水を汲むひと 徳富健次郎「みみずのたはこと」(上)

スマホの天気予報は朝のうち雨が残るようだったが、この、だいぶ良くなった目で見る空は時折青空もみえるので、そっちを信じて二度の洗濯、点眼やらルンバの世話、ダイソンを引っ張りながら、ながらながらの朝のバタバタだ。
テレビで杉田ナニガシの人でなし発言や大量絞首刑、岸田のみっともない撤退などを報じるのを聞くたびに、ああ、イヤな国になっちまったと思う。
とたんにいろいろやるのが嫌になり、なんにもしないテレビも新聞もないところに旅をしたくなる。
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(晴れていてもときおりぽつぽつ落ちてくるのは天のジョロのしずくか)

朝飯を食べ終わったら、房総から電話、昨日は恒例のBBQだったが、体調がイマイチであることや長崎に赴任している息子が東京の自宅によんでくれる(中止)ということで欠席、台風がきたけれど、日中はそれほどのことはなかったから、あいつらきっと集まってなにかやったぞと、思っていたら、やっぱり、廊下の先にビニールの屋根をはりだし、何人かで騒いで、そのまま泊まってしまったという。
やっぱり佐平次さんがいないと寂しかったと口々に調子のいいことを言いながら昨日の楽しさを語る。
少しは気が晴れる、空も晴れ続けているようだ。
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あまりの日照りに道を歩いているとミミズのように日干しになりゃあせんかと思ったら読みたくなってアマゾンした。

明治40年、40歳の徳富蘆花は家族を連れて、千歳村粕谷、今の蘆花公園(ちょっとヘン)に土地とおんぼろの家を買って、青山高樹町の借り家を引き払って移り住む。
奥さんと青山から現地まで歩いて(玉川電鉄が工事中)下見に行くところから、知っている地名が出て来て、今昔の感に浸る。

このミミズ、ユーモア精神に富んでいる。
親子三人のほかに女中がいるのだが、その女中、
母に死に別れて八歳から農家の奉公に出て、今年二十歳だが碌にイロハも読めぬ女だ。東郷大将の名は知って居るが、天皇陛下を知らぬ。明治天皇崩御の際、妻は天皇陛下の概念を其原始的頭脳に打込むべく大骨折った。(略)明治天皇崩御の合点が行くと、曰くだ。ムスコさんでもありますかい、おかみさんが嘸(さぞ)困るでしょうねぇ。
健全な精神の女性だと、僕は思う。
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引っ越してまもなく村の稲荷講があり、蘆花はあいさつのため出席する。
粕谷は26軒、千歳村の八つの字の中では二番目に戸数が少ない。

相談になって、隣字から徴兵に出る時、此の字から寸志を出すべきや否や、馬鹿々々しいから出すまいと云う者もあったが、然し出して置かねば、此方から徴兵に出る時も貰う訳に行かぬから、結局出すと云う事に決する。
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井戸はあったが、出る水が茶色の泥水でとうてい飲めない(土地の人はこれに馴れて飲む)。
蘆花は五丁ほど離れたところの玉川上水の分流に水を汲みにいく。
始めはバケツを両手に下げていくが、腕が抜けるようになり水も七分ほどに減ってしまう。
余り腕が痛いので、東京に出たついでに、渋谷の道玄坂で天秤棒を買ってきた。丁度股引尻からげ天秤棒を肩にした姿を山路愛山君に見られ、理想を実行する(蘆花はこの直前、トルストイにあってきた・僕註)と笑止な顔で笑われた。買って戻った天秤棒で、早速翌朝から手桶とバケツとを振り分けに担うて、汐汲ならぬ髭男の水汲と出かけた。両手に提げるより幾何(いくら)か優(まし)だが、使い馴れぬ肩と腰が思う様に言う事を聴いてくれぬ。

天秤棒に肩を入れ、曳(えい)やっと立てば、腰がフラフラする。膝はぎくりと折れそうに,体は顛倒(ひっくりかえ)りそうになる。呍(うん)と足を踏みしめると、天秤棒が遠慮会釈もなく肩を圧しつけ、五尺何寸其まゝ大地に釘づけの姿だ。思い切って蹌踉(ひょろひょろ)とよろけだす。十五六歩よろけると、息が詰まる様で、たまりかねて荷を下ろす。尻餅春(つ)く様に、捨てる様に下ろす。下ろすのではない、荷が下りるのである。憧(どう)と云うはずみに大切の水がぱっとこぼれる。下ろすのも厄介だが、また担ぎ上げるのが骨だ。路の二丁も担いで来ると、雪を欺く霜の朝でも、汗が満身に流れる。鼻息は暴風(あらし)の如く、心臓は早鐘をたたく様に、脊髄から後頭部にかけ強直症にかかった様に一種異様の熱気がさす。眼が真暗になる。頭がぐらぐらする。勝手もとに荷を下ろした後は、失神した様に暫くは物を言われぬ。
落語の「唐茄子屋政談」もかくや。
僕も子供の頃は家に水道がなくて、共同の水道からバケツで水を汲んでくるのは子供の役目だった。
せいぜい20メートルくらいしか離れていなかったので、そんなに大変ではなかったが、雨や雪の日は辛くはあった。

こういう文章を読んでいると、今の便利な暮しにブータレているのが申し訳ないような気がする。
もっとも蘆花は東京に背を向けてわざわざこういう暮らしをするのだが。
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このところ、面倒がって家にいるときは昼飯を抜くことが多い。
それと酒の量を抑制しているから、おかずもあまり食べない。
それかあらぬか、昨日の体重がついに60キロを切った。
社会人になって以来の最低値、身長165~6からすると理想体重だ。
しかし、爺が理想体重を喜んでもしょうがない。
きょうは冷凍ご飯を解かしてツナフレークと海苔、インスタント味噌汁と、頂き物や冷蔵庫の整理(というほどでもないが)をした。
オクラも食おうと思ったらもう痛んでいる。
オクラソーメンをしなかったからなあ。
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Commented by hiromama2015 at 2018-07-29 20:22
そうか!!
食べなければ痩せるのですよね~。
一人で居ると作るのが邪魔くさいから
痩せるかも・・・
昼食を作ってくれる人は居られないのですか?
Commented by saheizi-inokori at 2018-07-29 20:35
> hiromama2015さん、運動よりもなによりも食べないことがダイエットですかね。
かみさん、ちょっと具合が悪いのです。
Commented by テイク25 at 2018-07-29 21:03 x
食べないでダイエットはいかんいかん。
この歳になったらダイエットなんて考えない!というのが私の信条です。その結果のこの体重でトホホの状態ですけれどね。でもいいの、毎晩美味しく食べて飲めれば。
Commented by saheizi-inokori at 2018-07-29 21:08
> テイク25さん、私も同じ意見ですが、毎昼食べるのがめんどくさくなつてきたのです。夜も食欲がイマイチ、口中の違和感のせいもあるだろうな。
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by saheizi-inokori | 2018-07-29 14:01 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori