笛がよんでいる 能「清経」狂言「見物左衛門」仕舞「求塚」

天気がはっきりしないので毎日部屋干し、シーツやパットをからっと干したいな。
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(能楽堂の中庭)

きのうは国立能楽堂開場35周年記念公演、友枝昭世を観てきた。
ああ、ダメだったかと、あきらめながらも、もう一度と「おまかせで一枚」をクリックしたら、GB(グランドボックス)の一番うしろの一枚が取れた。
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脇正面の後ろ、いくらか椅子などがゆつたりして、値段は同じ、悪くない。
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二人の男に求婚されて苦悩の末に入水した女が地獄に堕ちて凄惨な責め苦にあつたのち、暗闇のなかを再び「求塚」に戻っていく、曲の最後の部分を紋付き袴で舞う、仕舞「求塚」

五分くらい、無駄のないきりつとした舞の姿、これが能の骨格だ。

狂言「見物左衛門」
伏見の深草祭を見物に行った男。
ワクワクしながら古御所の厩や馬、座敷、駆け馬、相撲などを観ては中継放送、辛辣な文句をつけるものだから、はては自分も相撲にひきこまれる。
久しぶりの萬さん、さすがあ!
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能「清経」
当初、笛は藤田六郎兵衛のはずだつたが、逝去されたために松田弘之に代わる。
音取(ねとり)という小書き(特殊演出)がついて、清経の亡霊が笛の音に誘われるように登場するという、それは藤田さんで見たかつたなあ(合掌)
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清経の家臣(ワキ)が、九州柳ヶ浦で主人が自殺したことを、その妻にしらせようと京都までやってくる。
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源氏に追われるなかを「忍び忍びにのぼりけり」、しかも辛い任務を果たすために、閑さんは、その感じがワキに感じられなくてはいけない、笠を深くかぶつて面は見えないようにする、でも気はまっすぐに前を見る、と語っていた。

森常さん、、もそうしていた。

清経の妻は、生きてまた会おうと約束したのに、敵に討たれたならともかく自死とは情けないと驚き悲しみ、形見の遺髪を受け取らない。
見るたびに悲しみが増すから、というのだ。
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涙とともに寝てしまつた妻の枕元に清経が現れる。
笛方が舞台の真ん中に鏡の間の方を向いて座り、静かに清経に呼びかける。
友枝さん、どこにいつちやったの?と心配になる頃、幕をくぐって白い鉢巻きを長く後ろに垂らした清経が現れ、しずしずと歩み、笛の音が止まると、止まり、鳴りだすとまた歩く。
止まるたびに哀愁が募る。
三ノ松、二ノ松、一ノ松、止まっては歩いて、それは時計ではかなり長かったはずなのに、息をつめてみているからか、時というものを感じない。
八世観世銕之丞は、「この笛の音は妻からの電波なんですね。だから音がするとその方向へ行き、音がとまつてしまうと動かなくなつてしまう」と「ようこそ能の世界へ」で語っている。
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「なんで自殺したの?」「私の遺した髪をなんで返すの?」二人は恨みのたけをぶつけあうが、やがて清経は自殺に至った経緯を語る。
舟の舳先で笛をふき、今様を朗詠したのち海中に身を投じるまでに知った神のお告げ、戦いのいくすえ、世の無常を感じたことを。

このとき、なぜかそこ(妻の寝所)にいたワキが「世の中の、うさには神もなきものを、何祈るらむ心づくしに」と宇佐八幡の神のお告げを謡う。
ちょっと高い、澄んだ声、これを閑さんは、ワキではなくて神の声なのだ、といい、土屋は、自分の姿を消して声だけで存在するワキ方の一つの極致ですね、と受けている。
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落語会と能楽堂を二日続けて見られた。
友枝さん、よかったなあ。

Commented by ppjunction at 2018-09-22 17:31
「清経」ですか〜。
私は昔、観世で拝見。
観る方にも力が入りますね。

友枝氏の「清経」とは何とも羨ましい。
宝生閑さんがいらしたら、それこそ贅沢な舞台だったでしょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2018-09-22 17:39
> ppjunctionさん、そうなんです、何回か他の演目で観ましたが、今は叶わぬ夢、せめて芸談で参加を願いました。
私も演者たちも生きているうちに観ておかなくては。
Commented by j-garden-hirasato at 2018-09-23 06:10
落語と能楽、
芸能三昧でしたね。
Commented by saheizi-inokori at 2018-09-23 10:26
> j-garden-hirasatoさん、いかにも隠居ですねえ。
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by saheizi-inokori | 2018-09-22 09:57 | 能・芝居・音楽 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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