3月14日は松の廊下、今日は一日松之亟

今や講談界の枠を超え各メデイアからも注目され”今最も切符がとれない”演芸界のスター(守田梢路)
神田松之亟の独演会の切符が昼の部、夜の部ともに取れた。
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落語の独演会とは客層が違って女性が多くにぎやかだ。

講談の宮本武蔵には、寛永の武蔵と天正の武蔵の二つがあって、神田派は寛永、30年ほど時間をずらして漫画のようにばかばかしい。
武蔵は結婚していて、剣を義父に習ったのだがその義父が佐々木小次郎(老人)に殺されたので敵討ちに出る。
全17席の最後の三席「山田真龍軒」「下関の船宿」「灘島の決闘」をまとめて読む。
面白いし客はよく笑うが、こんな調子だと夜の部まで聴くのはちょっとなあ、と思ったが、、。
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(今朝の呑川)

「徳利の別れ」
ここからは忠臣蔵、3月14日は松の廊下の刃傷から浅野の切腹の、講釈師にとってはとても大事な日なのだ。

神田愛山に「忠臣蔵のテーマは別れ」だと教えられて翻然悟るところがあった。
300席ある忠臣蔵のすべてが、何らかの「別れ」をテーマにしている。
コツは照明を落とすこと、なるほど武蔵のときとはまるで違う重厚感が漂う。
赤穂浪士のひとり、赤垣源蔵が討ち入り前夜に、疎遠にしていた(内心は慕っている)兄を訪ねて不在のため、兄の羽織と酒を酌み交わし、幼い頃の雪だるまで遊んだこと、その頃から立派だった兄には頭が上がらなかったことなど、独り言をいう。
僕も死ぬ前にひそかに別れを言ったり謝ったりしとかなきゃいけない人もなきにしもあらず。
うん、これなら夜まで付き合えるぞ、と思い直す。
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(花園神社)

仲入り後、「神崎の詫び証文」

ならぬ堪忍するが堪忍で子供も知っている(今の子は知らないか)神崎与五郎の一席。
酒癖の悪い、しかし生一本の丑五郎が、義挙前の神崎に絡んで詫び証文を書かせて得意になっていたが、討ち入り後、講釈師が義士伝を読むのを聴いて、あの侍が赤穂浪士であったことを知る。
浜松から泉岳寺に駆けつけて神崎の墓の前で頭をゴンゴン、地面(松之亟は釈台に)にぶつけて謝り、その後浪士の墓守になる。
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(歌舞伎町、昔噴水と僕が上京後最初に入った大きな映画館があった)

二時から始まって四時ちょっと過ぎに終わった。
ストレートな話の展開、分かりやすい笑いと涙、すかっとしているから疲れない。
いい落語ってのはあれでけっこう疲れるものなのだ、心地いい疲れで、それがいいのだけれど。
夜の部は七時からなので、紀伊国屋書店、歌舞伎町(客引きが声をかけた)などをうろついて、珈琲貴族という店でフラナリー・オコナ―を読み、まずい野菜サンドをかじった。
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夜の部、松之亟が登場すると「待ってました」の声がかかり拍手の音も大きい。
松之亟曰く、昼は7~80代が多く、丁寧なアンケート感想を貰ったが、夜はずっと若い客たちだ。
講釈をそんなに聞いたことはないが、松之亟のように落語家ハダシで笑わせる仕方噺も交えたマクラを振る人はいないのではないか。
赤穂浪士のなかで人気ナンバーワンの堀部安兵衛は新発田の出身で地元には「安兵衛武庸の会」があって、そこで一席読んだときの見聞を、ちょっと風刺も利いた観察をまじえながら歯切れのよいストレートな語りで面白い。
たとえてみたら、サッカーでセンタリングされたボールをスパンと真ん中からシュートを決めるのが講釈、落語はちょっと外してみせる
そんなことも云う。
だから疲れないのかもしれない。

これも子供でも知っていた、「安兵衛駆け付け」
落語の「鰻の幇間」をあしらったりサービス精神横溢。
子供のころの講談本を思い出しながら聴いていた。
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「安兵衛婿入り」
堀部弥兵衛の妻が弥兵衛に高田の馬場における安兵衛の活劇の目撃談を報告する。
二人のやり取りがユーモラス、笑ったなあ。
「安兵衛駆け付け」における切ったハッタより楽しい。
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(日体大幼稚園の卒業式、親たちが初々しい)

仲入り後、「荒川十太夫」

照明を落とす。
堀部安兵衛切腹のときに介錯した荒川十太夫は三両五人扶持という身分の低い侍だったが、いよいよのときに安兵衛に身分を問われ、とっさに物頭だと嘘をつく。
安兵衛の立派さにうたれて軽輩では申し訳ないと思ったのだ。
しかし、さいごに嘘を聞いて死んでいったことは悪かったかと悩みながら、忌日には物頭の出で立ちに伴を連れて墓に参るのだ。
それを上司に見咎められて、殿さま直々のお調べとなる。
静かな読みっぷりで、花も実もある武士の面影をちらっと感じさせた。
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講釈版・居残り会は3人で。
いつも飲んでいる燗酒をやめて生ビールオンリー、若いころの好みに戻ったか。
Commented by そらぽん at 2018-03-15 19:30 x
入学式の親御さんの姿が初々しくて いいですね~
美味しそうな貝の上の緑は 何でしょう?
此方、葱とかイマイチで  
お饂飩にもルッコラを載せたりですよ
Commented by saheizi-inokori at 2018-03-15 22:11
> そらぽんさん、パクチーだったかなあ、話に夢中で忘れました^^。
葱がうまくないと寂しいですね。
昨日は下仁田葱の天ぷらも食べましたよ。
Commented by j-garden-hirasato at 2018-03-16 07:17
桜も開花直前ですね。
講談の連ちゃん、
お元気ですね。
Commented by kanekatu at 2018-03-16 09:38
2000年の喬太郎の真打披露公演に行った時、1列目と2列目が女性客で占められていて驚きました。これから寄席も変わるかなと、そんな予感がしました。
講談の世界も松之亟の登場で、変わって行くかも知れないですね。
Commented by saheizi-inokori at 2018-03-16 10:33
> j-garden-hirasatoさん、やる方が大変、若いとはいえ。
聴くのは楽なんです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-03-16 10:36
> kanekatuさん、講談界の一之輔、でしょうか。
Commented by mama at 2018-03-17 10:32 x
松之亟さん、気になっていますが、なかなかチケットが取れません。もう少し熟してから・・・なーんて負け惜しみをつぶやきながら、機会を待ちましょ。
Commented by saheizi-inokori at 2018-03-17 10:38
> mamaさん、なるほど人気沸騰の熱演でした。
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by saheizi-inokori | 2018-03-15 13:07 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori