趣向もほどほどに 第144回 柳家小満んの会
2018年 03月 22日
「春の雪」、「彼岸過迄」、小説の表題を思い出すが、中身は忘れている。
昨日は、朝は雪、夕方は雨の散歩だった。
19日に行った横浜の「柳家小満んの会」のこと。
前座の小多け「つる」
正攻法で丁寧にやって面白い。
いいなあ、と思ったら小満んが、あと二日で二つ目、と紹介した。
きのう二つ目になったわけだ、がんばれよ。
小満ん「家見舞い」
スカンピンの二人が兄貴の新築祝いに何かもっていこうと相談するところを丁寧に、「うなぎ屋の二階で、ゆっくり考えよう」「そんなことしてたら酔っぱらってしまう」「ざっくばらんに兄貴に欲しいものを訊いちゃおう」、と押しかけて「箪笥はどうです、総桐三段重ね二棹」調子よく言ったものの相棒に「高いぞ」と袖を引っ張られて「四角いものは祝いには向かない」、長火鉢、あれも四角だ。
水がめがいいとなって、道具屋に買いに行ったはいいが、そこで明らかになったのは、一人が10銭しか持たず、もう一人は一文無し、お互いに相手の懐を当てにしていたってこと、鰻屋の二階が笑わせる。
道理で肝心なことになると、お互いに「おめえの方が近くにいるんだから」「おめえの方が年かさなんだから」と妙に譲り合うはずだ。
20円の水がめを10銭に負けてくれと言われた主が、「あんたがた、ふたりでまだ寝てんじゃないのか。10銭で男をたてるなんて無理だ。又の世にでも願いましょう」
結局、肥瓶(こいがめ)をただで貰って兄貴の家に担ぎ込む。
臭い消しのために(気を利かしたふりをして)さっさと井戸水を汲んでおく。
喜んだ兄貴とその母が、まあいっぱいやっていけ、と出されたものが、「芝エビ豆腐に木の芽をあしらったお汁」、一口飲んでうまいといえば相棒が、「お汁の水はどこから?」。
「ホーレン草のお浸し」、水に漬ける、その水は?
「かくやのコウコ」、これも水、炊き立てのオマンマ、どの水で炊いた?
気色悪くなるはずなのだが、それぞれがうまそうに聞こえるのは、晩飯を食っていかなかったからか。
「お茶くみ」
哀れな女郎はいい加減な身の上話を長々とやって時間つぶしをして、客に触られるのを極力少なくしようとする。
あの日、朝から聴いていた国会中継のアベも壊れたテープレコーダーみたいに中身のないすれ違い答弁を回らない舌で繰り返して時間つぶしをしていたなあ。
お泪頂戴の話をするときにお茶を目につけて涙のように見せるが、茶殻がほくろのようについてウソ泣きがばれてしまう。
友だちから、その体験を聴いた男が同じ女に逆に涙の物語をして見せると、女が「お前さん、お茶を汲んでこようか」。
額が禿げ上がって、目が見えるのか心配になるくらい細くて、鼻がぺちゃんこで、口が大きい、安大黒のように「愛くるしい女」ってのがそういう役者なのだ。
「花見の仇討ち」
花といえば桜、「梅は寒いよ、今日は股引洗っちゃったんだよ」。
趣向で、夫が馬、妻がそれを曳く馬子になって花見をする夫婦、とぼけてるのがいいなア。
上野の山で仮装して仇討ちの仮装して真似をしてみせようと企む長屋の4人。
ものさし、ホーキなどを刀や杖に見立ててのリハーサル風景が傑作だ。
仲裁役の六部になるのが建具屋の半ちゃん、目がいいけれど耳が遠くて話が通じない叔父につかまってれ、酔いつぶすつもりが酔いつぶれてしまって肝心のところで出てこれない。
落語では建具屋というと半ちゃんと決まったようなものだ。
「酢豆腐」では、町内の色男とおだてられていい気になったばかりにヌカミソに手を突っ込まされそうになって金をふんだくられ、主役に抜擢された「蛙茶番」では暴れん坊、ちょっとそそっかしくてフンドシをしないで銭湯を飛び出し、それを気がつかずに何度も前をまくってみせてしまい(本人はフンドシを見せているつもりで「デーマルでえ、町内にもこれだけのものはあるめえ」と威張って)、「汲みたて」では小唄の師匠としんねこになって長屋連中に囃され、そういえば豆腐屋のおかみさんとも不倫して町内の噂になり、「唐茄子屋政談」では若旦那のカボチャを「がちゃがちゃじゃねえや、そんなもの食えるか」と啖呵を切って昔居候時代にカボチャの安倍川を37切れも食ったことをばらされて、、、
八っつあん熊さんには敵わないものの、あちこちで大活躍している。
巡礼兄弟に化けた二人は侍に切られそうになり、仇討ちの途中だと言って許されたのはいいが、その侍が芝居を真に受けて真剣で助太刀に入ってくる始末。
仲裁の六部が来ないので果し合いの練習した手順が種切れ、「少し休もうか」なんて馴れ合っていた三人は敵も味方も一緒になって逃げだす。
花見の趣向も「長屋の花見」くらいなところが無難でゲスな。
一向に酔えないのが辛いけれど。
この日はいつもの居残り会のメンバーが全員他の予定があって、僕一人。
翌日採血検査を控えて酒が飲めなかったので、それでよかったのだが、晩飯抜きで寝たから腹が減ったのには往生した。
国会中継をギリギリまで見ていて先に食べる時間も無くなってしまったのだ。
昨日は、朝は雪、夕方は雨の散歩だった。
前座の小多け「つる」
正攻法で丁寧にやって面白い。
いいなあ、と思ったら小満んが、あと二日で二つ目、と紹介した。
きのう二つ目になったわけだ、がんばれよ。
小満ん「家見舞い」
スカンピンの二人が兄貴の新築祝いに何かもっていこうと相談するところを丁寧に、「うなぎ屋の二階で、ゆっくり考えよう」「そんなことしてたら酔っぱらってしまう」「ざっくばらんに兄貴に欲しいものを訊いちゃおう」、と押しかけて「箪笥はどうです、総桐三段重ね二棹」調子よく言ったものの相棒に「高いぞ」と袖を引っ張られて「四角いものは祝いには向かない」、長火鉢、あれも四角だ。
水がめがいいとなって、道具屋に買いに行ったはいいが、そこで明らかになったのは、一人が10銭しか持たず、もう一人は一文無し、お互いに相手の懐を当てにしていたってこと、鰻屋の二階が笑わせる。
道理で肝心なことになると、お互いに「おめえの方が近くにいるんだから」「おめえの方が年かさなんだから」と妙に譲り合うはずだ。
20円の水がめを10銭に負けてくれと言われた主が、「あんたがた、ふたりでまだ寝てんじゃないのか。10銭で男をたてるなんて無理だ。又の世にでも願いましょう」
結局、肥瓶(こいがめ)をただで貰って兄貴の家に担ぎ込む。
臭い消しのために(気を利かしたふりをして)さっさと井戸水を汲んでおく。
喜んだ兄貴とその母が、まあいっぱいやっていけ、と出されたものが、「芝エビ豆腐に木の芽をあしらったお汁」、一口飲んでうまいといえば相棒が、「お汁の水はどこから?」。
「ホーレン草のお浸し」、水に漬ける、その水は?
「かくやのコウコ」、これも水、炊き立てのオマンマ、どの水で炊いた?
気色悪くなるはずなのだが、それぞれがうまそうに聞こえるのは、晩飯を食っていかなかったからか。
哀れな女郎はいい加減な身の上話を長々とやって時間つぶしをして、客に触られるのを極力少なくしようとする。
あの日、朝から聴いていた国会中継のアベも壊れたテープレコーダーみたいに中身のないすれ違い答弁を回らない舌で繰り返して時間つぶしをしていたなあ。
お泪頂戴の話をするときにお茶を目につけて涙のように見せるが、茶殻がほくろのようについてウソ泣きがばれてしまう。
友だちから、その体験を聴いた男が同じ女に逆に涙の物語をして見せると、女が「お前さん、お茶を汲んでこようか」。
額が禿げ上がって、目が見えるのか心配になるくらい細くて、鼻がぺちゃんこで、口が大きい、安大黒のように「愛くるしい女」ってのがそういう役者なのだ。
花といえば桜、「梅は寒いよ、今日は股引洗っちゃったんだよ」。
趣向で、夫が馬、妻がそれを曳く馬子になって花見をする夫婦、とぼけてるのがいいなア。
上野の山で仮装して仇討ちの仮装して真似をしてみせようと企む長屋の4人。
ものさし、ホーキなどを刀や杖に見立ててのリハーサル風景が傑作だ。
仲裁役の六部になるのが建具屋の半ちゃん、目がいいけれど耳が遠くて話が通じない叔父につかまってれ、酔いつぶすつもりが酔いつぶれてしまって肝心のところで出てこれない。
落語では建具屋というと半ちゃんと決まったようなものだ。
「酢豆腐」では、町内の色男とおだてられていい気になったばかりにヌカミソに手を突っ込まされそうになって金をふんだくられ、主役に抜擢された「蛙茶番」では暴れん坊、ちょっとそそっかしくてフンドシをしないで銭湯を飛び出し、それを気がつかずに何度も前をまくってみせてしまい(本人はフンドシを見せているつもりで「デーマルでえ、町内にもこれだけのものはあるめえ」と威張って)、「汲みたて」では小唄の師匠としんねこになって長屋連中に囃され、そういえば豆腐屋のおかみさんとも不倫して町内の噂になり、「唐茄子屋政談」では若旦那のカボチャを「がちゃがちゃじゃねえや、そんなもの食えるか」と啖呵を切って昔居候時代にカボチャの安倍川を37切れも食ったことをばらされて、、、
八っつあん熊さんには敵わないものの、あちこちで大活躍している。
巡礼兄弟に化けた二人は侍に切られそうになり、仇討ちの途中だと言って許されたのはいいが、その侍が芝居を真に受けて真剣で助太刀に入ってくる始末。
仲裁の六部が来ないので果し合いの練習した手順が種切れ、「少し休もうか」なんて馴れ合っていた三人は敵も味方も一緒になって逃げだす。
花見の趣向も「長屋の花見」くらいなところが無難でゲスな。
一向に酔えないのが辛いけれど。
翌日採血検査を控えて酒が飲めなかったので、それでよかったのだが、晩飯抜きで寝たから腹が減ったのには往生した。
国会中継をギリギリまで見ていて先に食べる時間も無くなってしまったのだ。
昼飯抜きで映画を観たり晩飯抜きで落語を聞いてそのまま寝たりと、お腹が空きますね。
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そらぽん
at 2018-03-22 15:41
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kogotokoubei at 2018-03-22 17:52
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rinrin1345 at 2018-03-22 20:31
あら、苦しい夜でしたね。私もごちそう食べ過ぎて、数日節食してますの。寝しなに何かつまみたくなります(笑)
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buribushi at 2018-03-22 21:20
都会に住まれると観るものも多くて羨ましいです。
もう古い話になりましたが、協会を飛び出して独り立ちした
春風亭梅枝(現 華柳)を応援したくて、じゅげむ会と名乗って時たま落語会をやっていました。わたくし席亭はてくてくと木戸札を売り歩き、経費節約で宿とゴハンはうちで。
晩酌のとき師匠がたのうら話を聞くのがおもしろかったです。
もう古い話になりましたが、協会を飛び出して独り立ちした
春風亭梅枝(現 華柳)を応援したくて、じゅげむ会と名乗って時たま落語会をやっていました。わたくし席亭はてくてくと木戸札を売り歩き、経費節約で宿とゴハンはうちで。
晩酌のとき師匠がたのうら話を聞くのがおもしろかったです。
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saheizi-inokori at 2018-03-22 22:15
> テイク25さん、最近少し肥り気味なのでちょうどよかったかもしれない。
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saheizi-inokori at 2018-03-22 22:18
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saheizi-inokori at 2018-03-22 22:24
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saheizi-inokori at 2018-03-22 22:25
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hanamomo08 at 2018-03-22 22:26
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saheizi-inokori at 2018-03-22 22:29
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saheizi-inokori at 2018-03-22 22:57
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福
at 2018-03-23 06:37
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「春の雪」はそれだけで成立している名品だと思います。
さて、話芸ということばがありますが、小満んにぴったりと合う言葉ではありますまいか。
マスコミ的にはいまいちですが、話芸はホンモン、という人も落語界には必要ですね。
さて、話芸ということばがありますが、小満んにぴったりと合う言葉ではありますまいか。
マスコミ的にはいまいちですが、話芸はホンモン、という人も落語界には必要ですね。
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saheizi-inokori at 2018-03-23 08:08
by saheizi-inokori
| 2018-03-22 11:10
| 落語・寄席
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Comments(14)