もう一日

枕元の左右に長い・大きな箱のような赤い測定器が左右に揺れて、「ああ、これで治った」と自分が考えているのか誰かが言ってるのか。
いい気分なのだ。
こんな測定器みたことがない、でもこれは夢だから。
夢でも治ったなら起きても治っているのだろう。
念のためにもう一度測定してみよう。
何を測定しているのかは不明だ。


測り直しても大丈夫、もうよくなったんだ。
夕べ早く寝たのが正解だった、と起き上がってみると、足元がちょっとふらつくけれど、大丈夫そうだ。
咳も鼻水も出ないし、身体に力がある。
前から楽しみにしていた文楽公演、行けそうだ。

洗濯をしたりルンバの世話をしているうちに咳や鼻水が出てくる。
きのうよりはずっといいから、自分としては行けるけれど、隣近所の観客はいやだろうな。
野菜スープのカボチャやニンジンを切りながら、キップを無駄にする決心をする。

きのう、うとうとしながらＮＨＫを聴いていたらブルッフのバイオリン協奏曲第一番をやっていた。
バイオリンの音がレースのショールになって、部屋のイスから本棚、窓から外に出て玄関の欄干（そんなものはないのに）から芙蓉の木、隣の家の二階のバルコニーと舞い踊っていくのだ。
そうじゃない、こっちこっち、と呼べばちょっと戻ってきたりする。

今日もあんな夢をみながら一日寝ていよう。
カミさんが晩飯を作ってくれるから安心だ。
そしてあすこそ文楽に行くのだ。