絶滅危惧種 柚月裕子「検事の本懐」

映画「虎狼の血」に惹かれて買った二冊目の柚月裕子本。
ストイックな正義漢・少壮検事の生き方をにじませる連作短編集。
横領弁護士の汚名を着たまま死んだ男の息子だ。
上司の意向を忖度するどころか、ダメなものはダメ、独自の視点から解決済みと思われた事件をひっくり返すのも平気だ。

自分一人の責任で、見逃されていた真実を見つけて正義を実現、弱い者を救う、これぞ検事の本懐だ。

とはいえ、無頼ではない（服装はよれよれだが）。
やさしいのだ。
いまどき絶滅危惧種の検事か。
これも一日で読んだ。
だから面白いと言えるのだが、３７６頁を一気に読めてしまうというのは、ちょいと軽いようにも思える。

もう少し、鬱窟して悪さもあるような男のほうが僕むきか。
（ゆうべカミさんと自由が丘デパートで食べたベトナム料理）

恩ある人のためにすべてをひっかぶって罪に服す男が登場する。

霞ヶ関にはびこる「忖度族」と似て非なる所以は、それがあくまでも利他的な動機であることと、一言も弁解せず服罪すること。

我利我利の出世主義、嘘を重ねて我が身も安全、陰でペロッと舌を出す輩とは大違いだ。

横浜の眼科医ナウ。

手術一週間後の検診、先生の笑顔が見られるか。