「老後の資金がありません」（垣谷美雨）

身体がだるくてもっと寝ていたいのに目が覚めてしまって、しょうがない起きようか、、まだ５時半だ、サンチの散歩もないのに。
点眼しながら洗濯物を室内干しする。
あ～、かったるいなあ、西日本の被災地のことを想うと、乾いた部屋でエアコンをつけて何を言ってるのかと、思う。
思うけれど、かったるいんだなあ。
中国地方に大雨の危惧があったのに、明日はオウムの七人を縊り殺す前の日だというのに、自民党の皆さんはシンゾーを囲んでワイワイ酒盛り、片山さつきのごときはその様子を嬉しそうにツイッターかなんかで広言したという。
死者数が何人になるかも見当がつかず、炎天下の被災者のライフラインすら確保できていないのに、賭博合法化、同僚議員救済のための議員定数増法案を遮二無二通そうとする。

恥知らずのゴロツキ自民党・安倍政権に天罰よ下れ！

つい表題に惹かれて買ってしまったのは、どこかに同じ不安を抱いているからか。
現役を退いたころは、この先１０年なんとかなればいいと思っていたが、そろそろその１０年になりそうだ。
海外旅行をするでもなく、国内旅行もかなり抑制的、本は図書館、酒は近所の居酒屋、あとは落語と能と文楽、節約でもないが贅沢三昧でもない、そこそこに暮らしてきた。
車も売ったし。
あと、１０年も生きるとなっちゃ、ちよっと資金不足だが、そんなに生きやしないだろう。
（「しろいし」、水ナス、枝豆、谷中生姜に自家製厚揚げ、夏の”贅沢”なり）

娘の結婚式で新郎側の派手婚につき合わされ、舅の葬儀と墓で思いがけない出費、１２００万円あった貯金が三百万円になってしまう。
さらに追い打ちは夫婦そろってリストラでクビ、退職金もない。
夫の年金（あほな夫は勝手に年金基金を解約して小遣いにつかっていた）が、出るのはあと５年。
失業保険で初めて専業主婦の時間のゆとりは出来たものの、はやく次の仕事をとあせってコンビニのパート勤務、夫はなかなか気に入った仕事がみつからない。

途中までリアルに、「転落」していくプロセスが描かれてあれあれと同情半分興味半分で読んでいると、毎月仕送りしている姑を豪華なケアマンションから引き取る頃からコメデイタッチが前面に押し出され、コンゲームの様相も呈してくる。

はた目には何の苦労もないように見える主婦が４人、じつはそれぞれに深刻な悩み（主として経済的な）を抱えている。
見栄っ張りだが、本音で悩みを語り合う友達こそ頼りになるのだ。
「自分とは性格も能力も違う女の子を、いったいどう育てたらいいのか」そんな悩みもありそうだ。

主人公の奥さん、どこにもいるようで、芯はなかなかしっかり者だ、これでは極楽とんぼの亭主ができあがるわけだ。

中公文庫