夕立家族

角の家の周りの水やりを、きょうはお父さんがしている、おはよーございます。
あれ？奥さんは具合が悪いのかな。
いつもと違う散歩道を歩いていくと、おやまあ、夫婦そろってモカちゃん（黒いトイプー）と来たではないか。
いつも散歩はお父さんの分担、そうか、「たまには私もモカちゃんと散歩に行きたいなあ、（曇ってるし）」「じゃあ、俺が水やりしてるから支度しろ」てなことかな。
帰ってテレビをつけながら点眼していたら、湘南のピザやさんの嫁姑が、服装や髪形を変えて『変身』するというところ。
嫁さんが花柄のドレスに髪を短くして、女優のようにきれいになったのもすごいけれど、変身前はひっつめでおでこが禿げ上がり、かなり肥って、いかにもピザ屋の女職人という格好だったのが、やはりばっさり髪を切って、花柄のスカートで、「湘南のセレブ～」に変身した。
それを見る嫁さんが思わず涙ぐむのを見て僕も涙ぐんでしまった。
これはどういう涙だろう。
老化の涙かもしれない。

映画「万引き家族」の小さな女の子のいろんなシーンがちらちらと頭に浮かんでくる。
お姉さんにチョキチョキ髪を切ってもらって、見守る家族たちが口々に「かわいい」とはやし立てる。
女の子も鏡を見て「カワイイ」といって微笑む。
可愛かったなあ。
ベランダで水やりをしたら、急に小學生のころ戸隠でキャンプをしたことを思い出した。
ちょっと湿り気を含んだ（比較的ではあるが）澄んだ空気を吸い込んだからかもしれない。

飯盒炊爨、底に残ったおこげ。
急にやってきた前が見えなくなるようなアレクザンタ―ザグレイトみたいな夕立。
八百屋のし～ちゃんのお母さんがいつもみんなを笑わせていた。
夕立のあとの蝉の声。
ちょっと寒くなったので友達と相撲をとったときの汗の匂い。
「夕立家族」だった。