠」「秋祭り」、夏祭りと同じですと師匠、「お月見」「藤娘」「薪能」、どうしよう、わっからな~い、とつぶやきながら。
帰りに赤ひげ先生の所によったら「リハビリは土曜日二時まで」と言いながら、看護師さんがウオーターべッドをやってくれた。
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urontei at 2018-09-30 13:30
なんと! 小三治=サンチだったとは!!
佐平次さんにとっては人間国宝ならぬ、可愛い可愛いお犬国宝ですね (笑)
佐平次さんにとっては人間国宝ならぬ、可愛い可愛いお犬国宝ですね (笑)
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saheizi-inokori at 2018-09-30 13:37
> uronteiさん、そーでーす!
国宝よりずーっと大事なんでーす!
国宝よりずーっと大事なんでーす!
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saheizi-inokori at 2018-09-30 17:17
> テイク25さん、本人には断りなく決めましたよ。コサンジ、サンジ、サンチの三段活用です。
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doremi730 at 2018-09-30 22:24
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saheizi-inokori at 2018-09-30 22:27
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at 2018-09-30 23:33
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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そらぽん
at 2018-10-01 01:52
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ばんざい 沖縄! ありがとうございます
旅先で見て、ひとり興奮しています
旅先で見て、ひとり興奮しています
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j-garden-hirasato at 2018-10-01 06:57
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kanekatu at 2018-10-01 09:55
私もこの会に行きました。
>きのうの一番は、はん治「禁酒番屋」だった。
同感です。この人こんなに上手かったっけと言う出来でした。
今松や、その他の感想も全く同じです。
小三治は元気な姿を見ただけで満足です。
>きのうの一番は、はん治「禁酒番屋」だった。
同感です。この人こんなに上手かったっけと言う出来でした。
今松や、その他の感想も全く同じです。
小三治は元気な姿を見ただけで満足です。
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saheizi-inokori at 2018-10-01 10:00
> 鍵コメさん、そうなんですよ。だいぶまえから、消去も出来ず、新たに、、あ、あらたにやりなおしてみようかな。エクサイトのデザインが代わるので迷惑至極です。
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saheizi-inokori at 2018-10-01 10:02
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saheizi-inokori at 2018-10-01 10:03
> j-garden-hirasatoさん、私の影に隠れようとするのが可愛かったです。
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saheizi-inokori at 2018-10-01 10:06
> kanekatuさん、前列で見たから顔が好く見えて、その顔が貫禄十分、ちょっと志ん生をしのばせました。
小三治は先日来、凄い出来だったという話を見たり聞いたりしていたのでちょっと期待はあったのですが、まあ、あれもまた良しでした。
小三治は先日来、凄い出来だったという話を見たり聞いたりしていたのでちょっと期待はあったのですが、まあ、あれもまた良しでした。
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福
at 2018-10-02 06:28
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saheizi-inokori at 2018-10-02 07:52
by saheizi-inokori
| 2018-09-30 12:02
| 落語・寄席
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Comments(16)