残念な”ノンフィクション” 上原善広「路地の子」
2018年 02月 27日
差別。
アメリカの黒人奴隷の逃亡を描いた「地下鉄道」に続いて、日本の部落で育った作者による「自伝的ノンフィクション」(新潮社編集部の注)を読んだ。
(表紙写真は主人公・龍造の青年時代の実写だという)
路地、とは被差別部落、ここでは大阪・更池(松原市)のこと。
自伝というけれど主人公は著者の父親である(なぜか上原龍造という仮名)。
コッテ牛と呼ばれた利かんきで乱暴(中学三年のときに18歳の極道を牛刀をもって追い回して有名になる)な、孤独な少年が、食肉業を経営し「金さえあれば差別なんかされへん」と、同和利権を手に入れてのしあがっていく。
上田卓三が
龍造の女性遍歴や家族のことも触れられて、なかなかスリリングなエンタメ的自伝でもある。部落や解放運動とか屠場や食肉業界の実態が知らされて興味深い。
と、思いきや、どうもこのノンフィクションは眉唾らしい。
登場人物や扱われている事件のことを知ろうと調べていたら、こんな記事を見つけた。
http://kadookanobuhiko.tumblr.com/post/167512723599/上原善広路地の子を読む-①
神戸新聞記者を経てフリーライターになっている、角岡伸彦の記事だ。
本書が、事実と反する(たとえば共産党が同和利権を欲しがったなど)内容に満ちている、ちゃんと取材をしていない、ノンフィクションという名に値しない、肝心のテーマがなおざりにされている、あまつさえ作家として文章がなっていない、それをそのままにした新潮社のだらしなさまでが、以下14回にわたって縷々指摘され完膚なきまでに批判されている。
共産党にも抗議の文書をぶつけられてはかばかしい返答ができていないという。
きのう紹介した「地下鉄道」↓は歴史的事実を元に、想像力・創作力の翼を広げることによって、より一層迫力のある事実の恐ろしい真相を暴露してみせたフィクションだ。
そこには「欺瞞」「歪曲」「フエイク」は感じられない。
だが、「路地の子」は、ノンフィクションをうたいながら、真実を描かない書き物に堕してしまったようだ。
部落問題・差別の問題に真面目な関心を寄せる読者を瞞着する意図はなかったと信じたいが、残念だ。
新潮社
アメリカの黒人奴隷の逃亡を描いた「地下鉄道」に続いて、日本の部落で育った作者による「自伝的ノンフィクション」(新潮社編集部の注)を読んだ。
路地、とは被差別部落、ここでは大阪・更池(松原市)のこと。
自伝というけれど主人公は著者の父親である(なぜか上原龍造という仮名)。
コッテ牛と呼ばれた利かんきで乱暴(中学三年のときに18歳の極道を牛刀をもって追い回して有名になる)な、孤独な少年が、食肉業を経営し「金さえあれば差別なんかされへん」と、同和利権を手に入れてのしあがっていく。
上田卓三が
徹底した現実路線の利権派でありながら、その政治的志向との間に絶妙なバランス感覚を持った人物であった。解放運動と同和利権が生んだ、一種の怪人である。として実名で登場したり、共産党が同和利権の解同による独占を敵視し右翼・ヤクザと組んで龍造に接近したり、牛肉偽装事件で知られたハンナンの浅田満も重要な役どころで、こちらは仮名で登場する。
龍造の女性遍歴や家族のことも触れられて、なかなかスリリングなエンタメ的自伝でもある。部落や解放運動とか屠場や食肉業界の実態が知らされて興味深い。
と、思いきや、どうもこのノンフィクションは眉唾らしい。
登場人物や扱われている事件のことを知ろうと調べていたら、こんな記事を見つけた。
http://kadookanobuhiko.tumblr.com/post/167512723599/上原善広路地の子を読む-①
神戸新聞記者を経てフリーライターになっている、角岡伸彦の記事だ。
本書が、事実と反する(たとえば共産党が同和利権を欲しがったなど)内容に満ちている、ちゃんと取材をしていない、ノンフィクションという名に値しない、肝心のテーマがなおざりにされている、あまつさえ作家として文章がなっていない、それをそのままにした新潮社のだらしなさまでが、以下14回にわたって縷々指摘され完膚なきまでに批判されている。
共産党にも抗議の文書をぶつけられてはかばかしい返答ができていないという。
そこには「欺瞞」「歪曲」「フエイク」は感じられない。
だが、「路地の子」は、ノンフィクションをうたいながら、真実を描かない書き物に堕してしまったようだ。
部落問題・差別の問題に真面目な関心を寄せる読者を瞞着する意図はなかったと信じたいが、残念だ。
新潮社
自伝的ノンフィクション、部落問題・・・興味を引かれたので読んでみようかと思いながら読み進めたら、「思いきや」という赤字と共にリンク先の提示。フィクションをノンフィクションとして出版したということですか?ひどいな。
リンク先の「角岡伸彦 五十の手習い」に「上原善広『路地の子』を読む 」が9回まであって「その後」も5回まであるようなのでそちらを読んでみます。教えて下さってありがとうございました。
残念な話ではありますね。
リンク先の「角岡伸彦 五十の手習い」に「上原善広『路地の子』を読む 」が9回まであって「その後」も5回まであるようなのでそちらを読んでみます。教えて下さってありがとうございました。
残念な話ではありますね。
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sweetmitsuki at 2018-02-27 20:57
共産党が右翼と組んで、と、聞いて120%嘘だと思いましたけど、やっぱしフェイクでしたか。
敢えてスリリングなエンタメに仕立てることで何か伝えたかったことがあるのかもしれませんけど、ノンフィクションだと信じて読んでた人たちには残念な話です。
敢えてスリリングなエンタメに仕立てることで何か伝えたかったことがあるのかもしれませんけど、ノンフィクションだと信じて読んでた人たちには残念な話です。
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saheizi-inokori at 2018-02-27 21:56
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saheizi-inokori at 2018-02-27 22:02
> sweetmitsukiさん、作家としてはそれなりに真実を書いたつもりかもしれない、、でも甘えかな。
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j-garden-hirasato at 2018-02-28 06:18
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saheizi-inokori at 2018-02-28 10:21
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ikuohasegawa at 2018-03-01 14:16
「と思いきや」まで読んでよみたいと思いましたが、路地の子でなく地下鉄道を読みます。
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saheizi-inokori at 2018-03-01 14:20
> ikuohasegawaさん、そちらがお薦めです。
by saheizi-inokori
| 2018-02-27 12:52
| 映画
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Comments(8)