不用な外出をして耳から点滴 国立名人会@国立演芸場
2018年 08月 27日
洗濯物を干している背中・首筋が、かあっと炙られて干し物にも火がつくんじゃないかと思うほどの日差し、もちろんサンチ散歩は取りやめだ。
不用な外出は避けるようにとのご注意はかたじけなけれど、僕にとってはたまの落語は聞く点滴、真昼の決闘にしてはよろよろと国立演芸場に繰り込む。
写真、右が最高裁判所、左の国立演芸場と並んでいる。
建物の向こうがお濠をはさんで天皇夫妻の住まい、いいところに住んでいるのに、演芸場であったことがないな。
ヒマになったらどうです、たまにはご一緒しませんか、カミさんもご一緒に、居残り会も楽しいですよ。
前座、小はだ「道潅」、まずは天皇に敬意を表して江戸城の由来を話す。
八が家に帰るとお待ちかねの村雨、「道潅の行列だ、屋根の上に猫の道潅、四つ足の道潅だ」は、楽しい。
龍玉「夏泥」
八年前に真打昇進の直前「弥助」のときに、この噺を聴いたのが初見参。
あのときのニヒルな空気はなくなって、”やさしい”泥棒をぎゃくに脅して、全財産’泥棒の)を巻き上げる男にはゆとりが感じられて、すっかんぴん暮らしもいいものだと思わせる。
さん生「天狗裁き」
きのう紹介した中井久夫の著作集のなかに「記憶について」というエッセイがあって、そこに
毎晩夢をみる僕の脳神経は手際が悪いのか、僕には夢作業の量だか質だかが多すぎるのかもしれない。
この落語の主人公は寝ながら笑ったりしているのに、目覚めると夢をみた覚えはないという。
カミさんから天狗までみんなから夢の内容を訊かれて、見てないものはしゃべれないとがんばる寅さんは正直でもあり、要領が悪いともいえるか。
繰り返しの多い、ちょっと退屈な噺を(枕も含めて)飽きさせず聴かせたのは、カミさん、熊さん、大家、奉行、天狗それぞれがうまく演じわけられ会話の内容も面白かったからだ。
志ん輔「お若伊之助」
狸が化けた男を、惚れて別れさせられた男と思いこみ、毎夜逢引きをした上に子供まで成してしまう。
グロとも感じるし、そんな男のことを案じる棟梁が、ヤキモキ、根岸と日本橋の間を何回も走って往復するくらいしか面白みがないような噺で、あまり好きではなかったが、今日の志ん輔は「遠野物語」に語られる自然と人間が共に暮らしていた世界のことをマクラで触れて、いつもの誇張した表情を封殺、みっちりと語って聞かせた。
志ん輔の新たな地平が拓けた?
しん平「茗荷宿」
廃業同然の宿に飛び込んできた飛脚が百両を持っていると聞き、茗荷づくしの料理を食わせて、百両のことを忘れさせようと企んで、茗荷の刺身、味噌汁、茗荷飯、、「お味の方は?」と訊くのもとぼけた宿屋の亭主。
新作的な面白さはあるが、こんなに元気な亭主じゃ雰囲気は出ないやね。
(「出た出た月が、たあるいたあるい」と弟が晩飯の後の母子合唱の時に歌って咎めると「先生がたあるいとうたったもん」とベソをかいた。
手拍子でリズムを教えるときに「タ、あるい」とやったのだと思う。いつも思い出す。
中井久夫は年寄りが昔のエピソード記憶を繰り返すのは、それが人格形成に関わった記憶であり、繰り返すことで人格崩壊を防いでいる、という)
小菊・粋曲
小満ん「居残り佐平次」
ふつうは全編をやると40分はかかるのを30分で、かといって飛ばしたとか消化不良の気持ちにさせない腕の冴え。
佐平次が居残りをして、ねだる、朝の酒に「牡蠣鍋」(ぷくッと膨れたのを掬って紅葉おろしで)、「鰻」(中串をカリッと焼いて、蒸さないで、茶漬で食う鰻茶)、、僕が文無しで居残りをして、ねだってもダメだろうな。
というよりその前の友だち三人を引き連れての豪儀な遊びができやしない。
(山梨から届いたみごとなブドウを、毎日少しづつ楽しむ。
子供の頃は葡萄を食うとぶどう糖が身体に入って元気になるのだと思って、母にたくさん食べさせたかった。
これも人格形成に関わったエピソード記憶だ)
不用な外出は実りが多かった。
不用な外出は避けるようにとのご注意はかたじけなけれど、僕にとってはたまの落語は聞く点滴、真昼の決闘にしてはよろよろと国立演芸場に繰り込む。
建物の向こうがお濠をはさんで天皇夫妻の住まい、いいところに住んでいるのに、演芸場であったことがないな。
ヒマになったらどうです、たまにはご一緒しませんか、カミさんもご一緒に、居残り会も楽しいですよ。
八が家に帰るとお待ちかねの村雨、「道潅の行列だ、屋根の上に猫の道潅、四つ足の道潅だ」は、楽しい。
龍玉「夏泥」
八年前に真打昇進の直前「弥助」のときに、この噺を聴いたのが初見参。
あのときのニヒルな空気はなくなって、”やさしい”泥棒をぎゃくに脅して、全財産’泥棒の)を巻き上げる男にはゆとりが感じられて、すっかんぴん暮らしもいいものだと思わせる。
さん生「天狗裁き」
きのう紹介した中井久夫の著作集のなかに「記憶について」というエッセイがあって、そこに
生物学的には毎晩夢を見ているはずなのに、長期間にわたって「夢をみたことがない」という人が少なくない。これは、夢作業がめでたく完遂できた場合には覚醒時に記憶痕跡を残さないからだとも考えられる。そうだとすれば、想起夢つまり目覚めた後に残っている夢とは夢作業の不消化物であるとも考えられる。とある。
毎晩夢をみる僕の脳神経は手際が悪いのか、僕には夢作業の量だか質だかが多すぎるのかもしれない。
この落語の主人公は寝ながら笑ったりしているのに、目覚めると夢をみた覚えはないという。
カミさんから天狗までみんなから夢の内容を訊かれて、見てないものはしゃべれないとがんばる寅さんは正直でもあり、要領が悪いともいえるか。
繰り返しの多い、ちょっと退屈な噺を(枕も含めて)飽きさせず聴かせたのは、カミさん、熊さん、大家、奉行、天狗それぞれがうまく演じわけられ会話の内容も面白かったからだ。
狸が化けた男を、惚れて別れさせられた男と思いこみ、毎夜逢引きをした上に子供まで成してしまう。
グロとも感じるし、そんな男のことを案じる棟梁が、ヤキモキ、根岸と日本橋の間を何回も走って往復するくらいしか面白みがないような噺で、あまり好きではなかったが、今日の志ん輔は「遠野物語」に語られる自然と人間が共に暮らしていた世界のことをマクラで触れて、いつもの誇張した表情を封殺、みっちりと語って聞かせた。
志ん輔の新たな地平が拓けた?
しん平「茗荷宿」
廃業同然の宿に飛び込んできた飛脚が百両を持っていると聞き、茗荷づくしの料理を食わせて、百両のことを忘れさせようと企んで、茗荷の刺身、味噌汁、茗荷飯、、「お味の方は?」と訊くのもとぼけた宿屋の亭主。
新作的な面白さはあるが、こんなに元気な亭主じゃ雰囲気は出ないやね。
手拍子でリズムを教えるときに「タ、あるい」とやったのだと思う。いつも思い出す。
中井久夫は年寄りが昔のエピソード記憶を繰り返すのは、それが人格形成に関わった記憶であり、繰り返すことで人格崩壊を防いでいる、という)
小菊・粋曲
日暮が鳴けばくる秋 あたしは今日で三日泣くのに来ない人日暮らしのなく木立を歩きたい。
小満ん「居残り佐平次」
ふつうは全編をやると40分はかかるのを30分で、かといって飛ばしたとか消化不良の気持ちにさせない腕の冴え。
佐平次が居残りをして、ねだる、朝の酒に「牡蠣鍋」(ぷくッと膨れたのを掬って紅葉おろしで)、「鰻」(中串をカリッと焼いて、蒸さないで、茶漬で食う鰻茶)、、僕が文無しで居残りをして、ねだってもダメだろうな。
というよりその前の友だち三人を引き連れての豪儀な遊びができやしない。
子供の頃は葡萄を食うとぶどう糖が身体に入って元気になるのだと思って、母にたくさん食べさせたかった。
これも人格形成に関わったエピソード記憶だ)
不用な外出は実りが多かった。
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haru_rara at 2018-08-27 13:38
タイトルを見てびっくりしましたよ~耳から点滴するなんて!ダイジョブですか!って^^
よかったですね、いい時間をおもちになれて。
葡萄の思い出。せつない。
よかったですね、いい時間をおもちになれて。
葡萄の思い出。せつない。
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unburro at 2018-08-27 14:18
不要な外出って、オマエらに決められたくないよ。
とか、いつも思う天気予報。
何か用があるから、出かけるんだ!
用もないのに、炎天下出かけるワケがないだろう!
と、1人でブツブツ思うのは、暑さのせいでしょうか…
しかし、文句なしに出掛ける値打ちのあるプログラムですね。
いいなぁ〜
特に「天狗裁き」は、幼い頃から好きな噺です。
昼間、起きていても夢を見ているような、
夜も、とんでもない妄想をしながら寝てしまったり
夢と現実の境が曖昧な、ぼーっとした子どもだったので
天狗に会って、夢の話をしたいような気分になったのかも
しれません。
夢の消化不良…なるほど、です。
とか、いつも思う天気予報。
何か用があるから、出かけるんだ!
用もないのに、炎天下出かけるワケがないだろう!
と、1人でブツブツ思うのは、暑さのせいでしょうか…
しかし、文句なしに出掛ける値打ちのあるプログラムですね。
いいなぁ〜
特に「天狗裁き」は、幼い頃から好きな噺です。
昼間、起きていても夢を見ているような、
夜も、とんでもない妄想をしながら寝てしまったり
夢と現実の境が曖昧な、ぼーっとした子どもだったので
天狗に会って、夢の話をしたいような気分になったのかも
しれません。
夢の消化不良…なるほど、です。
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saheizi-inokori at 2018-08-27 14:25
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saheizi-inokori at 2018-08-27 14:31
> haru_raraさん、牛乳も身体にいいと、牛乳を一本取って弟と交代でのまされました。ごくごく飲むと元気になるような気がしました。
味の素も頭がよくなるなんて、なんにでも振りかけて食べたのに、今は化学調味料が入っているものを食べられなくなっているんです、気分の問題かな。
味の素も頭がよくなるなんて、なんにでも振りかけて食べたのに、今は化学調味料が入っているものを食べられなくなっているんです、気分の問題かな。
年寄りが繰り返し話すエピソード記憶は、人格形成に関わったもの、とは面白い推察ですね。
私にも繰り返し繰り返し思い出す場面や会話がありますが、それが自分の考え方、生き方、人との接し方などなどに小さいながらも何らかの影響を与えているかも・・・へぇそうなのか~と思いました。
耳からの点滴は効果覿面でしたね。
私にも繰り返し繰り返し思い出す場面や会話がありますが、それが自分の考え方、生き方、人との接し方などなどに小さいながらも何らかの影響を与えているかも・・・へぇそうなのか~と思いました。
耳からの点滴は効果覿面でしたね。
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saheizi-inokori at 2018-08-27 18:37
> テイク25さん、だから年寄りのいつもの話を「もう聞いたよ」などと遮らないこと、無意識のうちに認知症予防しているのですから。
昨日なに食べた?みたいな短期記憶は忘れてもたいして心配いらないらしい。食べたこと自体を忘れるよりも。
昨日なに食べた?みたいな短期記憶は忘れてもたいして心配いらないらしい。食べたこと自体を忘れるよりも。
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mother-of-pearl at 2018-08-27 18:58
“耳から点滴”!!痛そう!!
読み進みながら、どの時点で病院にいらしたのか、とドキドキしました!
よくできた構成に、まんまとやられましたm(_ _)m
良かった〜
美味しい葡萄を、私も頂いています。
やはり“経口”でジワジワと栄養補給が一番ですね。
読み進みながら、どの時点で病院にいらしたのか、とドキドキしました!
よくできた構成に、まんまとやられましたm(_ _)m
良かった〜
美味しい葡萄を、私も頂いています。
やはり“経口”でジワジワと栄養補給が一番ですね。
耳にする点滴があるのかと。
いい点滴ですね。私は眼かな?
いい点滴ですね。私は眼かな?
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jarippe at 2018-08-27 21:36
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saheizi-inokori at 2018-08-27 21:46
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saheizi-inokori at 2018-08-27 21:47
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saheizi-inokori at 2018-08-27 21:48
> mother-of-pearlさん、経口が出来なくなったらどうしよう、そんなことも考える昨今です。
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蛸
at 2018-08-28 00:16
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我、耳からの点滴、全く不足也
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saheizi-inokori at 2018-08-28 05:59
> 蛸さん、音がみちみちていませんか。
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sweetmitsuki at 2018-08-28 06:02
北欧では、信号待ちをしていて隣の自転車に乗った人をよく見たら国王だった。というようなことは珍しくないそうです。
明仁さんもあと半年でヒマになるそうですから、演芸場で隣に座っている人をよく見たら・・・なんてこともあるかもしれませんね。
明仁さんもあと半年でヒマになるそうですから、演芸場で隣に座っている人をよく見たら・・・なんてこともあるかもしれませんね。
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saheizi-inokori at 2018-08-28 06:13
> sweetmitsukiさん、少なくともかみさんは落語で笑えそうです。昭和天皇はなかなか笑わなかったと、圓歌は言ってましたが。まあおもしろく脚色したのでしようが。
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j-garden-hirasato at 2018-08-28 06:37
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saheizi-inokori at 2018-08-28 08:20
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at 2018-08-28 09:14
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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saheizi-inokori at 2018-08-28 11:43
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蛸
at 2018-08-28 23:07
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騒音と悲鳴!だな、
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saheizi-inokori at 2018-08-29 05:52
> 蛸さん、アジア!
by saheizi-inokori
| 2018-08-27 11:46
| 落語・寄席
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Comments(22)