ガン闘病中の出版 米原万理「必笑小咄のテクニック」(集英社新書)
2006年 02月 13日
特に小咄が得意。まあ、あちらでは小咄のひとつやふたつ引き出しにしまっておいて当意即妙に披露することが社交の必須マナー(?)だというものね。この本は彼女が世に流布する小咄の構造を分析して「これを理解すれば君も小咄を自在に創れる!」というノウハウを伝授してくれる。演習問題まで随所にあるのだ(もっとも俺はあまりよく出来なかったが)。
小咄とは、まず詐欺の手口が基本なのだと。詐欺にひっかかる間抜けを笑う小咄もあるが小咄の構造自体が聞くものを上手に乗せてころりと騙す。実際の詐欺にあうのと違って「なあんだ」と笑いが弾ける。
あるものの見方を視点を変えることで全く違う見方が出てくる。悲劇も見方によっては喜劇にもなる。絶体絶命の危機的状況を想像してみれば今の苦労なんて相対化できる、ということは実際にもよくある処世術だが小咄はそういうことを極端に行う。
こうやって説明してもよく分からないかもね。やはり本の中の彼女があげている実例を読むに如かずだ。いろんな小咄がたくさん出て来る。特にエッチな話と、アホナ政治家をからかう小咄が彼女大好きだ。
ただ、ちょっと気になったのはいつもの米原節からみると、やや理屈っぽくて軽さを欠いている。小咄なんて分析するモンじゃなくて聞いて・読んで噴出したりにやりとするもんだね。
と思ったら後書きがショック!彼女、「青春と読書」に2002年まで連載したあと本にしようと加筆訂正に入った2003年お母さんが危篤に陥り、ご自分も悪性腫瘍の手術、その後転移が判明と言う最悪な状況で上梓にこぎつけたのだと書いている。
頑張れ!米原さん。
あまり生々しく書くのもなんなので、例をあげる。 Aさんが1日6000円のレンタカーを借りた。 しかしAさんはその日車を使う必要がなくなったが、Bさんが使いたい用事があり、AさんはBさんに又貸しすることにした。 ところでAさんはBさんに1万円貸している。 後日、Bさんは 【借金の1万円】-【レンタカー代6000円】ということで、4000円をAさんに返した。 この場合Bさんがおかしいと思うのは私だけだろうか? いや、もちろん、Bさんがおかしい。 Bさんにとっては、借金もレンタカー代もAさ...... more
たしかに読みながら、文体に差異があるな、とおもっていたの、なんていうか、彼女の流れるような文体の中に込められる辛辣な意見と豊富な例示とエピソードと・・・っていうのではなく、それらがバラバラな感じ、と思っていたら、あとがき読んで闘病と書き直して上梓というのを読み納得したのです。
それでも、数箇所で笑いました。電車で読むなかれ、の作者の1人だと思います。
私も米原さんの本を数冊読みました。同時通訳としての体験からの様々なお話が面白く、才気煥発な才能にも感嘆しております。
ガンだったとは知りませんでした。驚いております。どんな闘病生活をおくっておられるか考えてしまいました。
ケーブルネットニュースにて、米原万理さんの訃報が流れ、ショックを受けている一人です。ちょっとやりきれない朝です。。