鼻くそ丸めて 久坂部 羊「カラダはすごい!モーツアルトとレクター博士の医学講座」

いったいなんのために生きてきたんだろう。
自分の人生なんてけっきょくこんなものか。
これからどうやって生きていくのか、ああ、しんどいな、つまらないなあ。
義歯を外して(入れてると辛い)ふがふがする口をぐじゅぐじゅしながら、パンツを干しながら、それでも習慣でピンと伸ばしながら、ため息ついてイスに座って点眼を始める。
いい加減にこんな薬やめちまいたいのに、やめないところが小心な俺、こうやって生きてきたんだ。

老人性鬱の入り口にたっているのかな。
亡母が、わたし老人性鬱なのかもしれないと訴えたことを思い出す。
笑い飛ばしたが、ああ、あのときの母と同じ年なんだ。
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厭世的であることと自分の(身の回りの人の)健康が気になることとは矛盾しないのかな。
友人から借りたこの本、面白かった。
身体の仕組みと機能を知ると、立派な人も、だめな人も、強い人も、弱い人も、同じように呼吸し、消化し、排泄していることがわかります。それを理解すれば、偏見や嫉妬、恐怖や劣等感みたいなネガティブな感情も、霧散するのではないでしょうか。
 今、日本では健康が何より大切に思われ、全国民が健康を崇めているように思えます。かつてのエコノミック・アニマルならぬ、ヘルス・アディクド(健康中毒)・アニマルです。(略)
健康はたしかに重要ですが、それよりもっと大事なのは、どう生きるかでしょう。
あとがきを読んで思い出すのは、亡妻の葬儀での僕自身の挨拶、「神父さんは、だいじなことは長く生きることではなくて(短くても)好く生きることだ、と諭して下さいましたが、妻は短くても好く生きた・生きてくれたと思います」という言葉だ。

身体の仕組みを要領よく説きあかして、そこに関わる病気や治療法(のナンセンス)を教えてくれる。
なるほど、と思った言葉をいくつかあげておこう。
脳死を人の死と認めるべきか否か。
認めないなら、最愛の我が子が臓器移植でしか助からない病気になっても、あきらめなければなりませんし、認めるなら、最愛の我が子が脳死になったら、それを死と受け入れなければなりません。

日本でレーシック(近視眼に対するレザー手術)が実用化されたのは2000年からで、歴史が浅いため、手術後20年、30年の長期保証はありません。ただでさえ薄い角膜を削るのですから、強度が問題になるでしょうし、老化現象も加わりますから、将来どうなるかわかりません。これはレーシックにかぎったことではなく、医学の新しい治療は、いずれもはじめは予後などわからずにはじまります。

痛みは治療対策の中で、優先順位が高いもののひとつですが、私は安易に痛みを止めることに疑問を持っています。腹痛や腰痛などの痛みは、身体の重要なサインではないのかと。胃腸が痛くなるのは、食べるなという合図であり、腰痛や関節痛は、動かすなという警告でしょう。

牛乳を多く摂って、血液のカルシウム濃度が急激に上がると逆に排泄が進みすぎ、それを補うために骨のカルシウムが溶けて、血液に流れ込んでしまう。
カルシウムは心臓や脳、筋肉の活動に重要な働きをするため、身体が常に一定の濃度に保とうとして、過剰反応が起きてしまう。だからカルシウムをサプリメントなどでとることも勧められない。
望ましいカルシウムの摂取は、野菜から小魚から、継続して適量にとることです。すなわち、バランスのとれたふつうの食事がいちばんということ。少しでも健康にとか、アンチエイジングとかいう欲を出すと、武器を売る”死の商人”ならぬ、”健康商人”につけ込まれて、かえって健康を損ねかねません。

テレビで盛んに流れるグルコサミンやコンドロイチン、ヒアルロン酸、コラーゲンなどのCMを見ると、私はこめかみに脂汗がにじむほどムカムカします。口から食べたこれらの物質が、胃から吸収されて、血液にのって全身をまわりながら、うまい具合に痛い関節に集まって、効果を発するというような、都合のいい話があるわけがないでしょう。

がんにはまだわからないことが多くあります。早期がんでも死ぬ場合があり、進行がんでも助かるということは、発見の時期だけが生死を分けるのではないということです。がんは早く見つけて治療すれば助かるというのは、根拠のない思い込みの可能性があります。悪性度の高いがんは、早期に発見しても助かりません。もしそうであるならば、早くに見つけて、早くから苦しむより、できるだけ遅く見つけたほうが、心は安らかでしょう。
抜いていくと、その前後にもっと興味深い文章があったのに気づくのは、ブログを書く目的のひとつでもある。
最初はこんな↓楽しい文章をもっとたくさんアップしようと思っていたのに、ついつい真面目な文章が多くなったのはそのせいだ。
鼻水は、鼻腔内の腺細胞や杯細胞から分泌される液で、粘膜保護のため、絶えず分泌されています。蛋白質を含むので、乾くと固形になり、いわゆる「鼻くそ」になります。鼻くそは大きいものが取れると、なんとなくうれしくなります(私だけかもしれませんが)。すぐに捨てるのが惜しくて、指でこねくりまわしたりすることもあります。においを嗅ぐと、どこか懐かしいにおいがするのは、やはり自分の一部だからでしょう。
さて、そういうことならば、アチコチ痛いのや不快なのもうっちゃって、たまには映画でも見て来ようっと。


扶桑社新書

Commented by cocomerita at 2018-08-29 15:01
Ciao saheiziさん
自然にしてるのが一番だと私は思っています

私も同じく 薬はおろかサプリメントの類は飲んだ事もないし、売ってるのを見ただけで 虫酸が走ります
痛み止め ってやつ しかり
痛み止めは 痛みを取ってくれるのではなく、痛みを感じる脳の神経を麻痺させるのですから、こんなに恐ろしいことはないと思っています
麻痺なら痛みの方がよっぽどましだと思うのです

私は 医者を信用していませんし、自分の身体の始末は自分でつけようと思っていますから、当然 身体検査なるものは 30年以上も前に会社を辞めてから やったことがありません
これまた 久坂部さんと同じように早めに知って 早々に病人になりたくないと、まあ、病気と闘って助かりたいと言う気持ちがないからかもしれませんが、、。

歳を重ねると きっとそれなりに今の私たちの年では想像もできないいろいろな思いが湧き出てくるのでしょうね
Saheiziさんと鬱は全然結びつかないけど、、苦笑

面白そうな本ですね
読んでみたいです
Commented by テイク25 at 2018-08-29 15:15 x
一昔前には「健康の為なら死んでもいい」というジョークもありましたっけねぇ。

「テレビで言ってたんだけど、○○って△△△という物質が豊富で体にいいんだって・・・」などと言って律儀に試している方がいますが、そういう人に限って添加物などには無頓着だったりしますね。不思議。

映画で不快感を吹き飛ばして下さいね。何の映画でしょうか。
Commented at 2018-08-29 15:30
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-29 17:13
> cocomeritaさん、その「年を取って」というやつです。二三年前には考えもしなかつたイロイロ、自然にしていたら生きていられないようなことばかりです。老人が死にたくなるというのは自然なことかもしれません。
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-29 17:20
> テイク25さん、昔赤髯のような漢方医が「若葉」というタバコをプカプカ吸っているので、それは良くないんじやないかと訊いたら、良くはないかも知れないが国電の車内のほうが余程汚れた空気だと言われたことが思い出されます。
映画は明日アップしますね。
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-29 17:26
> 鍵コメさん、ありがとう。今USBを買いました。
Commented by sweetmitsuki at 2018-08-29 19:09
永いこと、腕の痛みに耐えきれず、夜も眠れない毎日を過ごしてきまして、いろんな病院を渡り歩き多くの医師に診てもらい模したが「あなたのそれは単なる筋肉痛で、筋肉痛の原因になることをしないかぎり治りません。」といわれ、結局保険のきかないボディケアに通っています。
結果はまあまあですが、施術料はかなりいいです。
もっとはるかに給料の安い会社で、筋肉痛にならない仕事をしたほうがはるかにいいくらいです。
Commented by koro49 at 2018-08-29 19:11
saheiziさん、シルバー川柳面白いよ^^。
http://www.yurokyo.or.jp/news/silversenryu/20170908_01.html

体調悪くなると弱気になるし、ちょっといいとこうしちゃいられない・・・アップダウンがシルバー世代の特徴かもね?!
Commented by jarippe at 2018-08-29 19:17
最近井戸端会議の議題が決まってしまっています
政治の事  死に方の事  介護の事 金欠病の事 
そしてこの先の世の中の不安の事
中でも一番多い話題は介護、死に方です
そしていつも先の事は考えないようにしようねって会議終了です
この先何年生きるか分かりませんが長く生きてしまったらどうしましょう 長く生きていいことあります?
Commented by at 2018-08-29 19:25 x
嫌なことや見たくないこと多々、たまには忘れて幸せにならんと元気に生きて行けへん。
と思いつつ、好きな事をやってる最中にも思い出してグズグズ思う。
あかんたれですゎ、
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-29 19:59
> 蛸さん、目、口の不具合はなかなか忘れることができないけど、やっと目がよくなったのでタイの映画を見てきましたよ
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-29 20:02
> jarippeさん、美しい信濃の自然、井戸端会議の友達、長生きするのも楽しいでしょう。
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-29 20:07
> koro49さん、紙で作った螺旋リボンをくるくる降りていく感じです。
シルバーが錆びてステンころりにならなきゃいいのですが。
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-29 20:10
> sweetmitsukiさん、人生のプラスマイナスは神のみぞ知る、愚者には量り難いですね。
Commented by haru_rara at 2018-08-29 23:30
姑が毎日のように大きなためいきをついて「あーあ。生き過ぎた。あーあ」と言うたびに「おかあさん」と声をかけて、あとはしばらく傍にいて、「アイスコーヒーでも飲む?」とかなんとか言って、そうすると「飲む」と笑顔になってくれたり。
実家の母が電話で繰言を言うのを、「そうだねえ」とうなずいたり。そうばかりしていると、叱られたり^^

自分より年上の方々と日々接する中で、「その歳にならなければわからない」ことを教えていただいているんだなと思います。

佐平次さん、面白いこと、つまらないこと、憤ること、教えてくださいね。
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-30 05:58
> haru_raraさん、自分はそんな老人にはならないと思っていても身体(心も)はちゃんと老いていくのですね。
老いることに抗わずにこにこ笑っていれば可愛い良くできたおじいさんとなるのでしようが、なかなかそうはイガねもんです。
Commented by antsuan at 2018-08-30 07:22
ほんと、歳をとるってこういうことなんだと思うことしきりです。
身体の機能って人間社会より遙か上を行っていますね。
Commented by saheizi-inokori at 2018-08-30 09:33
> antsuan、その身体ががたが来るのですから、人間社会がボロボロになり腐り始めるのもむべなるかな。
Commented by ikuohasegawa at 2018-09-05 09:18
「野菜から小魚から、継続して適量にとることです。すなわち、バランスのとれたふつうの食事がいちばんということ。少しでも健康にとか、アンチエイジングとかいう欲を出すと、武器を売る”死の商人”ならぬ、”健康商人”につけ込まれて、かえって健康を損ねかねません。」
やつぱり。サプリメントを「食べない」生活は正しかった。
Commented by saheizi-inokori at 2018-09-05 10:09
> ikuohasegawaさん、そういう生活ができることを感謝しています。
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by saheizi-inokori | 2018-08-29 11:49 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(20)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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